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天国と地獄 ④
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辺りに、硫黄のような奇妙な匂いが、辺りに充満する。
ドライアイスのように乾いた重苦しい空気が、辺りを漂う。
とてつもなく強力な霊気に、サトコは気を失いそうになる。
だが、なんとか力を振り絞り体勢を立て直す。
「この、止まっている少年に憑依した霊も、己の理想を貫こうとしたのよ。この霊は、可哀想に生前に酷い虐めにあったのよね。彼は、過去に100人もの人間を殺めてきたのよ。」
魔王は、優しく悠然と話す。
サトコは、ハッとした。
思い出した。
中学生時代、酷い虐めにあっている人がいた。
数日後、その子を虐めている人全員が、不可解な死を遂げていた。
学校は、自殺と処理した。
だとしたら、あの、学校での不可解な自殺も、彼の仕業だと言うのだろうかー?
「あなたの仕業なんでしょう。あなたが、彼に何か、それをして、あなたの利益にはなりませんよ。自然の流れに逆らうと、かならず報いが来ますから。」
「私は、ただ、彼のお手伝いをしてあげただけよ。力を貸してあげただけ。私は、彼の願望を叶えてあげたかったの。」
「彼はそれを望んでいるかもしれないけど、それは彼の為にはならない。」
「アリアもそれを望んでいるのよ。生者も死者も、みんな平等に弱い。だから、私達が理想を叶えるお手伝いをしてあげてるのよ。」
「それは、あなたのエゴです。身勝手な理想に、巻き込まないで。よくも、あの時、サエコになりすまし私を弄びましたね。あの夢の中の化け物の正体は、あなたです。」
サトコは、サジタリウスを構え語尾を強めた。
「フフフ。ようやく気付いたようね。」
アリスは、ほくそ笑む。
コイツは、大量の霊を取り入れようとしている。
次第に、身体が次第に重くなっていく。
サトコは、辛うじて片膝を着きながらサジタリウスの照準を魔王に合わせ、引き金を引いた。
弾丸は魔王の額に直撃した。
それと同時に、硫黄臭は、益々強烈になっていく。
煙が、もくもくと湧き上がる。
硫黄の煙の向こう側から、
あらゆる霊魂の悲鳴が、雄叫びが聴こえてくる。
苦しみ、悲しみ、絶望。
それは、生前叶わなかった夢や苦悩、あらゆる混沌とした想いが渦巻いている。
弾丸の弾は、浄化の役目もある。
死者の感情を己の私利私欲の為に弄ぶ事は、決して許されない。
浄化され、安らかに眠って欲しい。
サトコは再び、サジタリウスの引き金を弾いた。
ーと、菫色の炎が遮った。
「ー!?」
「リオ、そこまでしなくていいのよ。私の方が、霊力有り余ってるんだから。」
煙は薄らいでいき、そこにはリオの姿があった。
「アリス様、ただ今戻りました。パンドラの扉を開ける準備が整いました。」
「お帰りなさい。リオ。」
二人は、目を閉じ思いっきり息を吸い込んだ。
四方八方から無数の魂が集まっていき、そして二人の口の中に吸い込まれていく。
「やめてーーーーー」
サトコの悲痛な叫びは虚しく、空に散っていく。
ーと、その瞬間、二人の動きは、止まった。
「これ以上、やめとけ。このままだと、壊れるぞ。知っててやってるのか?」
声のする方を振り向くと、そこには黒須の姿があった。
「黒須…!?」
「コイツらには、沢山借りがあるんだ。償って貰うぞ。」
「借り?ああ、あの頃の、フフフよく覚えてないわ。沢山食べちゃったから。」
アリスは、不敵な笑みを浮かべている。尚も、二人の身体にひびが生え続ける。
「お前は、何千何百もの生者や死者を弄んだ。自然の摂理に逆らってきたんだ。ここで消え逃げは無しだぜ。」
黒須は、眉ゆ鋭く尖らせ鎌をキツく握り締めた。
「私は皆の理想を叶えるお手伝いをしただけ。皆、恍惚としていたわ。ミオって子もね。」
「そうですね。それで、良かったのだと思います。私も今まで、沢山の魂を刈り取り吸収してきました。そして、彼らは私の中でに幸せになっているのです。」
リオは、胸に手を当て首肯した。
アリスとリオの身体に、みるみるひびが生えてくる。
メリメリメリメリ音を立て、そしてそれは全身に伝っていく。
「皆、幸せになれれば、それで良いのよ。私達は。」
「ええ。アリス様。」
「もう、ここに居ても私達の理想は叶わないわね。」
「ええ。人の苦悩を観察し不幸を反動に理想を叶える」
「どういうことだ…?」
黒須は、怒りの顔を顕にする。
「理想には、犠牲がつきものなのよ。」
「ふざけるな!!!」
黒須は、怒りで全身を震わせながら鎌を振るった。
ーと、その瞬間、
二人の身体は、硝子の人形の如く割れた。そして、その身体は砂のような粒の塊になり、そして砂のようなかたまりになった。そこから黄土色の煙が立ち込め、硫黄臭が充満してくる。
その中から、魂らがみるみる飛び出てきた。それらの無数の魂達は解放され、天高く舞い上がり雲の向こう側へと吸い込まれるようにして消えた。
そこには、安寧の気持ちで包まれていた。
サジタリウスの浄化作用が効いたようだ。
「黒須…?」
サトコは、不安げに黒須の方を向く。だが、彼女は無言で俯いていた。
彼女は何か苦しみがあり、それを二人に弄ばれた。
二人に復讐を果たし、霊界へと連れて行く予定だったのだろう。
だが、二人は消滅してしまった。
怒りのぶつけ先がない。
「器が集めすぎた魂の圧力に耐えられなくなって、そして消滅したんだよ。奴らは、わざとそれをやったんだ。この世界では理想の限界が来たから、転生し次の理想郷でやり直す、そんな予定だったのだろう。」
彼女は、眉間に皺を寄せながらも何とか理性を保っている状態だった。
その瞬間、止まっていた筈の時間が動き出した。
二人はハッとし、ヨウタに取り憑いた霊の方を向いた。
ドライアイスのように乾いた重苦しい空気が、辺りを漂う。
とてつもなく強力な霊気に、サトコは気を失いそうになる。
だが、なんとか力を振り絞り体勢を立て直す。
「この、止まっている少年に憑依した霊も、己の理想を貫こうとしたのよ。この霊は、可哀想に生前に酷い虐めにあったのよね。彼は、過去に100人もの人間を殺めてきたのよ。」
魔王は、優しく悠然と話す。
サトコは、ハッとした。
思い出した。
中学生時代、酷い虐めにあっている人がいた。
数日後、その子を虐めている人全員が、不可解な死を遂げていた。
学校は、自殺と処理した。
だとしたら、あの、学校での不可解な自殺も、彼の仕業だと言うのだろうかー?
「あなたの仕業なんでしょう。あなたが、彼に何か、それをして、あなたの利益にはなりませんよ。自然の流れに逆らうと、かならず報いが来ますから。」
「私は、ただ、彼のお手伝いをしてあげただけよ。力を貸してあげただけ。私は、彼の願望を叶えてあげたかったの。」
「彼はそれを望んでいるかもしれないけど、それは彼の為にはならない。」
「アリアもそれを望んでいるのよ。生者も死者も、みんな平等に弱い。だから、私達が理想を叶えるお手伝いをしてあげてるのよ。」
「それは、あなたのエゴです。身勝手な理想に、巻き込まないで。よくも、あの時、サエコになりすまし私を弄びましたね。あの夢の中の化け物の正体は、あなたです。」
サトコは、サジタリウスを構え語尾を強めた。
「フフフ。ようやく気付いたようね。」
アリスは、ほくそ笑む。
コイツは、大量の霊を取り入れようとしている。
次第に、身体が次第に重くなっていく。
サトコは、辛うじて片膝を着きながらサジタリウスの照準を魔王に合わせ、引き金を引いた。
弾丸は魔王の額に直撃した。
それと同時に、硫黄臭は、益々強烈になっていく。
煙が、もくもくと湧き上がる。
硫黄の煙の向こう側から、
あらゆる霊魂の悲鳴が、雄叫びが聴こえてくる。
苦しみ、悲しみ、絶望。
それは、生前叶わなかった夢や苦悩、あらゆる混沌とした想いが渦巻いている。
弾丸の弾は、浄化の役目もある。
死者の感情を己の私利私欲の為に弄ぶ事は、決して許されない。
浄化され、安らかに眠って欲しい。
サトコは再び、サジタリウスの引き金を弾いた。
ーと、菫色の炎が遮った。
「ー!?」
「リオ、そこまでしなくていいのよ。私の方が、霊力有り余ってるんだから。」
煙は薄らいでいき、そこにはリオの姿があった。
「アリス様、ただ今戻りました。パンドラの扉を開ける準備が整いました。」
「お帰りなさい。リオ。」
二人は、目を閉じ思いっきり息を吸い込んだ。
四方八方から無数の魂が集まっていき、そして二人の口の中に吸い込まれていく。
「やめてーーーーー」
サトコの悲痛な叫びは虚しく、空に散っていく。
ーと、その瞬間、二人の動きは、止まった。
「これ以上、やめとけ。このままだと、壊れるぞ。知っててやってるのか?」
声のする方を振り向くと、そこには黒須の姿があった。
「黒須…!?」
「コイツらには、沢山借りがあるんだ。償って貰うぞ。」
「借り?ああ、あの頃の、フフフよく覚えてないわ。沢山食べちゃったから。」
アリスは、不敵な笑みを浮かべている。尚も、二人の身体にひびが生え続ける。
「お前は、何千何百もの生者や死者を弄んだ。自然の摂理に逆らってきたんだ。ここで消え逃げは無しだぜ。」
黒須は、眉ゆ鋭く尖らせ鎌をキツく握り締めた。
「私は皆の理想を叶えるお手伝いをしただけ。皆、恍惚としていたわ。ミオって子もね。」
「そうですね。それで、良かったのだと思います。私も今まで、沢山の魂を刈り取り吸収してきました。そして、彼らは私の中でに幸せになっているのです。」
リオは、胸に手を当て首肯した。
アリスとリオの身体に、みるみるひびが生えてくる。
メリメリメリメリ音を立て、そしてそれは全身に伝っていく。
「皆、幸せになれれば、それで良いのよ。私達は。」
「ええ。アリス様。」
「もう、ここに居ても私達の理想は叶わないわね。」
「ええ。人の苦悩を観察し不幸を反動に理想を叶える」
「どういうことだ…?」
黒須は、怒りの顔を顕にする。
「理想には、犠牲がつきものなのよ。」
「ふざけるな!!!」
黒須は、怒りで全身を震わせながら鎌を振るった。
ーと、その瞬間、
二人の身体は、硝子の人形の如く割れた。そして、その身体は砂のような粒の塊になり、そして砂のようなかたまりになった。そこから黄土色の煙が立ち込め、硫黄臭が充満してくる。
その中から、魂らがみるみる飛び出てきた。それらの無数の魂達は解放され、天高く舞い上がり雲の向こう側へと吸い込まれるようにして消えた。
そこには、安寧の気持ちで包まれていた。
サジタリウスの浄化作用が効いたようだ。
「黒須…?」
サトコは、不安げに黒須の方を向く。だが、彼女は無言で俯いていた。
彼女は何か苦しみがあり、それを二人に弄ばれた。
二人に復讐を果たし、霊界へと連れて行く予定だったのだろう。
だが、二人は消滅してしまった。
怒りのぶつけ先がない。
「器が集めすぎた魂の圧力に耐えられなくなって、そして消滅したんだよ。奴らは、わざとそれをやったんだ。この世界では理想の限界が来たから、転生し次の理想郷でやり直す、そんな予定だったのだろう。」
彼女は、眉間に皺を寄せながらも何とか理性を保っている状態だった。
その瞬間、止まっていた筈の時間が動き出した。
二人はハッとし、ヨウタに取り憑いた霊の方を向いた。
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