7 / 92
5.
しおりを挟む
私にはその言葉の意味はすぐに理解できなかったけど、両親達の態度とアロンの表情を見て、幼ながらも私とアロンが一緒になる事は難しい事なのだと感じた。
でも、幼かった私にははっきりとした理由がよく分からなくてモヤモヤした日々を送っていた。
そして、その日以降アロンは私と一緒にいると時々苦しそうな表情を見せるようになった。
そんなアロンを見て私も苦しかった。
それから数日後、私はメイド達の雑談を偶然聞いて両親達の言っていた言葉の意味を理解した。
ハウル商会はこの国1番の資金をもつ商会。
ミスドナ伯爵家も貴族社会でもトップクラスの潤沢な資金をもつ貴族。
その2つの家が結びつけばこの国で歯向かうものがいない程の資金を得る事になる。やろうとすれば簡単に商売の独占だってできるし、国の政治にも口を出せる。
国の乗っ取りだって容易かもしれない。
汚い話、世の中お金さえ有れば大抵の事は出来てしまう。
いくら両家にその気は無くても周りが黙っていない。
王家にとって…他の貴族達にとって…強いて言えばこの国に住まう全ての者にとってもハウル商会とミスドナ伯爵家の関係が強固になるのはよろしくない事だった。
この国の根本的な形態を崩しかねない。
その事がわかった時の衝撃は今でも忘れない。
もし2人の約束を守るとしたらアロンも私も家や国を…いまの生活を何もかも投げ捨てて逃げるしかない。
でも、そんな事出来るはずがない。
アロンの事は好きだけど、私はミスドナ伯爵家の一人娘。
大好きな両親や家を捨てることなど私には出来ない。
それはアロンも同じ事。
“私達の約束は約束のまま守られる事はない”
それに気づいた時から私はアロンと顔を合わせるのが辛くなってしまった。
お互い、それを口にする事はなかったけれども子供である私達が出来ることなんて何も無かった。
大好きな両親達は何も言わないけど、私達が一緒にいると申し訳無さそうな顔をする。
いつの間にか私達は一緒にいてもお互い心から笑えなくなってしまった。
一緒にいたら愛しさが溢れてしまう。
一緒にいる事で周りの人を困らせてしまう。
少しづつお互いが距離を取り、顔を合わせる回数も必然的に無くなっていった。
過去に想いを寄せると胸が押し潰される様に苦しくなる。
ふぅ……
大きく深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。
そして、握りしめたネックレスをしばらく眺めてから再び箱に戻して丁寧に蓋を閉める。
「誰かは分からなくても…いつかはこうなる事分かっていたじゃない。相手が誰だって同じことよ。大丈夫。私はやっていけるわ」
ネックレスの入ったその箱を再びクローゼットの奥底に仕舞い込んで、私は自分自身に言い聞かせるように呟いた。
でも、幼かった私にははっきりとした理由がよく分からなくてモヤモヤした日々を送っていた。
そして、その日以降アロンは私と一緒にいると時々苦しそうな表情を見せるようになった。
そんなアロンを見て私も苦しかった。
それから数日後、私はメイド達の雑談を偶然聞いて両親達の言っていた言葉の意味を理解した。
ハウル商会はこの国1番の資金をもつ商会。
ミスドナ伯爵家も貴族社会でもトップクラスの潤沢な資金をもつ貴族。
その2つの家が結びつけばこの国で歯向かうものがいない程の資金を得る事になる。やろうとすれば簡単に商売の独占だってできるし、国の政治にも口を出せる。
国の乗っ取りだって容易かもしれない。
汚い話、世の中お金さえ有れば大抵の事は出来てしまう。
いくら両家にその気は無くても周りが黙っていない。
王家にとって…他の貴族達にとって…強いて言えばこの国に住まう全ての者にとってもハウル商会とミスドナ伯爵家の関係が強固になるのはよろしくない事だった。
この国の根本的な形態を崩しかねない。
その事がわかった時の衝撃は今でも忘れない。
もし2人の約束を守るとしたらアロンも私も家や国を…いまの生活を何もかも投げ捨てて逃げるしかない。
でも、そんな事出来るはずがない。
アロンの事は好きだけど、私はミスドナ伯爵家の一人娘。
大好きな両親や家を捨てることなど私には出来ない。
それはアロンも同じ事。
“私達の約束は約束のまま守られる事はない”
それに気づいた時から私はアロンと顔を合わせるのが辛くなってしまった。
お互い、それを口にする事はなかったけれども子供である私達が出来ることなんて何も無かった。
大好きな両親達は何も言わないけど、私達が一緒にいると申し訳無さそうな顔をする。
いつの間にか私達は一緒にいてもお互い心から笑えなくなってしまった。
一緒にいたら愛しさが溢れてしまう。
一緒にいる事で周りの人を困らせてしまう。
少しづつお互いが距離を取り、顔を合わせる回数も必然的に無くなっていった。
過去に想いを寄せると胸が押し潰される様に苦しくなる。
ふぅ……
大きく深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。
そして、握りしめたネックレスをしばらく眺めてから再び箱に戻して丁寧に蓋を閉める。
「誰かは分からなくても…いつかはこうなる事分かっていたじゃない。相手が誰だって同じことよ。大丈夫。私はやっていけるわ」
ネックレスの入ったその箱を再びクローゼットの奥底に仕舞い込んで、私は自分自身に言い聞かせるように呟いた。
56
あなたにおすすめの小説
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています
由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、
悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。
王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。
だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、
冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。
再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。
広場で語られる真実。
そして、無自覚に人を惹きつけてしまう
リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。
これは、
悪役令嬢として断罪された少女が、
「誰かの物語の脇役」ではなく、
自分自身の人生を取り戻す物語。
過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、
彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。
病弱な幼馴染を守る彼との婚約を解消、十年の恋を捨てて結婚します
佐藤 美奈
恋愛
セフィーナ・グラディウスという貴族の娘が、婚約者であるアルディン・オルステリア伯爵令息との関係に苦悩し、彼の優しさが他の女性に向けられることに心を痛める。
セフィーナは、アルディンが幼馴染のリーシャ・ランスロット男爵令嬢に特別な優しさを注ぐ姿を見て、自らの立場に苦しみながらも、理想的な婚約者を演じ続ける日々を送っていた。
婚約して十年間、心の中で自分を演じ続けてきたが、それももう耐えられなくなっていた。
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)
〈完結〉【書籍化&コミカライズ】悪妃は余暇を楽しむ
ごろごろみかん。
恋愛
「こちら、離縁届です。私と、離縁してくださいませ、陛下」
ある日、悪妃と名高いクレメンティーナが夫に渡したのは、離縁届だった。彼女はにっこりと笑って言う。
「先日、あなた方の真実の愛を拝見させていただきまして……有難いことに目が覚めましたわ。ですので、王妃、やめさせていただこうかと」
何せ、あれだけ見せつけてくれたのである。ショックついでに前世の記憶を取り戻して、千年の恋も瞬間冷凍された。
都合のいい女は本日で卒業。
今後は、余暇を楽しむとしましょう。
吹っ切れた悪妃は身辺整理を終えると早々に城を出て行ってしまった。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる