【完結】生まれたときから今日まで無かったことにしてください。

はゆりか

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番外編 ハリスside④

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私は溢れ出る笑いをなんとか抑えて自分自身を落ち着かせると、神殿にいる皆が祈りの為に集まる中央広場へとゆっくり歩みを向ける。そして、少し高い位置からそこいる神官や神職者達を見渡すとニヤリと口角を上げて今まで抑えられていた力を一気に放出した。

身体が軋んで痛みが襲ってくるけど湧き出る力をもう止める事などできない。

「みんな聞いて。神からのお告げよ。メルトニア人は神の子なんかではない。みんなは騙されている。メルトニア人は悪の根源……世界を滅ぼす人種よ。みんな騙されてはダメよ。みんな目を覚まして」

広場にいる全員の視線が私に向く。

瞬間、神職者達はすぐに私の力に惑わされて近くにいた神官達を睨み神殿から追い出そうとする。

その場にいた他の愛し子達が急変した神職者達を焦って止めようとするが、私がそれを阻止する。

「貴方は何をしている? 神官方は私達にとって重要な方々だ。すぐに辞めなさい」
「今すぐ力を抑えろっっ」
「リア様は? リア様はどこに⁉︎」

叫ぶ愛し子達に私が近づくと3人は身体をビクりと震わせて黙り込む。


この子達は“愛し子”と言われているけど力は大したことないわね。3人揃ってやっと私一人分といった所かしら?

この子達は自身と私との力の差が分かっていた。
だから私を避けていたのね……賢明な判断だけど同じ“愛し子”として情けない。

でも今後、微量でも力のある味方は必要。
この子達を敵にするのは得策では無い。

「……ねえ。貴方達もおかしいと思わない?」
「おかしい? 何が?」

3人の中でも一番年長で力がある男性の愛し子が私に鋭い目つきを向けてくる。

「何って……だってどう考えてもおかしいじゃない。神の愛し子よりも神の子が上にいるなんて。なんで神に愛されいる私達“愛し子”がメルトニア人という“神の子”の神官達に指示をされなきゃいけないの?」

私は言葉に力をのせて優しい口調で言う。

「何を言って……」

私より少し年上であろう女性の愛し子眉間に皺を寄せる。
しかし、もう1人の若い男性の愛し子は目を見開いて私を見つめる。

……もう少しね。


「神の子なんて所詮は子であって神ではない。大した力を持ってる訳でもないのに本当に偉そう……こいつらは神に愛されている私達の力を我が物のように扱って自身の保身の為に使っているのよ。本当に偉いのは力を持つ私達。そうでしょう? 違う? 私が間違ってる? 私達“愛し子”のもつ力は誰のものでもなく神が愛すべき私達自身に授けたものでしょう? 自身の為に使うべき。神もそれを望んでいる。そうは思わない?」

私の言葉に3人は驚きの表情を見せるとそれぞれ顔を見合って頷く。

「確かにそうだ」
「力を持つ私達の方が絶対に偉い‼︎」
「神の子なんていなくても私達だけでやっていける」

3人はそう言うと神職者達と一緒にメルトニア人神官達を神殿内から追い払い始める。


なんて滑稽な姿か。
なんて愚かな光景なんだろう。

私は目の前の状況を眺めて微笑む。

楽しい。
楽しい。
楽しい。

私を馬鹿にするものは全てこの世からいなくなればいい。
この世界中から私を害するものはなくしてやる。


神職者は神官達を神殿内から追い出すと私の元に次々とやってきて跪く。

愛し子達は私の一歩後ろに立つと、誇らしげに跪く神官達を眺めている。

久々に味わう最高の気分。
しかし、しばらくその気分を味わっていると異変に気づく。

「あら……そういえばイルがいないわ……」

イルがいないから思いの外スムーズに神官達を神殿から追い出せてしまった。

イルはこの騒動をすぐに止めに来ると思ったのに……
イルはどこにいった?

今のこの状況をみたイルの焦り、怒りに満ちた表情を早く見たい。


私は神殿内にまだいるであろうイルを探す。

再び私に心酔している神職者達や愛し子達を引き連れて神殿内の思いあたる所を全て探したがイルはどこにもいない。

「おかしいわね……」

今日イルが外回りに行くとは聞いていない。

脳裏に嫌な予感がよぎる。

「まさか……」

私の私室?

あそこにはリアの死体がある。
殺害してそのままの状態で出てきてしまったからもしイルがそれを見たら……

そう考えたら身体中が興奮でゾクゾクする。

足早に私は自分の部屋へと向かい、ドキドキしながら部屋の扉を開くとそこには死んだリアを抱きかかえて肩を揺らしているイルがいた。

イルは部屋に入ってきた私に気付くと涙が溢れた目でキツく睨みつける。

そんなイルの表情に私の興奮は絶頂に達する。

感じたことのない高揚感が私を包む。

「ハリス……お前が……お前がリアを殺したのか?」

今まで聞いたことのない心の奥底から嘆く様なイルの声で私の身体が“待ってました”といわんばかりに震えた。


ああ……なんて楽しいのでしょう。

イルが私だけを見ているわ。
イルが怒りをぶつけている。
イルの頭の中には私に対する憎しみしかない。
イルは今、私の事しか考えられない。

そんな興奮を隠して私は平穏を装う。

「……だと言ったら?」
「何故こんな事をっっ」

何故こんな事?
それを貴方が言うの?

すべては貴方が悪いのよ。ねぇイル。
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