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しーい
しおりを挟む正直、記憶を思い出す前のソラは、タロでもルイスでもどっちでも良かった。どちらも格上過ぎて実感がなかったこともあるが、これは「王命」であるので、ソラが例え何を言ったところで覆らないことを弁えていたからである。
幸せとは、立ち回りの良さと程よい諦めが大事だと知る末っ子である。
決して面倒臭かった訳ではないと、本人は思っている。
ちなみに、次姉はソラに輪をかけて興味が無さそうだった。
ソラは自分がどっちでも良いので、では、次姉にはどちらが良いか考えた。
……ジア姉様は可愛い。むちゃくちゃ可愛い。嫁ぎ先を選べるのであれば、ジア姉様の可愛さを少しでも理解出来る方が良いわね。なんせ可愛いのだから。
どれくらい可愛いかというと、語彙が無くなるくらい可愛いのよ。
見た目は儚げ美人だけど、間抜けぶりと毒っ気との黄金比! それに親しい人にしか見せない破壊力抜群の笑顔がたまらなく可愛い。だって可愛いからね!
人見知りというか内弁慶というか、そんな隠し球(?)を持つ次姉と紳士の仮面を貼り付けた腹黒狸なら、似た者同士ウマが合うとソラは思ったのだ。
一方のタロ様は、女王を陰ながら支えるよう躾けられた忠犬。待てと言われたら、主がこの世を去ってもずっと駅で待つような忠犬ぶりらしいわね。
……色んな犬が混じってきたけど、どうやっても犬属性なのね。
私、猫派なのよね。どうでもいいか。
タロ様はかといって指示待ちや気が弱いとかではなく、国のトップの夫候補だった人であり、あの権謀術策がめぐる王宮で普通に息が出来る精神力を持つ貴族なのよね。
ただの人の良い犬であるはずがないわ。
ソラはきゃんきゃん文句を言っている次姉に適当に相槌を打ち、考えを巡らせた。
結局、王家と王女殿下は、もう一人の候補であったロンベルク様を選んだわ。
忠犬や腹黒狸ではなく、魔王を選んだのよね。
王家としては、長期的な展望として、三人の侯爵家子息のうち、王女殿下と婚約しなかった二人については、王家に連なる血筋の筆頭として、国内外の政略結婚用の人員にと考えていたはずだわ。
国として、一人でも良かったところを二人共ペシェル家に投入することを決めたのは、残った方が他の派閥の息子と結婚して魔石鉱脈に口出しされることを嫌がった、ということ?
……だとしたら、どちらかが結婚すれば良い、という話ではないわね。
お父様は断っても良いとは言ってくれているけれど、目が「断らないよねっ!?」って言ってるし、時々口にも出てる。嘘、結構出てる。
でも、「そら、舐める、ぽ」の人生を踏み出す勇気は私には、ナイ。
しかも、ジア姉様のあの様子じゃ、あっちもダメそう。
どっちかだけでも国王派と結婚すればオッケーでしょと思ったけど、それはダメそうときた。どっちもダメなんてもっとダメそう。
うーん、と悩んで、ソラは結論を出した。
……相手を交換してみる?
幸い、その権利はペシェル家に与えられているわけだし。
ジア姉様がナメルポ家に嫁いだら、「じゃあ、舐める、ぽ」だけど……私が吹き出すのを我慢すれば良いだけだから、いっか。
まだぎゃんぎゃん騒いでいる次姉を宥めながら、ソラは父子爵になんて理由を付けようか思考をまとめていた。
結果、それは無駄に終わる。
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