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ケビン様と私
しおりを挟む「なるほどな…男爵令嬢と聞いてどう言うものかと思ったが中々ユシンも隅に置けないな。ダイヤの原石を見つけたという所か…」
「…はい?」
ケビン様はボソリと何か呟くと私の顎に手を当てて顔をクイっと持ち上げる。
顔が…
顔が近い…
「悪くない。ユシンなんて辞めて俺にしないか?」
………はい?
「婚約者の交換…まぁ世間は騒ぐかもしれないが、中々面白い事になるとは思わないか?」
「…えっと…何をおっしゃっていられるのか分りかねるのですが…」
「ユシンはユーラと一緒に帰って行っただろう?見なかったか?」
ユーラ…
「はい…確かそんなお名前の方と…あの…ユーラ様とは…」
「そんな事も知らないのか?ユーラはマリダス公爵家の長女。私の婚約者だ。」
えっ?あの方が…
でも、なんでケビン様の婚約者とユシン様が手を組んで2人で帰っていくのですか?
しかもあんな堂々と…
「昔から何かとあの2人は仲がいいんだ。気付けば2人でなにかをしている。俺に隠れてな。」
「そう、なのですか?」
「仲の良い2人で婚約でもすれば良い。あぶれた者同士一緒になろうじゃないか。色々思う所はあるが、お前の見た目はまぁまぁ俺の好みだ。あの父上がユシンの婚約者にあてがったならその他モロモロも問題ないのであろう。どうだ?」
どうだって…
「いや。問題ありまくりでしょ。」
「なに?」
「…いえ。それは勝手に決められる事では無いのでは?」
「大丈夫だろう。相手が変わるだけだ。」
大丈夫じゃないでしょ。
第三王子。頭大丈夫?
ユシン様もエリカ様も変わった人だし、王族ってみんなこんななの?
この国の未来は大丈夫なのかしら…
「ハハハっっ」
この国の今後を心配していると急にケビン様は大声で笑い始める。
「お前面白いな。この俺に対してそんな露骨にバカにした顔を向けるなんて…あのユシンが気に入っているのも頷ける。冗談のつもりだったが本気で考えてみないか?」
「いえ…お断りいたします。」
「つまらないな。他の女が心にいる男と共になり幸せになれると思うか?」
「他の女が心にいるとは?」
「さっきも言っただろう?昔からユシンとユーラは必要以上に仲が良いんだよ。私と居る時間よりユシンといる時間の方が長いんじゃないか?公爵の口添えで私が婚約者となったが、きっとユシンもユーラも不服だっただろうな。俺とユーラの婚約が決まった後、ユシンはかなり荒れた生活をしていたしな。」
え…
ユシン様はキュアの事が好きなはず…よね。
キュアを好きになる前は……ユーラ様が好きだった?
キュアを諦めなきゃいけないからまたユーラ様に?
キュアにユーラ様…2人とも綺麗で私とは正反対な人だな。
そっか…ユシン様はしっかり失恋を癒す為の行動を起こしているんだ…
実兄の婚約者は友人の恋人より問題アリだと思うけど。
でも、私が口出しできる身分ではない。
私はあくまで“仮”だもの。
ユシン様の好みには私は入らないのはわかっていたけど…
そっか…そうよね。私は最初から対象外なんだ。
だからこそユシン様は私に対して遠慮のない態度なのよね。
それが分かって悲しさが溢れてくるけど、なんだか納得した。
それに関しては納得はしたけど…
どういう理由であれ婚約者の交換とかないわ。
「もうしわけ…」
「ケビン様っっ何をされているのですか?」
ケビン様に断りの言葉を告げようとした丁度その時、私の背後から大声が出されて言葉を飲んでしまう。
「ホビー。いつもの事だがもっと声のボリュームを下げろ。」
「申し訳ありません…それはそうと中々いらっしゃらないから心配しましたよ…えっと。こちらの御令嬢は?」
「あっ…」
「マリアだ。」
「マリア様?」
「現時点ユシンの婚約者だ。」
現時点って…
確かに現時点だけどさ…
ホビーは目を見開いて私を珍しい物でも見るように見てくる。
気不味いな…
「…あ…私そろそろ帰らなければ…」
気まずさに耐えられず私はケビン様に対して深く頭を下げて下げてその場を逃げる様に去ろうとすると、ケビン様は私の腕を掴む。
「マリア。先程の件。本気で考えておいてくれ。近日中に返事を聞きに行くよ。」
え……
本気ですか?
冗談ですよね?
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