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幸せということ
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そんなこんなで騒動から何日か経ち、私は今まで以上に平穏な日々を送っている。
全てが落ち着いて改めて私は今までの事を顧みた。
そして自身自分の立場を理解した。
力ない男爵家の私にはできる事は限られている。
キュアの言ってくれた様にできない事を無理してすることはない。
無理をすることによって周りに迷惑をかける事だってある。
迷惑を掛けないためにも遠慮せず周りの人の協力を得よう。
そして、いづれ自身で解決出来る様に努力していこう。
できることからコツコツと。
単純な事かもしれないけどそれが今私に出来ること。
「マリア。どうした?考え込んで」
「私は本当に恵まれているな…としみじみ感じてました」
ユシン様は目を見開くとフッと優しい顔をする。
「恵まれているのはマリアの人徳だ。だからマリアは今まで通り変わらずいればいい」
ユシン様の言葉に私は首を左右に振る。
「いえ。私も私のできる事をしっかりやっていこうと決意しました。まずは現実から逃げるのを辞めて、心を入れ替え学業を真面目に取り組んでユシン様の婚約者として恥ずかしくない様に努力します。
そしてその中で私のできる事をまた探していきます。
…と言っても過去の分を取り戻すのは時間がかかると思いますが…
今はその位しか私にはできませんから。」
私の決意にユシン様はフッと笑みをこぼす。
「マリアはマリアのしたい様にすればいい。俺はお前を全力でサポートする。」
そう言ってユシン様は私の頬を軽く触れる。
私はそのユシン様の手に自らの手を重ねる。
しあわ…
「そこのお二人は僕達がいるのがわかっていないみたいだね」
「完全2人の世界ですね」
ユシン様とキュアの声で急に現実に戻される。
私は思わずユシン様の手を離すと一歩ユシン様から身体を離す。
2人の生温かい目が自分の心にダメージを与えてくる。
「それにしてもマリア嬢はだいぶ貴族の淑女らしくなったね。仕草といい喋り方といい…出会った頃とは大違いだ。今のマリア嬢は決してユシンの婚約者として恥ずかしいと思う事はないよ」
「えっ?」
ユア様の急な言葉に私は驚きが隠せず固まってしまう。
「確かに。仕草は自然とお淑やかになったし、言葉のイントネーションや言い回しもどこに出ても恥ずかしくない程綺麗になった。マリアの努力の賜物ね。マリアは既に自分ができる事をきちんとやっているわ。周りもキチンとそんなマリアを認めてる。もういじめられていた頃のマリア・バウンドル男爵令嬢はどこにもいないわ」
ユア様とキュアが私に笑みを向けて頷く。
私をきちんと見てくれている人がいる。
こんな嬉しい事はない。
周りから浮かない様にと頑張った。
でも努力をしてもいじめられた。
自分の置かれている立場を恨んだ時もあった。
お父様やお母様の顔を見れない日もあった。
苦しくて辛かった…
全てに絶望してどうでも良くなった…
そして逃げる事を覚えた。
自分を偽る事を覚えた。
そんな中、
ユア様に出会えた。
恋心とは違かったかもしれないけど、ユア様の姿を見るだけで幸せを感じる事ができた。
キュアに出会えた。
キュアの優しさや破天荒さには何度救われたか分からない。
キュアのおかげで私は再び笑う事が出来る様になった。
そして…ユシン様に出会えた。
最初は嫌な人だと思った。関わりたくないと思った。
でも、ユシン様のおかげで私は本来の自分を取り戻せた。
人を好きになるという感情を知った。
自分の為だけじゃなくて人の為に自分自身を見直す事が出来た。
3人との出会いが私の人生を変えてくれた。
落ちるだけだった自分を救ってくれた。
瞳から自然と涙が溢れてくる。
「ありがとう…」
今、この時…
自分でも気付かないうちに自分の中で張り詰めていた糸がプツンと切れた。
この糸を何と言ったらいいかわからない。
プレッシャー?
わだかまり?
涙が止まらないけど、心は温かい。
「マリア。そしてユシン様。話は変わりますが、ご報告したいことがあります。ご連絡遅くなりましたが…私達もやっと婚約を結べる事になりました」
キュアの急な報告に出ていた涙が一気に止まった。
「マリア嬢の騒動があった日に伯爵に許可をもらった」
「えっ…あっだからあの日…」
私がキュアを見ると、キュアは申し訳なさそうに頷く。
「やっとか…良かったなユア」
「これからも色々精進していかないといけないけどな」
「おめでとうキュア。凄く嬉しい」
「ありがとう。将来、私達の子供が仲良く遊ぶ姿を想像しただけで今から楽しみね」
私達の子供?
こども?
キュアはもうそんな事考えてるの?
