100 / 141
Lesson.4 ヒロイン封じと学園改革
100.別れ
しおりを挟む
その頃、王宮内に用意されていた部屋でヴィオラとアンドレアスは向かい合って、それぞれソファに座っていた。
しばらく時間が経っても、アンドレアスは目の焦点が合わず、うなだれてひと言もしゃべらない。
ヴィオラは紅茶を飲みながらアンドレアスが落ち着くのを待っていたが、ティーカップをそっと置くとゆっくりと立ち上がり、アンドレアスの隣に座り直した。
アンドレアスの背中にやさしく手を置いて少し撫でてみる。
ヴィオラの手の感触に驚き、アンドレアスの背中がビクッと震えた。
「ヴィオラ……。」
アンドレアスは恐る恐る顔を上げると、隣にある愛しいヴィオラの顔を見つめた。
いつもはきりっと勇ましいヴィオラの細い眉が、少しだけ困ったように下がっている。
「ああ……ごめん……。どうして、あんな……。」
アンドレアスはヴィオラに伝えたいことがたくさんあったが、何を言っても無駄だということも感じ取り、言葉に詰まる。
自分でも、なぜアイリに惹かれて、ヴィオラたちに暴言を吐いていたのか理解が出来ない。
「アンドレアス様は、アイリ嬢のチャームの能力に惑わされていたのですよ。」
ヴィオラはアンドレアスの背中をゆっくりと摩りながら、彼の混乱の原因を端的に伝えた。
「チャーム……?」
「アイリ嬢に魅了されて、我を失っていたのですわ。
今はマギア伯爵が貸してくださったそのペンダントのおかげで正気に戻っていますが、それを外した状態でまたアイリ嬢に会うと、また魅了されてしまうかもしれません。」
「僕はもう、あんなのは嫌だ。
君も、君の妹たちも傷つけたくはなかったのに……。」
アンドレアスは、マギア教授のペンダントをぎゅっと握りしめる。
「わかっています。
恥ずかしながら、わたくしは今回の件で初めてあなたの心の内を知ったのです。
わたくしは、あなたに謝らなければいけません。
もっと、あなたに心を開くべきでした。」
アンドレアスは、ヴィオラを改めて見つめる。
彼に初めて本心を話すヴィオラは、見慣れないふわふわとしたドレスのせいもあるかもしれないが、いつもよりもずっと可憐だった。
いつも冷静で仕事を驚くべきスピードでこなし、家族にも寄り添う、彼女はいつも完璧を目指して生きている。
しかし、まだ十八歳。
自分と同じ年齢なのだと、その時初めてアンドレアスは認識した。
そう思うと、居ても立っても居られなくなり、思わずヴィオラを抱き寄せる。
「いや、僕が悪い。
公爵家の一員になる覚悟が全然出来ていなかった。
大好きな君の隣に居られるだけで幸せだと浮かれていた。
君に認められたいと思っていたけど、違った。
僕は僕の責任を背負わなければいけなかったのに、君にすべて任せてしまっていたんだ。」
「わたくしたち、もっと早くに話し合わなければいけませんでしたね。」
ヴィオラは、アンドレアスをそっと引き離すと、やはり困ったように眉を下げながらほほ笑む。
「うん。でも、もう遅い。
元には戻れないんだよね?」
「ええ、もう陛下にも許可を得ました。」
「そう、やっぱり君は仕事が早いな。」
そう言うと、アンドレアスはボロボロと涙を流して、もう一度ヴィオラを抱きしめる。
今、手を離すともう二度と彼女に触ることができないのを知っていた。
「最後まで本当にごめんよ……。今までありがとう。」
「わたくしもごめんなさい。
婚約者でいてくれて、ありがとうございました。」
ヴィオラもアンドレアスの背中に手を回す。
二人は、そのまましばらく誰もいない王宮の一室で、最後の時間を大切に過ごしたのだった。
しばらく時間が経っても、アンドレアスは目の焦点が合わず、うなだれてひと言もしゃべらない。
ヴィオラは紅茶を飲みながらアンドレアスが落ち着くのを待っていたが、ティーカップをそっと置くとゆっくりと立ち上がり、アンドレアスの隣に座り直した。
アンドレアスの背中にやさしく手を置いて少し撫でてみる。
ヴィオラの手の感触に驚き、アンドレアスの背中がビクッと震えた。
「ヴィオラ……。」
アンドレアスは恐る恐る顔を上げると、隣にある愛しいヴィオラの顔を見つめた。
いつもはきりっと勇ましいヴィオラの細い眉が、少しだけ困ったように下がっている。
「ああ……ごめん……。どうして、あんな……。」
アンドレアスはヴィオラに伝えたいことがたくさんあったが、何を言っても無駄だということも感じ取り、言葉に詰まる。
自分でも、なぜアイリに惹かれて、ヴィオラたちに暴言を吐いていたのか理解が出来ない。
「アンドレアス様は、アイリ嬢のチャームの能力に惑わされていたのですよ。」
ヴィオラはアンドレアスの背中をゆっくりと摩りながら、彼の混乱の原因を端的に伝えた。
「チャーム……?」
「アイリ嬢に魅了されて、我を失っていたのですわ。
今はマギア伯爵が貸してくださったそのペンダントのおかげで正気に戻っていますが、それを外した状態でまたアイリ嬢に会うと、また魅了されてしまうかもしれません。」
「僕はもう、あんなのは嫌だ。
君も、君の妹たちも傷つけたくはなかったのに……。」
アンドレアスは、マギア教授のペンダントをぎゅっと握りしめる。
「わかっています。
恥ずかしながら、わたくしは今回の件で初めてあなたの心の内を知ったのです。
わたくしは、あなたに謝らなければいけません。
もっと、あなたに心を開くべきでした。」
アンドレアスは、ヴィオラを改めて見つめる。
彼に初めて本心を話すヴィオラは、見慣れないふわふわとしたドレスのせいもあるかもしれないが、いつもよりもずっと可憐だった。
いつも冷静で仕事を驚くべきスピードでこなし、家族にも寄り添う、彼女はいつも完璧を目指して生きている。
しかし、まだ十八歳。
自分と同じ年齢なのだと、その時初めてアンドレアスは認識した。
そう思うと、居ても立っても居られなくなり、思わずヴィオラを抱き寄せる。
「いや、僕が悪い。
公爵家の一員になる覚悟が全然出来ていなかった。
大好きな君の隣に居られるだけで幸せだと浮かれていた。
君に認められたいと思っていたけど、違った。
僕は僕の責任を背負わなければいけなかったのに、君にすべて任せてしまっていたんだ。」
「わたくしたち、もっと早くに話し合わなければいけませんでしたね。」
ヴィオラは、アンドレアスをそっと引き離すと、やはり困ったように眉を下げながらほほ笑む。
「うん。でも、もう遅い。
元には戻れないんだよね?」
「ええ、もう陛下にも許可を得ました。」
「そう、やっぱり君は仕事が早いな。」
そう言うと、アンドレアスはボロボロと涙を流して、もう一度ヴィオラを抱きしめる。
今、手を離すともう二度と彼女に触ることができないのを知っていた。
「最後まで本当にごめんよ……。今までありがとう。」
「わたくしもごめんなさい。
婚約者でいてくれて、ありがとうございました。」
ヴィオラもアンドレアスの背中に手を回す。
二人は、そのまましばらく誰もいない王宮の一室で、最後の時間を大切に過ごしたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
ねえ、今どんな気持ち?
かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた
彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。
でも、あなたは真実を知らないみたいね
ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・
私はざまぁされた悪役令嬢。……ってなんだか違う!
杵島 灯
恋愛
王子様から「お前と婚約破棄する!」と言われちゃいました。
彼の隣には幼馴染がちゃっかりおさまっています。
さあ、私どうしよう?
とにかく処刑を避けるためにとっさの行動に出たら、なんか変なことになっちゃった……。
小説家になろう、カクヨムにも投稿中。
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる