悪役令嬢にならないための指南書

ムササビ

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Lesson.4 ヒロイン封じと学園改革

86.話題の留学生

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一方、エレンシア貴族学園では、アイリが鬱々とした学園生活を送っていた。
何度アピールしても、やはりヘンリクスがアイリに魅了されている様子が見られないからだ。
ヘンリクスだけではない。
アンドレアス以外の攻略キャラクターは、誰もアイリを相手にしない。
マシューに至っては、出会いのイベントすら発生しなかったため、まだ会えてもいない。
しかも最近、隣国の留学生とかいう美少女がヘンリクスのクラスにやってきて、学園中が彼女の噂で持ちきりだった。
彼女が通るとすべての男子生徒がぼーっと見惚れるほどで、女子生徒からも嫉妬ではなく羨望の眼差しで見つめられている。

「リナだったっけ……?
たしかにかわいかったけどさ……。」

アイリがヘンリクスの教室へ押しかけた時、たまたまリナと目が合い、にっこりと微笑みかけられてしまった。
その笑顔は同性でもドキドキしてしまうくらい魅力的で、アイリも戸惑い、自分の教室に引き返してしまうほどだ。

「さらさらの黒髪がお日様に反射して、色白のお肌に小さなお口。
唇はナチュラルに淡いピンクで、プルプルしてたなぁ……。」

うっとりしながら、リナの笑顔を思い出してしまう。

「アイリ? どうしたの?」

隣に座るアンドレアスが、不思議そうに顔を覗き込んでくる。

「うふふ、アンドレアス様と舞踏会へ出席するのが楽しみで♪」

アイリはぎゅっとアンドレアスの腕に抱きつく。
アイリは、徹底してアンドレアスに媚びていた。
アンドレアスが、ヴィオラが強すぎて自分に甘えてくれなかったことを散々愚痴っていたからだ。
アイリはヴィオラとは逆に、とにかくアンドレアスに甘えまくっていた。
そのかいあって、アンドレアスはますますアイリに入れ込み、最近ではヴィオラの話は全く出てこなくなった。
今もアンドレアスは、自分の腕に絡みつくアイリを愛おしそうに見つめている。

(アンドレアスは攻略完了ね。
でも“次期宰相候補”って設定だったけど、この人は婚約者の力がなければ宰相にはなれないのよね……?
あのゲームに、そんな事情があったかしら?)

アンドレアスとの仲が深まると、その将来性に不安を覚えるアイリ。

「そうだわ!
アンドレアス様、今日は放課後に用事があるから会えなくなってしまったの。
ごめんなさい。」

「そうなの? 残念だけど、わかったよ。」

「会えない時間も、アイリはアンドレアス様を想っています。」

アンドレアスは、子猫を愛でるようにアイリの頭を優しく撫でる。
アイリは間近で見つめるアンドレアスの顔にうっとりするも、頭の中では次の攻略対象のことでいっぱいになっていた。

そして放課後。
アイリは、研究棟の側の木陰でマシューかカイルが来るのを待っていた。

「将来が安定しているカイルは、やっぱりあきらめきれないのよねー。
それにマシューにも出会いたいし♪
あの悪役令嬢とは仲が良くて、私とは出会ってすらないなんて、納得いかないもの。」

アイリが恐るべき執念で攻略対象たちを待ち伏せしていると、研究棟から見慣れた面々が出てきた。
ルドヴィクとルヴァリの二人の王子と、リナだ。
にこやかに談笑する三人。

「あの王子たちも、私のチャームが効かないのよね……。
あの子とは仲良さげだけどさ。」

アイリが隠れている木陰のすぐそばで、別れの挨拶を交わす三人。
リナはしばらくそこに留まり、ルドヴィクとルヴァリを見送っていた。

「ホントにきれいな子……。」

その整った横顔を見つめていると、リナがくるりとこちらを向いて、ずんずんと近づいてくる。

「アイリ、ここで何してるの?」

葉っぱをかき分けて、紫色の美しい瞳でアイリを見つめるリナ。

「え、どうして私のこと知ってるの……?」

「私だよ。わかんない?」

リナは、両手で目と鼻を隠すと口元だけが見える状態になる。
アイリは、リナを見つめながらしばらく思案すると、何か思い当たったようで、大きな目をさらに大きくした。

「も、もしかして、魔法使い?」

「せいかーい! ちょっと用事があって、留学生として潜入してるんだ。」

清楚キャラのリナが、ニカっと笑う。
アイリはその笑顔で、完全にリナに魅了されてしまった。
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