9 / 11
そのきゅう
しおりを挟むべしょべしょのバーベリ先輩を見下ろしながら、どうしたものかと困っていると、ナターリヤがノックと共に部屋に来ました。
「リェーナ、熱はどう?」
「ナターリヤ、ありがとう、もう大丈夫よ。それより……」
私がボロ雑巾に視線を送ると、ナターリヤは「ああ、まだ頑張るわね」と言いました。
ナターリヤ曰く、クラスメイトたちは卒業パーティーでも壁を作って、まるでその中心に私がいるかのように集団移動してたそう。
え、なにそれ、ちょっと見たい。
そこへ、王立学園の卒業生でもある王太子殿下がお祝いサプラーイズと軽い感じで登場し、当たり前のようにコルスナ様の横に立って、卒業生への祝いもそこそこに半年後の結婚を発表。
会場は響めいたらしいです。
そりゃあだって、ねぇ?
あれだけバーベリ先輩と、うふふ、あはは、していたのに。
王太子殿下がバーベリ先輩に「護衛任務ご苦労だった。これで任務を解く。本来の婚約者の元へ戻るが良い」と言い、そうしてバーベリ先輩はクラスメイトの壁に挑み、もみくちゃにされながらたどり着いた中心にいたのは。
「オレークだったと……」
どんな絵面だ。
バーベリ先輩は一瞬白く燃え尽きたらしいけど、私がパーティーに参加していないと分かると、すぐさま女子寮に会いに来たらしい。
当然入れるわけもなく、塀の外から「リェーナ」と一晩ずっと呼び、雑巾化して今に至るとのこと。
皆、意地悪ね。私がバーベリ先輩に怒ってパーティーに出てないと思わせて。
熱出して寝込んでるんだから、呼ばれる声も夢現なのに、応えられるわけもないじゃない。
「ねえ、ナターリヤ」
「なあに?」
「私、好かれていると思い込んで、勘違いが恥ずかしくて恥ずかしくて、もう、バーベリ先輩への気持ちは、死んでしまったの」
バーベリ先輩にも声は届いているわね。呆然と見上げているわ。
「一年間、ううん、先輩が学園に入ってから三年間、自分で思うより、私、辛かったんだわ。だから……」
「リェーナ! すまなかった!!」
「私、たくさん、男の人とお付き合いしようと思うの!」
ナターリヤが「え? なんで?」と呟いて、バーベリ先輩は悲鳴を上げました。
「そしたら、バーベリ先輩の私への気持ちも、死ぬでしょう?」
「リェーナ、たくさん、は必要ないんじゃないかしら?」
「ああ、人数ではないわよ。私の中の気持ちのたくさん、よ」
「リェーナ! 嫌だ! 許してくれ!! 殿下の話になんか乗らなきゃ良かった! 山賊の棲みかをいっぺんに叩くには領軍だけじゃ足りなかったんだ。リェーナが嫁いで来ても行き来しやすいようにしておきたかったんだ。リェーナを裏切ってなんかない……!!」
膝をついて懇願するバーベリ先輩に、ニッコリ笑って、バンッと窓を閉めた。
「で、本当のところはどうなのかしら、リェーナ?」
「心が死んだのは本当よ。でも、今、灰色だった心にすごい勢いで芽が出て花が咲いているの。わっさわさよ! だって三年よ? 三年も私のためにキノコ食べてたのよ?」
「キノコ……? そ、そう? じゃあ、許してあげるのね?」
「許すも何も……私、バーベリ先輩から交際を求められても求婚されてもいないし。さっき初めて告白されたようなものよ」
私がそう言うと、ナターリヤはとても可愛い顔で「まあ」と困った顔をした。
あ、これは怒っている顔です。かわゆ。
「ふふ、私は追いかけて学園に来たけれど、今度はバーベリ先輩が追いかけてくれるかしら」
それはちょっと、……とても楽しみだわ!
「まあ、悪い子ね」
ナターリヤとクスクス笑い合います。
大好きな友だち。
楽しいクラスメイト。
大変だけど素晴らしい授業。
私、この学園に来て良かった。
38
あなたにおすすめの小説
上手に騙してくださらなかった伯爵様へ
しきど
恋愛
アイルザート・ルテシオ伯爵は十七歳で家督を継いだ方だ。
文武両道、容姿端麗、人柄も良く領民の誰からも愛される方だった。そんな若き英雄の婚約者に選ばれたメリッサ・オードバーン子爵令嬢は、自身を果報者と信じて疑っていなかった。
彼が屋敷のメイドと関係を持っていると知る事になる、その時までは。
貴族に愛人がいる事など珍しくもない。そんな事は分かっているつもりだった。分かっていてそれでも、許せなかった。
メリッサにとってアイルザートは、本心から愛した人だったから。
【完結】離婚を切り出したら私に不干渉だったはずの夫が激甘に豹変しました
雨宮羽那
恋愛
結婚して5年。リディアは悩んでいた。
夫のレナードが仕事で忙しく、夫婦らしいことが何一つないことに。
ある日「私、離婚しようと思うの」と義妹に相談すると、とある薬を渡される。
どうやらそれは、『ちょーっとだけ本音がでちゃう薬』のよう。
そうしてやってきた離婚の話を告げる場で、リディアはつい好奇心に負けて、夫へ薬を飲ませてしまう。
すると、あら不思議。
いつもは浮ついた言葉なんて口にしない夫が、とんでもなく甘い言葉を口にしはじめたのだ。
「どうか離婚だなんて言わないでください。私のスイートハニーは君だけなんです」
(誰ですかあなた)
◇◇◇◇
※全3話。
※コメディ重視のお話です。深く考えちゃダメです!少しでも笑っていただけますと幸いです(*_ _))*゜
※AI不使用です。
【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
〈完結〉だってあなたは彼女が好きでしょう?
ごろごろみかん。
恋愛
「だってあなたは彼女が好きでしょう?」
その言葉に、私の婚約者は頷いて答えた。
「うん。僕は彼女を愛している。もちろん、きみのことも」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる