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第3王子 ケビン
しおりを挟む「…今回は計画だったとはいえ、マリアの立場上これからそういう不埒な考えを起こす輩は増えてくるかもしれませんね。」
キュアが珍しく真剣な顔をして考え込む。
「考えるだけで頭が痛いな…でも、今後は姉上もマリアの後ろ盾になってくれているから今回の様なバカな事をする奴はもういないだろうとは思うが…」
ユシン様も複雑な表情を浮かべる。
「手伝えることがあったら言ってくれ。」
「私も微力ながら力添えしますわ。」
ユア様とキュアの言葉を聞いてユシン様は「頼む」と微笑む。
3人の会話を聞いていて自分が関わる事なのに、全く実感が湧かない。つくづく私はなんの取り柄も力も持たない人間なんだな…
助けてもらってばかりだ。
ただただ虚しさが襲ってくる。
…私はどうしたらいいんだろう。
単なる仮の婚約者なのに…ここまで周りを巻き込んでしまっていいのだろうか…
*****
自分の気持ちも分からず、周りの状況にも着いて行けずただ時間だけが過ぎてしまい、気付けば放課後。
…そう言えば色々あってこれからどうしたらいいかユシン様と全く打ち合わせをしていなかった。
とりあえず、いつもの様にユシン様を玄関先で待つ。
夜会が終わったから必要ないとも思うけど、一応仮とは言え婚約者ですからね。淑女教育等は今後も継続していくかもしれませんし…
少し不安な気持ちを抱えながら待っていると、ユシン様が上級生らしき美しい“the貴族”という風貌の女性と腕を組んでこちらに向かってきた。
……誰?
親しげに会話をしながらこちらに進んできて、ユシン様は私に気づくと一瞬気まずそうな表情を向けてからすぐに瞳を私からそらした。
「あら?この子は…」
「ユーラ。急ぐのだろう?」
ユシン様と一緒にいる女性が私に気づいて声を掛けようとするけど、ユシン様がそれを遮って私の前を通り過ぎようとする。
ユーラ?
「ユシン様っっ」
「どうしたマリア?」
私から離れて行こうとするユシン様を呼び止めると、ユシン様は嫌々そうに立ち止まる。
目線は明らかに私を避けている。
「あの…淑女教育やダンスレッスンは…」
「あぁ…夜会も終わったしもう必要ないだろう?今日から自由にすればいい。」
「自由に…?」
「ああ。また何かあったら連絡する。」
「…はい。」
なんだろう…嫌だったはずなのに…
『必要ない』
その言葉が…
素っ気ないユシン様の態度が…
胸にナイフを刺した様に苦しくなる。
私は離れていくユシン様と女性の後ろ姿をただぼんやりと見つめる事しかできなかった。
ユシン様と一緒にいた女性は誰?
夜会の時とは全く異なるユシン様の態度。
息が詰まる様な感覚が身体中巡って動けない。
私はユシン様の仮の婚約者。
ユシン様のお父様の勘違いから婚約者になっただけの人間。
いつかは解消される関係。
分かっている事じゃない。
ユシン様の隣に誰が居ようと…
ユシン様が何をしようと私が口を出せる立場ではない。
でも…
何でこんなにも苦しいんだろう。
「おい…お前。そんな所で突っ立っていられると邪魔なんだが。」
「えっあっ…」
どのくらいその場に立ち尽くしていたかわからない。
気づいたら目線の先にユシン様の姿はもうない。
「何をしてるんだ。」
「あっ…申し訳ありませ…っきゃっっ」
男性の声に慌ててその場から退こうとしたら足がもつれて転んでしまった。
…地味に痛い。
「お前はなにをしているんだ。」
私に声をかけてきた男性は呆れ顔で私に手を差し出す。
戸惑いながらも差し出された手を無視するのは失礼だと思い、手を重ねると力強く引き寄せられて立たされる。
えっと…この人…だれだろ?
「怪我はしてないな。」
「えっ…はい。大丈夫です。えっと…」
「礼も挨拶もしないとは…俺が誰だか知らないのか?」
礼も挨拶も?
って事は高位貴族の方…
私は佇まいをすぐに直してその男性から距離を取ると頭を下げる。
誰だか分からないけど、貴族社会に置いて上下関係は絶対的だ。
「も…申し訳ございません。助けて頂きありがとうございます。
私はバウンドル男爵家マリア・バウンドルと申します。」
「マリア…バウンドル……バウンドル?男爵…あぁ。お前がユシンの…」
「えっ…と…」
「俺を知らないのか?」
「……」
「婚約者の兄…この国の王族の顔を知らないとは。」
婚約者の兄…王族…
あっ…
「俺はこの国の第三王子のケビン・タキダール。お前の婚約者であるユシンの兄だ。」
ヤバイ…やってしまった…
正直バタバタしてたし、王族という存在に全くもって興味がなかったからユシン様の兄弟まで把握していなかった。
「も…申し訳ございません…」
焦る私をケビン様はジッと鋭い目で見定める様に見る。
ケビン様はユシン様以上に眼力強すぎて怖いんですけど…
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