「そ…それはまだまだ先の事じゃない?」
「そんな遠くない未来だろう」
ユシン様がそういいながらニヤリと笑う。
「でも契約書作成前にお二人に話せて良かったわ。
私達、これから両家の婚約に関しての契約書作成に行ってきます」
「契約書?」
「普通は貴族間の婚約には契約書作成が必要となってる。まぁ。父上が決めた事だが…一時期一方的な悪質な婚約破棄が流行ったからな。それを抑止するためのものだ。」
「…私達はそんな物なかったですよね?」
「俺達は特例だろう。国王直々の婚約だしな。その辺りは父上に感謝だな」
なるほど…
キュアとユア様は幸せそうに教室を出て行く。
前までこの姿を見て砂を吐きそうになっていたけど、今は2人の仲睦まじい姿を見るのは本当に嬉しく感じる。
「俺達も帰るか…家まで送る」
ユシン様はそう言ってごく自然に私をエスコートしてくれる。
うん。
大切な人達に囲まれて、私は本当に幸せ者だ。
全てが落ち着いて改めて私は今までの事を顧みた。
そして自身自分の立場を理解した。
力ない男爵家の私にはできる事は限られている。
キュアの言ってくれた様にできない事を無理してすることはない。
無理をすることによって周りに迷惑をかける事だってある。
迷惑を掛けないためにも遠慮せず周りの人の協力を得よう。
そして、いづれ自身で解決出来る様に努力していこう。
できることからコツコツと。
単純な事かもしれないけどそれが今私に出来ること。
「マリア。どうした?考え込んで」
「私は本当に恵まれているな…としみじみ感じてました」
ユシン様は目を見開くとフッと優しい顔をする。
「恵まれているのはマリアの人徳だ。だからマリアは今まで通り変わらずいればいい」
ユシン様の言葉に私は首を左右に振る。
「いえ。私も私のできる事をしっかりやっていこうと決意しました。まずは現実から逃げるのを辞めて、心を入れ替え学業を真面目に取り組んでユシン様の婚約者として恥ずかしくない様に努力します。
そしてその中で私のできる事をまた探していきます。
…と言っても過去の分を取り戻すのは時間がかかると思いますが…
今はその位しか私にはできませんから。」
私の決意にユシン様はフッと笑みをこぼす。
「マリアはマリアのしたい様にすればいい。俺はお前を全力でサポートする。」
そう言ってユシン様は私の頬を軽く触れる。
私はそのユシン様の手に自らの手を重ねる。
しあわ…
「そこのお二人は僕達がいるのがわかっていないみたいだね」
「完全2人の世界ですね」
ユシン様とキュアの声で急に現実に戻される。
私は思わずユシン様の手を離すと一歩ユシン様から身体を離す。
2人の生温かい目が自分の心にダメージを与えてくる。
「それにしてもマリア嬢はだいぶ貴族の淑女らしくなったね。仕草といい喋り方といい…出会った頃とは大違いだ。今のマリア嬢は決してユシンの婚約者として恥ずかしいと思う事はないよ」
「えっ?」
ユア様の急な言葉に私は驚きが隠せず固まってしまう。
「確かに。仕草は自然とお淑やかになったし、言葉のイントネーションや言い回しもどこに出ても恥ずかしくない程綺麗になった。マリアの努力の賜物ね。マリアは既に自分ができる事をきちんとやっているわ。周りもキチンとそんなマリアを認めてる。もういじめられていた頃のマリア・バウンドル男爵令嬢はどこにもいないわ」
ユア様とキュアが私に笑みを向けて頷く。
私をきちんと見てくれている人がいる。
こんな嬉しい事はない。
周りから浮かない様にと頑張った。
でも努力をしてもいじめられた。
自分の置かれている立場を恨んだ時もあった。
お父様やお母様の顔を見れない日もあった。
苦しくて辛かった…
全てに絶望してどうでも良くなった…
そして逃げる事を覚えた。
自分を偽る事を覚えた。
そんな中、
ユア様に出会えた。
恋心とは違かったかもしれないけど、ユア様の姿を見るだけで幸せを感じる事ができた。
キュアに出会えた。
キュアの優しさや破天荒さには何度救われたか分からない。
キュアのおかげで私は再び笑う事が出来る様になった。
そして…ユシン様に出会えた。
最初は嫌な人だと思った。関わりたくないと思った。
でも、ユシン様のおかげで私は本来の自分を取り戻せた。
人を好きになるという感情を知った。
自分の為だけじゃなくて人の為に自分自身を見直す事が出来た。
3人との出会いが私の人生を変えてくれた。
落ちるだけだった自分を救ってくれた。
瞳から自然と涙が溢れてくる。
「ありがとう…」
今、この時…
自分でも気付かないうちに自分の中で張り詰めていた糸がプツンと切れた。
この糸を何と言ったらいいかわからない。
プレッシャー?
わだかまり?
涙が止まらないけど、心は温かい。
「マリア。そしてユシン様。話は変わりますが、ご報告したいことがあります。ご連絡遅くなりましたが…私達もやっと婚約を結べる事になりました」
キュアの急な報告に出ていた涙が一気に止まった。
「マリア嬢の騒動があった日に伯爵に許可をもらった」
「えっ…あっだからあの日…」
私がキュアを見ると、キュアは申し訳なさそうに頷く。
「やっとか…良かったなユア」
「これからも色々精進していかないといけないけどな」
「おめでとうキュア。凄く嬉しい」
「ありがとう。将来、私達の子供が仲良く遊ぶ姿を想像しただけで今から楽しみね」
私達の子供?
こども?
キュアはもうそんな事考えてるの?
「そ…それはまだまだ先の事じゃない?」
「そんな遠くない未来だろう」
ユシン様がそういいながらニヤリと笑う。
「でも契約書作成前にお二人に話せて良かったわ。
私達、これから両家の婚約に関しての契約書作成に行ってきます」
「契約書?」
「普通は貴族間の婚約には契約書作成が必要となってる。まぁ。父上が決めた事だが…一時期一方的な悪質な婚約破棄が流行ったからな。それを抑止するためのものだ。」
「…私達はそんな物なかったですよね?」
「俺達は特例だろう。国王直々の婚約だしな。その辺りは父上に感謝だな」
なるほど…
キュアとユア様は幸せそうに教室を出て行く。
前までこの姿を見て砂を吐きそうになっていたけど、今は2人の仲睦まじい姿を見るのは本当に嬉しく感じる。
「俺達も帰るか…家まで送る」
ユシン様はそう言ってごく自然に私をエスコートしてくれる。
うん。
大切な人達に囲まれて、私は本当に幸せ者だ。
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