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そのろく
しおりを挟む忙しなく日々は過ぎていき、一年間の集大成である進級試験が行われました。これを落とすと進級できません。
私は及第点ぴったりで合格することが出来ました!
貼り出された進級合格者一覧に私の名前を見つけ、クラスメイトたちが抱き合ってお互いの健闘を讃え、喜んでいます。
ええ、お世話になりましたとも。感謝しておりますわ。
私のクラスは全員合格という快挙を果たしましたが、他のクラスでは大分落第者が出ています。これが二年生から三年生になる時はもっと人数を減らし、卒業試験の合格者は本当に優秀な一握りの者だけなのです。
卒業試験の合格者一覧にパヴェル・バーベリとイエヴァ・コルスナの文字を見つけましたが、不思議なくらい感情が凪いでいました。
兄様の友人で、隣領の優秀な幼馴染みが、羽ばたいて行く。
……ご活躍を、お祈りいたします。
卒業生は二週間後の卒業パーティーでお別れです。
この一年、本当に一度もバーベリ先輩と遭遇することはありませんでした。
私、本当にやればデキる子……!
そう、感慨に耽って油断したのがいけなかったのでしょうか。
「リェーナ……?」
振り向くと、バーベリ先輩が呆然と私を見て立っていました。
なんでここに、どうして、と呟いた後、バーベリ先輩は、私が制服を着ていることに気が付きました。
「……一年生、なのか?」
「はい、バーベリ先輩。ご無沙汰しております」
私が『バーベリ先輩』と呼んだからか、先輩が息を飲みました。
領地にいる時はずっと名前を呼んでいたからでしょうが、まさか、腕に恋人をくっ付けている兄の友人に向かって、昔のように名前を呼ぶ程常識知らずではありませんよ。いくら田舎者でもね。
「え、一年生? なんで教えてくれなかったの? え、……ずっと学園にいた……?」
バーベリ先輩はハッとして、左腕にくっ付いているコルスナ様を見ました。
「待って……! リェーナ!! 説明させて!?」
バーベリ先輩が慌てているのは、本当は、私のことが……?
……なーんて思うはずもありませんわ。
もう、恥ずかしい勘違いは懲り懲りです!
「ご卒業、おめでとうございます。兄も友人が優秀で、鼻が高いことでしょう」
あくまで、私との繋がりは「兄」を通してであることを全面に出してお祝いの言葉を送ります。
コルスナ様に誤解されたら大変でしょう?
私、デキる子なんで。
バーベリ先輩が、泣きそうな顔をしました。
ふふふ……。妹が兄離れをするのが寂しいのね。……私も、寂しいです。
でも、これでちゃんとお別れですね『兄様』。
お辞儀してこの場を去ろうとしましたが、思わぬ声がかかりました。
「あなたが、リェーナさん? パヴェルの……幼馴染みの?」
コルスナ様です。
これは、今さら田舎の幼馴染みが出しゃばって来てヒトの男にチョッカイかけてんじゃねぇ……ガチンコ案件……!!
身構えた私をクラスメイトたちが取り囲みました。
な、何事? コルスナ様が見えなくなっちゃいました。
「こんにちは先輩方。僕たちはまだ課題がありますので、これで失礼します」
クラス委員長(公爵家次男)がバーベリ先輩たちに挨拶し、私を囲んだまま移動します。集団移動、器用だな。
「待って! リェーナ! 話を……!」
バーベリ先輩の声がしましたが、「失礼しまーす」とクラスメイトの合唱にかき消されました。
皆は、私が幼馴染みを追いかけて王立学園に入学したこと、……失恋したこと、知っているのね。そうでなきゃ、こんなことするはずないし。
情報元はオレーク経由のナターリヤね? 後で覚えてなさいよ。
……ありがとう。
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