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赤いワンピースの女の子 ①
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男女二人のカップルが、寂しい廃墟内を徘徊する。
「タケシ、怖い…ねぇ、帰ろうよ。」
彼女の方は、彼氏の腕にもたれ掛かりながらガクガク震えている。
「マイコは、怖がりだなあ。どうってことないって。」
「嫌だ…だって…」
「さあな。」
「私がビビリなの知ってるでしょう、何で、そんな所に…?」
女性は、不満気に顔を歪ませる。
「探索だよ、探索。」
彼氏の方は、懐中電灯をつけながらノリノリで口笛を吹いた。
「ねぇ、やめようよ…こんな廃虚、不気味だし、」
「大丈夫、大丈夫。いざと言う時に備えて、塩をばらまけば良いことだし。」
後部座席には、調理用の塩の袋があった。
「塩って…これ、スーパーやコンビニでよく見る調理用のやつじゃん。専用の塩じゃないと、意味無いと思うよ?」
「マイコは、ホントにビビりだよな…塩さえあれば、何とかなるんだよ。番組とかでも、よくやってただろ?」
二人は、廃墟の奥の奥へ入った。
不気味さは、一層増してくる。
この辺りは、旧校舎だったらしい。最近、新校舎が出来、この建物は旅館としてリフォームすることになったようだった。
リフォーム予定は、まだ決まってない。
それには訳がある。
リフォームする企業の従業員が、立て続けに体調不良を起こしたのだ。
そのため、どの企業もリフォームを嫌がりこうして放置状態となったのだ。
「へぇー、すげーなあ。」
彼氏の方は感心しながらキョロキョロクビを回している。
「仕方ないね…」
彼女は、呆れ顔で渋々ついて行く。
天井には、ワイン染みのような赤紫色の点々が広がっており、壁には黒ずんだようなシミも広がっていた。
所々、昭和から平成初期に見るような懐かしの家具や電話機、玩具が放置されており、赤茶色の錆が目立っていた。それはかなりの年季を思わせていた。
電気は付かなく、いつ幽霊が出現しても怖くない。
振り子時計が不気味にチクタク鳴り続け、その音が不気味に辺りに反響していた。
時刻は、午後の三時を回っていた。
ーと、二人は急に背筋に寒気を覚えた。
咄嗟に振り向くと、赤いワンピースを着たボブカットの女が一瞬で、通り過ぎるのを見た。
「ねえ、さっき、赤い服の女の人が…」
「ああ…そうだな…」
二人は、瞠目し唇を震わせた。
「ねぇ、早く帰ろうよ。」
「そ、そうだな…そうしよう。」
二人は、ユータンして出口目掛けて走っていった。
ーと、急に辺りに焦げ臭い匂いが充満した。
そして、煙が黙々と辺りを覆い尽くした。
「な、何なの…?これ…?」
この建物内に、他に誰かいたような痕跡は無かった。しかも、ここは廃墟内だ。
煙の奥の方から、女性のシルエットが姿を現した。
そして、その煙は弱まり、火災警報器の音が反響した。
二人は、ビクッと大きく仰け反った。
煙の向こう側にあるシルエットが、徐々に顕となる。
顔が、じわじわと明るみになる。
二人の身体は、動かないー。
身体の右半分が焼け爛れた女性が、不気味に微笑む顔が見えた。
皮膚はむけ、肌は赤く腫れ上がっている。
いつの間にか、オレンジ色の炎がバチバチ激しい音を立てていた。
誰も居ない、30年前に廃墟とかした建物内で、二人の金切り声が、反響した。
サトコは、重たい足取りで職場まで向かう。
「また、山口先生の事を考えてるのか?」
声の主の方を振り向くと、そこに黒須が立っていた。
「黒須…居たんだ。」
「山口先生の事は、残念だと思ってる。お前の、唯一の心を許す相手だったんだろ?」
「え…?何で、それを…」
「お前の気持ちは、オーラを読み取る事で大体分かるんだよ。」
「山口先生…私の唯一の味方だった人なんです。だから、どうしても、もう居ないことが信じられなくて…それに、どうして私に自分の正体を隠していたのかが分からなくて…」
サトコは、目に涙を浮かべている。
「彼女は、お前を守りたかったんだと思う。お前は、それを無駄にしてはいけない。彼女の分まで生きるんだよ。」
黒須は、優しくサトコの背中を叩いた。
サトコは、それを受け入れるにもそれがいつ出来るのかが、分からなかった。
時間が解決してくれる。
サトコは、自分にそう言い聞かせることにした。
ーと、黒須の胸ポケットの通信機が音を出した。
「はい、黒須。…アオバ郊外西公園の廃墟…?分かりました。今、向かいます。」
黒須は、電話を切った。
「済まない。サトコ、仕事が来た。何かあったら、いつでも連絡しな。」
「うん。分かった。」
黒須は、すぐそばに止めてあったバイクに跨るとエンジン回し飛ばし去った。
「もう、いつも急なんだから…」
サトコは、しかめっ面で彼女の背中を睨みつけた。
着替えて事務所まで向かう。
ーと、中に入りタイムカードを切った時、テレビの前でガヤガヤ人だかりが出来ているのが見えた。
「どうしたんですか?」
サトコは、そばにいた事務員二人に尋ねてみた。
「あ、白田さん…良いところきたね。実はね、郊外の廃墟内に男女二人の焼死体が発見されたって、ニュースでやっていたのよ…」
「それが、奇妙なんだよね…」
「そうそう。あそこ、30年くらい前から廃墟だったみたいなんだよね。」
「電気もガスもとっくに止められてるのに、焼死体だなんて…それに二人は火の気のあるもの持ってないみたいなのよ。」
「あるとしても、懐中電灯ぐらいなんだけど、それそのものは壊れてなかったみたいだし…」
「あの懐中電灯で、そこまで家事が起きるのか疑問だしね。」
「そうそう。」
二人は、興味津々になりテレビを見ながら首を傾げていた。
サトコも、そのテレビの方に視線をやる。
画面内に、皮膚が捲れ赤く焼け爛れふくもろとも黒焦げな男女の焼死体が映し出されていた。
電気もガスも通らないただの廃墟で、しかも、二人だけが綺麗に焼けている。
二人の辺りは、黒焦げとまでは行かず錆れたもののほぼ綺麗なままだった。
もしかしたら、黒須はそこに潜む霊魂を浄化する為に向かったのだろう。
サトコは、瞠目しながらその摩訶不思議な不気味な光景を眺めていた。
「タケシ、怖い…ねぇ、帰ろうよ。」
彼女の方は、彼氏の腕にもたれ掛かりながらガクガク震えている。
「マイコは、怖がりだなあ。どうってことないって。」
「嫌だ…だって…」
「さあな。」
「私がビビリなの知ってるでしょう、何で、そんな所に…?」
女性は、不満気に顔を歪ませる。
「探索だよ、探索。」
彼氏の方は、懐中電灯をつけながらノリノリで口笛を吹いた。
「ねぇ、やめようよ…こんな廃虚、不気味だし、」
「大丈夫、大丈夫。いざと言う時に備えて、塩をばらまけば良いことだし。」
後部座席には、調理用の塩の袋があった。
「塩って…これ、スーパーやコンビニでよく見る調理用のやつじゃん。専用の塩じゃないと、意味無いと思うよ?」
「マイコは、ホントにビビりだよな…塩さえあれば、何とかなるんだよ。番組とかでも、よくやってただろ?」
二人は、廃墟の奥の奥へ入った。
不気味さは、一層増してくる。
この辺りは、旧校舎だったらしい。最近、新校舎が出来、この建物は旅館としてリフォームすることになったようだった。
リフォーム予定は、まだ決まってない。
それには訳がある。
リフォームする企業の従業員が、立て続けに体調不良を起こしたのだ。
そのため、どの企業もリフォームを嫌がりこうして放置状態となったのだ。
「へぇー、すげーなあ。」
彼氏の方は感心しながらキョロキョロクビを回している。
「仕方ないね…」
彼女は、呆れ顔で渋々ついて行く。
天井には、ワイン染みのような赤紫色の点々が広がっており、壁には黒ずんだようなシミも広がっていた。
所々、昭和から平成初期に見るような懐かしの家具や電話機、玩具が放置されており、赤茶色の錆が目立っていた。それはかなりの年季を思わせていた。
電気は付かなく、いつ幽霊が出現しても怖くない。
振り子時計が不気味にチクタク鳴り続け、その音が不気味に辺りに反響していた。
時刻は、午後の三時を回っていた。
ーと、二人は急に背筋に寒気を覚えた。
咄嗟に振り向くと、赤いワンピースを着たボブカットの女が一瞬で、通り過ぎるのを見た。
「ねえ、さっき、赤い服の女の人が…」
「ああ…そうだな…」
二人は、瞠目し唇を震わせた。
「ねぇ、早く帰ろうよ。」
「そ、そうだな…そうしよう。」
二人は、ユータンして出口目掛けて走っていった。
ーと、急に辺りに焦げ臭い匂いが充満した。
そして、煙が黙々と辺りを覆い尽くした。
「な、何なの…?これ…?」
この建物内に、他に誰かいたような痕跡は無かった。しかも、ここは廃墟内だ。
煙の奥の方から、女性のシルエットが姿を現した。
そして、その煙は弱まり、火災警報器の音が反響した。
二人は、ビクッと大きく仰け反った。
煙の向こう側にあるシルエットが、徐々に顕となる。
顔が、じわじわと明るみになる。
二人の身体は、動かないー。
身体の右半分が焼け爛れた女性が、不気味に微笑む顔が見えた。
皮膚はむけ、肌は赤く腫れ上がっている。
いつの間にか、オレンジ色の炎がバチバチ激しい音を立てていた。
誰も居ない、30年前に廃墟とかした建物内で、二人の金切り声が、反響した。
サトコは、重たい足取りで職場まで向かう。
「また、山口先生の事を考えてるのか?」
声の主の方を振り向くと、そこに黒須が立っていた。
「黒須…居たんだ。」
「山口先生の事は、残念だと思ってる。お前の、唯一の心を許す相手だったんだろ?」
「え…?何で、それを…」
「お前の気持ちは、オーラを読み取る事で大体分かるんだよ。」
「山口先生…私の唯一の味方だった人なんです。だから、どうしても、もう居ないことが信じられなくて…それに、どうして私に自分の正体を隠していたのかが分からなくて…」
サトコは、目に涙を浮かべている。
「彼女は、お前を守りたかったんだと思う。お前は、それを無駄にしてはいけない。彼女の分まで生きるんだよ。」
黒須は、優しくサトコの背中を叩いた。
サトコは、それを受け入れるにもそれがいつ出来るのかが、分からなかった。
時間が解決してくれる。
サトコは、自分にそう言い聞かせることにした。
ーと、黒須の胸ポケットの通信機が音を出した。
「はい、黒須。…アオバ郊外西公園の廃墟…?分かりました。今、向かいます。」
黒須は、電話を切った。
「済まない。サトコ、仕事が来た。何かあったら、いつでも連絡しな。」
「うん。分かった。」
黒須は、すぐそばに止めてあったバイクに跨るとエンジン回し飛ばし去った。
「もう、いつも急なんだから…」
サトコは、しかめっ面で彼女の背中を睨みつけた。
着替えて事務所まで向かう。
ーと、中に入りタイムカードを切った時、テレビの前でガヤガヤ人だかりが出来ているのが見えた。
「どうしたんですか?」
サトコは、そばにいた事務員二人に尋ねてみた。
「あ、白田さん…良いところきたね。実はね、郊外の廃墟内に男女二人の焼死体が発見されたって、ニュースでやっていたのよ…」
「それが、奇妙なんだよね…」
「そうそう。あそこ、30年くらい前から廃墟だったみたいなんだよね。」
「電気もガスもとっくに止められてるのに、焼死体だなんて…それに二人は火の気のあるもの持ってないみたいなのよ。」
「あるとしても、懐中電灯ぐらいなんだけど、それそのものは壊れてなかったみたいだし…」
「あの懐中電灯で、そこまで家事が起きるのか疑問だしね。」
「そうそう。」
二人は、興味津々になりテレビを見ながら首を傾げていた。
サトコも、そのテレビの方に視線をやる。
画面内に、皮膚が捲れ赤く焼け爛れふくもろとも黒焦げな男女の焼死体が映し出されていた。
電気もガスも通らないただの廃墟で、しかも、二人だけが綺麗に焼けている。
二人の辺りは、黒焦げとまでは行かず錆れたもののほぼ綺麗なままだった。
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