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秘密の花園
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「殿下。いつもマリアを送って頂きありがとうございます。この度の学園の騒動…恥ずかしながら解決の旨を使者の方に本日伺い騒動の事を知りました。マリアったら私達に何も話さなくて…殿下。前回の夜会に続きマリアを救って頂きありがとうございます」
ユシン様に家まで送ってもらうと、馬車がつくなりお母様が慌てて玄関先まで駆けてきてユシン様に深々と頭を下げる。
「この度の件は私自身の事ではマリアを巻き込んでしまった事です。謝るとしたらこちらの方です。すぐにご報告すべきでしたが、色々と処理をしていた為に遅くなり申し訳ありません」
「いえ。この様な事をすぐ把握出来ず本当に親としてお恥ずかしい事です。今、所用で出ています主人ももうすぐ帰って来ますので主人からも是非お礼を述べさせて下さい」
お母様はうっすら涙を浮かべて私の方を見る。
その顔を見てズキリと胸が痛む。
キャルラロル侯爵家の夜会の後からは以前に比べて色々心配してくれていることは分かっていたけど、学園での事は何故だか両親には知られたくなかった。
いつかは知られてしまう事だとは思っていたけど、いざ知られてしまうと心苦しさが半端ない。
私の気まずさに気づいたのかユシン様は私の頭をポンポンと軽く叩く。
「じゃあ。マリアの部屋でもお邪魔させてもらうかな。マリア。部屋に行っても?」
ユシン様は意味深な笑みを浮かべる。
なに?その笑みは…
「婚約者の部屋に入るのは問題ないですよね。義母上」
すかさずユシン様はお母様に問う。
「ええ。えぇ…殿下の事は信頼しておりますので…」
お母様の返答に思わず私は大きく息を吐く。
「…何もないですよ」
私はそれだけ言うとお母様の後ろに控えていたレイシアと共にユシン様を部屋へと案内する。
「お茶の用意をしてまいります」
部屋に着くなりレイシアはそう言って扉を全開にした状態で部屋を出て行く。
年頃の男女部屋に残して茶を入れに行く?
ちょっ…レイシア。侍女失格じゃない???
「夜会の後、お前を送った後に一度入ったが、ゆっくり見れなかったからな。意外と物がないんだな」
慌てる私を他所にユシン様は部屋に入るなり周りを見渡してポツリと呟く。
「我が家に無駄な事に使うお金はありませんから」
この部屋で唯一目立つ本棚には学園に入る前に使っていた参考書等が並んでいる。
ユシン様はその本棚に近づくと、参考書をジッと見つめてフッと笑う。
「参考書ばかりだな。かなり頑張っていたのが分かる」
「それくらいしかできなかったので…」
ユシン様は一冊の参考書を手に取ると、本棚に寄りかかってペラペラと見始めた。
あっそこは…ダメっっ…
そう思った瞬間、本棚がクルリと回転した。
「うわっっ」
急な事にユシン様はバランスを崩して膝をついて、私は咄嗟に本棚の回転を止める。
本棚が回転した裏側の本棚には参考書とは異なる本がズラリとならんでいる。
「この本は?」
ユシン様は立ち上がると一冊取りだしてページをめくり始めるとピタッと動きを止めた。
終わった……
お金のない我が家。
昔から交流がある領地の大工にこっそり頼んで廃材を使って作った秘密の本棚。
コツコツと集めてきた私の秘密のバイブル。
表向きは参考書が並んでいる本棚だけど、その裏にあるのは…
「深い口づけを繰り返すとスカートの中に手が滑り込んでくる。「ダメですっ」咄嗟に止めるがマモールはその手を止めない。」
「口に出して読まないで下さい」
ユシン様は私をチラリと見てから別の本にも手をかける。
「美しい身体のラインを優しく撫でると、メイデルは恥じらいながらも…」
「だから、止めてくださいっっ」
そう。そこにあるのは男女の教科書。
いや。いたって純愛ストーリーの恋愛本。
「お前は…こんなのが好きだったのか?キスひとつで躊躇うお前が?」
ユシン様は顎に手を当てて本棚にある本をじっと見つめる。
そして興味津々と言った形で何冊か出して眺める。
そんな興味持たなくても…
「んっ?男色物?」
ユシン様はその中の一冊で手を止めると驚いたように私を見る。
呆れられた?
でも…
でも…
隠していたけどこれは私のバイブルだ。
自分が落ちて行った時に現実逃避させてくれて、心を留めさせてくれたなくてはならない活力なのだ。
負けられない戦いがここにある。
「…男女関係ありません。全ての物語に愛があるのです。
ただただその…エロいわけではありません。
愛の延長線上のその行為があるのです。
どれもいじめられていた頃に私を救ってくれた私の宝物なんです。」
ユシン様は私の言葉に一瞬驚いた表情をみせるが、すぐに笑みを浮かべる。
「愛の延長線上…そうか…じゃあ実際経験してみるか?」
「イヤイヤ…物語と現実は違います。」
「そんな違いはないと思うが…」
「……引かないのですか?」
「別に引いたりするような事じゃないだろう。逆にこういう事に興味あるとは…男としては嬉しいというか…では俺たちもこの物語のようにこれから愛をより深めて行こうな」
そう言いながらユシン様は満面の笑みを浮かべるとジワリジワリと私に近づいてくる。
私は咄嗟にジワジワと後ろに下がる。
ちょっ…
「いい雰囲気のところ、申し訳ありません。旦那様がお帰りになりました」
レイシアの言葉と共に、私の部屋にお父様とお母様がやってくた。
た…助かった…
お父様がその後ユシン様に色々と話して頭を下げたりしていたけど、内容は全く頭に入ってこない。
迂闊だった…
この本達はどうしよう…
……まぁ。バレちゃったしこのままでいっか。
でも、自分も少し書いてる事…下町の本屋で数冊置いてもらって小遣い稼ぎしているのだけどそれは絶対に秘密にしよう。
ユシン様に家まで送ってもらうと、馬車がつくなりお母様が慌てて玄関先まで駆けてきてユシン様に深々と頭を下げる。
「この度の件は私自身の事ではマリアを巻き込んでしまった事です。謝るとしたらこちらの方です。すぐにご報告すべきでしたが、色々と処理をしていた為に遅くなり申し訳ありません」
「いえ。この様な事をすぐ把握出来ず本当に親としてお恥ずかしい事です。今、所用で出ています主人ももうすぐ帰って来ますので主人からも是非お礼を述べさせて下さい」
お母様はうっすら涙を浮かべて私の方を見る。
その顔を見てズキリと胸が痛む。
キャルラロル侯爵家の夜会の後からは以前に比べて色々心配してくれていることは分かっていたけど、学園での事は何故だか両親には知られたくなかった。
いつかは知られてしまう事だとは思っていたけど、いざ知られてしまうと心苦しさが半端ない。
私の気まずさに気づいたのかユシン様は私の頭をポンポンと軽く叩く。
「じゃあ。マリアの部屋でもお邪魔させてもらうかな。マリア。部屋に行っても?」
ユシン様は意味深な笑みを浮かべる。
なに?その笑みは…
「婚約者の部屋に入るのは問題ないですよね。義母上」
すかさずユシン様はお母様に問う。
「ええ。えぇ…殿下の事は信頼しておりますので…」
お母様の返答に思わず私は大きく息を吐く。
「…何もないですよ」
私はそれだけ言うとお母様の後ろに控えていたレイシアと共にユシン様を部屋へと案内する。
「お茶の用意をしてまいります」
部屋に着くなりレイシアはそう言って扉を全開にした状態で部屋を出て行く。
年頃の男女部屋に残して茶を入れに行く?
ちょっ…レイシア。侍女失格じゃない???
「夜会の後、お前を送った後に一度入ったが、ゆっくり見れなかったからな。意外と物がないんだな」
慌てる私を他所にユシン様は部屋に入るなり周りを見渡してポツリと呟く。
「我が家に無駄な事に使うお金はありませんから」
この部屋で唯一目立つ本棚には学園に入る前に使っていた参考書等が並んでいる。
ユシン様はその本棚に近づくと、参考書をジッと見つめてフッと笑う。
「参考書ばかりだな。かなり頑張っていたのが分かる」
「それくらいしかできなかったので…」
ユシン様は一冊の参考書を手に取ると、本棚に寄りかかってペラペラと見始めた。
あっそこは…ダメっっ…
そう思った瞬間、本棚がクルリと回転した。
「うわっっ」
急な事にユシン様はバランスを崩して膝をついて、私は咄嗟に本棚の回転を止める。
本棚が回転した裏側の本棚には参考書とは異なる本がズラリとならんでいる。
「この本は?」
ユシン様は立ち上がると一冊取りだしてページをめくり始めるとピタッと動きを止めた。
終わった……
お金のない我が家。
昔から交流がある領地の大工にこっそり頼んで廃材を使って作った秘密の本棚。
コツコツと集めてきた私の秘密のバイブル。
表向きは参考書が並んでいる本棚だけど、その裏にあるのは…
「深い口づけを繰り返すとスカートの中に手が滑り込んでくる。「ダメですっ」咄嗟に止めるがマモールはその手を止めない。」
「口に出して読まないで下さい」
ユシン様は私をチラリと見てから別の本にも手をかける。
「美しい身体のラインを優しく撫でると、メイデルは恥じらいながらも…」
「だから、止めてくださいっっ」
そう。そこにあるのは男女の教科書。
いや。いたって純愛ストーリーの恋愛本。
「お前は…こんなのが好きだったのか?キスひとつで躊躇うお前が?」
ユシン様は顎に手を当てて本棚にある本をじっと見つめる。
そして興味津々と言った形で何冊か出して眺める。
そんな興味持たなくても…
「んっ?男色物?」
ユシン様はその中の一冊で手を止めると驚いたように私を見る。
呆れられた?
でも…
でも…
隠していたけどこれは私のバイブルだ。
自分が落ちて行った時に現実逃避させてくれて、心を留めさせてくれたなくてはならない活力なのだ。
負けられない戦いがここにある。
「…男女関係ありません。全ての物語に愛があるのです。
ただただその…エロいわけではありません。
愛の延長線上のその行為があるのです。
どれもいじめられていた頃に私を救ってくれた私の宝物なんです。」
ユシン様は私の言葉に一瞬驚いた表情をみせるが、すぐに笑みを浮かべる。
「愛の延長線上…そうか…じゃあ実際経験してみるか?」
「イヤイヤ…物語と現実は違います。」
「そんな違いはないと思うが…」
「……引かないのですか?」
「別に引いたりするような事じゃないだろう。逆にこういう事に興味あるとは…男としては嬉しいというか…では俺たちもこの物語のようにこれから愛をより深めて行こうな」
そう言いながらユシン様は満面の笑みを浮かべるとジワリジワリと私に近づいてくる。
私は咄嗟にジワジワと後ろに下がる。
ちょっ…
「いい雰囲気のところ、申し訳ありません。旦那様がお帰りになりました」
レイシアの言葉と共に、私の部屋にお父様とお母様がやってくた。
た…助かった…
お父様がその後ユシン様に色々と話して頭を下げたりしていたけど、内容は全く頭に入ってこない。
迂闊だった…
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