田舎土魔法使いの成り上がり ~俺は土属性しか使えない。孤独と無知から見出した可能性。工夫と知恵で最強に至る~

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第9話 戦いの終わらせ方

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洞穴にFクラスが集結し、待ち構える。



その洞穴に、Dクラス連中が近付いてきたようだ。





「…正直舐めてたよ!!」



「…ただで女の身体触り放題の時間だと考えてた、俺らがバカだ!…認めてやる。今年のお前らは強い。…ただな、今年は俺らもAクラスを倒すために、必死で鍛えたんだ。…負けてたまるかよ!!」





洞穴の前で、隊長格の男が大きな声で叫ぶ。







それによって、Fクラスの子達が委縮していく。



近付かれたら、瞬殺だな。

そう思える程の雰囲気を、アイツは…隊長格の奴は持っている。



道中の罠も、殆どコイツのせいで見抜かれてしまった。



非常に勘の鋭い人なんだろう。









…覚悟を決めるか。



「・・・俺が行ってきます」



「…ダメよ!!罠の発動の役割は貴方じゃない!!」






クリスさんに止められるが、俺は制止を振り切る。


「…アイツ、絶対に強いんです。」

「多分、洞穴の罠を超えてきますよ。凄い感じるんです。強いぞって感覚が。」

俺はFクラスが集まる場所を、背に走っていく。



その発言通り、隊長格を中心にその40人は一糸乱れぬ動きで洞穴を進んでいく。



俺の戦い方で行く。

そう決めたのだ。



洞穴で一番開けた所にて、隊長格を待った。



途中罠を起動するも、8名程度しか削れなかった。





32名の状態で、開けた場所に来た。



そこで隊長格が気付く。











「…待て。」

「・・・・・そこにいる奴は、さっきのクソガキか?」









「…そうですね。」

「アルピエロと申します。」

「親しい人は、アルと呼びます。」


殆どいないけどな。






「…そうか。」

「アルよ。お前が作戦を考えたのか?」





「はい、提案したのは僕です。」











「…素晴らしい作戦だ。」

「え?」

予想外だ。憤慨されるかと思っていた。





「自分達の弱さを認め、弱者らしく小技を絡め、誘導し、地の利を使い、勝利を手繰り寄せる。見事な戦術であった。…ウチには、お前のような思慮深い者がおらん。」



敵に褒められるとは。

嬉しくなってしまう。

表情が緩む。





「…俺はお前が気に入った。」

「俺はアドム。火のアドムだ。」



「覚えて置け、お前を切る者の名だ。」



「え?男が好きって事・・・?」

少しでも、おちょくっておく。







隊長格が初めて焦った顔を見せる。

「…違う!!断じて違う!!」




良かった。相手も人間だ。
ココで、覚悟を決めよう。











アルは確認する。

「…兵士として、気に入られたんですね?」



「それなら、提案です。」

「僕と、一騎打ちしませんか?」









「・・・・何?」

アドムが警戒する。









「…うちは、女性ばかりです。」

「多分ここまで追い詰められたら、後は純粋な勝負になり、…負けるでしょう。でも一騎打ちなら、男の僕が前に出れる。少なくても、多少は壁になってやれる。…その時間もダメですか?」







アドムが感嘆する。

「・・・・見上げた根性だ。」



「部下に欲しい人材だな。」

「…は?」



「…俺は卒業後に、一隊を率いる貴族の息子。俺が勝ったら…俺に仕えよ、アル。その精神を俺は尊敬すらする。女のケツを追って、脱落した奴らとはまるで違う!!その精神は間違いなく高尚なモノだ。」











「・・・・僕は土使いですよ?生贄か壁にするんですか?」



「参謀に欲しい所だが・・・・状況次第だ。」





悲しい現実を、ここでも知ってしまう。

即答で違うと、そう言って欲しかったのかもしれない。











「…僕は自由を得て、生贄のような使われ方を回避したい。」


アドムはニヤリと笑う。
「土に生まれた事が憎いか?」

「・・・両親を恨め。」



「親の遺伝が、強いそうだ。」





身体中が一気に熱くなった

「…俺は!!」

「・・・親に感謝している!!!」



「恨めだと!!?絶対に許さん!!」





急に冷静ではいれなくなる。











それを見たアドムが、更にニヤリと笑う。



「…おうおう、青いな。」

「せっかく冷静な奴だったのに。見込み違いか?」











そう言って、戦いが始まった。

火のついた大剣を持つアドムが、物凄い速度で大きく振り回して襲ってくる。



隙を窺いつつも、みっともなく避けて転がる。



「…おいおいなんだよアイツwwwww」

「俺らも応援するぜ?そら!!」

「俺もだ!!」





外野が騒ぎ、石を投げつけてきた。



所々ぶつかり、痣になる。





一騎打ちの概念が無いのか

残念だ。



切り札の使用を早めなくては



「アンタの部下は、大層ガラが悪いな・・・・」



「悪いな。」

「元々の生まれが悪い奴らばかりだ。」



「・・・おいてめえら、余計な事すんな!」











「けっ!!女が待ってんすよー!!」

「・・・早くしろってんだ」

「・・2年のくせに」

「偉そうにしやがって」









ガラが悪い

そして人間性以外も悪そうだ。









これは先に行かせたくないな。

仕方ない。











「アドムさん、なんで俺がここに来たか分かる?」



「…はあ?一騎打ちだろ?」







そう言いながら、大剣で切りつけ、距離が離れた際には火の球で攻撃してくる。全くもって隙が無い。ずっと攻撃できるのだ。剣の振り終わりに近付きたいが、火の残像が残り、暑くて近寄れない。











それらの攻撃を、土の壁で防ぐ。



泥や石を飛ばすも、剣で防がれてしまう。

何も効果のある攻撃が見つからない。













・・・そんなの元々、分かっていた。

俺は手段を用意している。















「・・・・・違うんだ。アドムさん。」



「…じゃあ、なんだよ?」

「死ぬ前に言ってみろよ!!」

余裕そうに攻撃してくるアドム。













それをネズミの様に、みっともなく逃げて、その場で言う。











覚悟も決まった。













「・・・・道連れだよ。」



急にアドムの背中が冷えた。

なんて怖い目つきをしているのだ、この少年は。









アドムは初めて少年を畏怖した。



怖い。



そう思ったのだ。











「おい!!!皆逃げr」









「…崩壊しろおおおおおおおおお!!!!ありったけの魔力をやるわああああああああああああああああああ!!!!!」













そう言った瞬間。上から大量の瓦礫が降ってきた。更に下の地盤が一気に崩れたのだ。







洞穴の一番開けた場所が、一気に崩れ、洞穴の底へと向かっていく。



戦いの前に、アルは洞穴の中を風の姉さんと共に細工していたのだ。時間が無く、足止めが作れない事も有り、最後は自分が足止めとそのスイッチを押すと決めて。









落ちていく瞬間、アドムはアルを捕まえた。







「…てめえ!!!最初からこれをやるつもりで!!!」



「…正解です。アドムさん。」

「70mは掘ったよ。穴。…痛いかなあ?」



「…あ、あと。」

「…旗は誰も向かっていないよ?」





アドムの表情が固まった。


「皆、こっち来てたら、対処できなかった。」






絶叫するアドム。
「くそがああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」







火の魔法で上昇気流を起こす者や、風で真空の足場を作る者もいたが、全て上からの瓦礫と下の足場の崩落の2方向を対処出来ず、無事だった者はいない。









…Dクラス32名とFクラス1名の脱落。殆ど戦況は決した様であった。





その後、自分達の旗に戻る早馬隊。



一向に何もされていない事に気付いたDクラスの早馬隊は、騙されたと気付き、すぐにアドム達の後を追う





そこに残っていた罠と、洞穴から出てきた残りのFクラスの人に奇襲を受け、丁度8割を過ぎた頃に模擬大戦終了の笛が鳴った。









「…いやー。凄かった!!貴方最高よ!!!」



病院のような場所で、お姉さん方に囲まれて、包帯まみれの俺がいる。





あの後、洞穴から教師たちの力で救い出され、魔法で復活する。



復活は良いが、ダメージ量が回復するまでは安静だそうだ。





Fクラスのお姉さん達に、べた褒めされて過ごすが、身体はしんどい。





「いくら死なない制御がされているフィールドでも、痛みやケガに近い状態は残るわよねえ。」





「は・・・初めから知っていたら・・・。」



「でも勝てて・・良かったですね。」

「…報奨金で、皆3年分の生活費を貰ったって。」



「そうよ?だから貧しい出自の子達は、皆貴方に感謝しているわ。」





・・・嬉しい。

単純に人の役に立てたというのが。



「・・・ありがとうございます。」



「…変な子ね、お礼は皆が言いたいのに。」



コンコン



「誰か来たわね?」



クリスさんが出迎えると、そこにはシャキッとしたアドムが居た。



「なんだ?…情けない。」

「俺に勝ったなら、直ぐに回復しろよ?アル。」



「あ、アドムさん?」



「今日は見舞い次いでに、勧誘だ。」

「戦いの時も言ったが、俺は一隊を任される。アルピエロよ。お前、俺の下に付け。その才能は壁には惜しい。何よりその犠牲心。俺は、お前が少し怖くもなった。」



「…俺は土です。」

「戦場に出たら、壁になるんでしょう?」





アドムが大きく笑う。

「…あれを見たら、変わる。」

「壁をやるより良い戦い方があるな?…例えば道連れとか。」



どっちにしても、死ぬんかい。



「母と約束したんです。【絶対に生き延びる】と。」



「その約束で、土とは悲しいもんだ。まあ、気が変わったら連絡しろ。俺は2年だ。時間はある。いつでも来い。参謀でも先行役でも、お前は優秀だ。」





素直に嬉しい

人に認められるのは。







ただ2年でその態度か。

金、持っているからかな。

アドムのその態度も、非常に印象に残った。





「…分かりました。」

「もしそうなったら、よろしくお願いします。」



「おう。じゃな。」

「クリス。そいつに嫌気さしたら、拾ってやるぜ?」



「…お構いなく、アドム坊ちゃん?」

「やめろよ、クリス。」



おいおい

クリスさんと親しいのか

畜生。



「アドム坊ちゃんは、私の母の務める貴族様の息子様なんです。」



「へー。成程」



「魔力量は少ないですが、剣術は非常に強く、騎士団に入る事が決まった逸材です。」



「ただ・・・・」

「ただ?」



「少し性にだらしなく、女性を侍らせる癖が残念なのと、戦いの最中も…人の身体をよく触ってくる人でした。」



お前か。

アドム、許すまじ。





「成程。仲良く出来そうにないですね?」

「そんな事は。アドム坊ちゃまが興味を示す人はなかなかいません。」





成程ね、そう言いながら次の試合が気になった。



「クリスさん次の試合ってそう言えばいつなの?」





・・・困った顔をするクリスさんが言う。

「・・・明日ですよ?」



今月の活躍は、一回だけの様だ。悔しさが募る。

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