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「王家が憎かったからですよ…」
ハリストン公爵が国王の問いに憎しみの籠った声をあげる。
「私の人生は順風満帆だった。だけど、前国王がサマドルネ公爵家を…マサラの家を没落させた頃から私の人生は狂い始めた。マサラと何の問題もなく婚姻する予定だったのに、マサラが修道院に送られ…私はハリストン公爵家を継ぐために前公爵が連れてきた他の女と婚姻を結ばなくてはいけなくなった。後継のためにと好きでもない女との子を作らなくてはいけなくなった。終いに私には何の関係もなかった前国王の暴挙の責任を取らされ王城を追いやられた。憎まずにいられるか?全ては王家のせいだっっ。私の人生を狂わせた憎き王家を潰そうとして何が悪いっ…乗っ取ろうとして何の問題があるっっ…」
狂ったように叫ぶハリストン公爵。
危険が及ぶと判断したか、控えてた王宮騎士団数名が一斉にハリストン公爵を取り囲むように剣を向ける。
「逆恨みも程々にしてください」
ハリストン公爵に剣を向ける王宮騎士団の間を割ってサムル様がハリストン公爵に近づき、自身の持っている剣を抜くと公爵の首元にその剣を向ける。
「前国王の祖父が暴君であったことは申し訳ない真実だ。でも、その祖父の尻拭いをして国を立て直したのは他でもない現国王である父上だ。被害者は貴方だけではない。言わば父上も被害者だ。恨むのはお門違いだ。
それにサマドルネ公爵の没落は祖父でなくても同じ事をしただろう。サマドルネ公爵家の没落は私利私欲のために散財し、国庫の金にまで手をつけた当時の公爵自身の失態であり王家は当たり前の対処をしたまで…あなたがここまで恨みを募らせ、国王の暗殺を考えるまでの要素はどこにもない。」
「サムル…やめろ。もう良い…」
怒りをあらわにするサムル様を国王が止める。
そして国王は右手で何かを合図して王宮騎士団達も下がらせる。
瞬間、マサラ王妃がハリストン公爵に向かって走り出す。
王宮騎士団がマサラ王妃を捉えようと再度動き出すが、それも国王は停止させる。
「トマクっっ…何故やりとりした手紙など残しておいたのですかっ…証拠になるようなものは全て…全て燃やす約束ではありませんでしたかっっ貴方のせいで…貴方のせいで全ての計画が水の泡になってしまった…」
マサラ王妃はハリストン公爵の胸ぐらを掴んで力なく泣き叫ぶ。
ハリストン公爵はそんなマサラ王妃を見て諦めたように空を仰いでからマサラ王妃を抱きしめる。
「…お前からもらったものを…燃やせるわけないだろう…全て上手くいくと思ったんだがな。失敗してしまった…すまないマサラ…」
そんな2人の姿をマルク様は呆然と見つめる。
ローライ様は全てが明らかになった事への安堵か目にうっすらと涙を浮かべていた。
国王はそんな2人をしばらく見つめると、軽く息を吐き、この国の権力者の顔になる。
「今回の件は許すまじ案件だ。国を揺るがし、国民を混乱に貶める。よってハリストン公爵は爵位を剥奪。北の地に行き労働の刑と処する。そなたの子供達は平民に降格し、今後一切、国の支援は受けらないものとする。そして…マサラ。今回の一件ではお前が国に与えた影響は計り知れない。よって北の牢獄に生涯服役を命じる。」
国王の言葉にハリストン公爵…いえ。ハリストンとマサラは諦めたようにコクリと頷いた。
北の地の労働…奴隷落ちした人達が主に働くこの国で一番過酷と言われる場所…貴族であった人間が耐えられる場所ではない…
そして、北の牢獄…寒さで入れられた人は何年も経たずに亡くなると言われている。
2人に出されたのは実質死刑だ…
北の地で亡くなった人の遺体は、引き取り手がいないことも多く、共同墓地にまとめて入れられると聞く。
同じ北の地にしたのは…ほんの微かに残る国王の優しさかもしれない。
「ち…父上っっ私は…私はどうなるのですかっっ」
ハリストンとマサラが王宮騎士団に捕縛される中、マルク様が声を上げる。
「私は何も知りませんでしたっ。今まで父上の子として…王子教育もしっかりこなしてきました。父上は私を見捨てたりしませんよね?」
そう叫ぶマルク様を、国王は冷めた目で見つめると、深く深く息を吐く。
「お前の事は意図せずできてしまった子で、王家に生まれながらも絶対に王家を継がせる事も関わらせることもできない可哀想な子だと思い甘やかしてきた。私自身、マサラやお前に何もしてあげられない代わりに、多少の事は仕方ないと…マサラやお前自身が望むまま好きなようにすればいいとそう思って今まで色々援助していた。」
「父上…」
国王の言葉にマルク様は何かホッとしたような表情をする。
そんな安堵の表情を浮かべるマルク様を見て国王は険しい顔を向ける。
「それが間違いだったな…」
「えっ?父上…」
「父上?私はもうそなたの父ではない。」
「は?」
「そなたの父はハリストンだ。先程ハッキリしたであろう?」
「いや…でもっっ私は…」
国王にしがみつこうとするマルク様を王宮騎士団が剣で静止させる。
「公爵家は取り潰しとなった。ハリストンの子供たちの刑は先程述べた通りだ。何か問題でもあるか?」
国王は低く圧のある声で言い切る。
マルク様はそんな国王の圧に当てられてかその場に力無く座り込んだ。
ハリストン公爵が国王の問いに憎しみの籠った声をあげる。
「私の人生は順風満帆だった。だけど、前国王がサマドルネ公爵家を…マサラの家を没落させた頃から私の人生は狂い始めた。マサラと何の問題もなく婚姻する予定だったのに、マサラが修道院に送られ…私はハリストン公爵家を継ぐために前公爵が連れてきた他の女と婚姻を結ばなくてはいけなくなった。後継のためにと好きでもない女との子を作らなくてはいけなくなった。終いに私には何の関係もなかった前国王の暴挙の責任を取らされ王城を追いやられた。憎まずにいられるか?全ては王家のせいだっっ。私の人生を狂わせた憎き王家を潰そうとして何が悪いっ…乗っ取ろうとして何の問題があるっっ…」
狂ったように叫ぶハリストン公爵。
危険が及ぶと判断したか、控えてた王宮騎士団数名が一斉にハリストン公爵を取り囲むように剣を向ける。
「逆恨みも程々にしてください」
ハリストン公爵に剣を向ける王宮騎士団の間を割ってサムル様がハリストン公爵に近づき、自身の持っている剣を抜くと公爵の首元にその剣を向ける。
「前国王の祖父が暴君であったことは申し訳ない真実だ。でも、その祖父の尻拭いをして国を立て直したのは他でもない現国王である父上だ。被害者は貴方だけではない。言わば父上も被害者だ。恨むのはお門違いだ。
それにサマドルネ公爵の没落は祖父でなくても同じ事をしただろう。サマドルネ公爵家の没落は私利私欲のために散財し、国庫の金にまで手をつけた当時の公爵自身の失態であり王家は当たり前の対処をしたまで…あなたがここまで恨みを募らせ、国王の暗殺を考えるまでの要素はどこにもない。」
「サムル…やめろ。もう良い…」
怒りをあらわにするサムル様を国王が止める。
そして国王は右手で何かを合図して王宮騎士団達も下がらせる。
瞬間、マサラ王妃がハリストン公爵に向かって走り出す。
王宮騎士団がマサラ王妃を捉えようと再度動き出すが、それも国王は停止させる。
「トマクっっ…何故やりとりした手紙など残しておいたのですかっ…証拠になるようなものは全て…全て燃やす約束ではありませんでしたかっっ貴方のせいで…貴方のせいで全ての計画が水の泡になってしまった…」
マサラ王妃はハリストン公爵の胸ぐらを掴んで力なく泣き叫ぶ。
ハリストン公爵はそんなマサラ王妃を見て諦めたように空を仰いでからマサラ王妃を抱きしめる。
「…お前からもらったものを…燃やせるわけないだろう…全て上手くいくと思ったんだがな。失敗してしまった…すまないマサラ…」
そんな2人の姿をマルク様は呆然と見つめる。
ローライ様は全てが明らかになった事への安堵か目にうっすらと涙を浮かべていた。
国王はそんな2人をしばらく見つめると、軽く息を吐き、この国の権力者の顔になる。
「今回の件は許すまじ案件だ。国を揺るがし、国民を混乱に貶める。よってハリストン公爵は爵位を剥奪。北の地に行き労働の刑と処する。そなたの子供達は平民に降格し、今後一切、国の支援は受けらないものとする。そして…マサラ。今回の一件ではお前が国に与えた影響は計り知れない。よって北の牢獄に生涯服役を命じる。」
国王の言葉にハリストン公爵…いえ。ハリストンとマサラは諦めたようにコクリと頷いた。
北の地の労働…奴隷落ちした人達が主に働くこの国で一番過酷と言われる場所…貴族であった人間が耐えられる場所ではない…
そして、北の牢獄…寒さで入れられた人は何年も経たずに亡くなると言われている。
2人に出されたのは実質死刑だ…
北の地で亡くなった人の遺体は、引き取り手がいないことも多く、共同墓地にまとめて入れられると聞く。
同じ北の地にしたのは…ほんの微かに残る国王の優しさかもしれない。
「ち…父上っっ私は…私はどうなるのですかっっ」
ハリストンとマサラが王宮騎士団に捕縛される中、マルク様が声を上げる。
「私は何も知りませんでしたっ。今まで父上の子として…王子教育もしっかりこなしてきました。父上は私を見捨てたりしませんよね?」
そう叫ぶマルク様を、国王は冷めた目で見つめると、深く深く息を吐く。
「お前の事は意図せずできてしまった子で、王家に生まれながらも絶対に王家を継がせる事も関わらせることもできない可哀想な子だと思い甘やかしてきた。私自身、マサラやお前に何もしてあげられない代わりに、多少の事は仕方ないと…マサラやお前自身が望むまま好きなようにすればいいとそう思って今まで色々援助していた。」
「父上…」
国王の言葉にマルク様は何かホッとしたような表情をする。
そんな安堵の表情を浮かべるマルク様を見て国王は険しい顔を向ける。
「それが間違いだったな…」
「えっ?父上…」
「父上?私はもうそなたの父ではない。」
「は?」
「そなたの父はハリストンだ。先程ハッキリしたであろう?」
「いや…でもっっ私は…」
国王にしがみつこうとするマルク様を王宮騎士団が剣で静止させる。
「公爵家は取り潰しとなった。ハリストンの子供たちの刑は先程述べた通りだ。何か問題でもあるか?」
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