召喚されたら【忌み子】でした。〜処刑から逃げ出して仲間と神探しの旅に出ています探さないでください〜

クリオネ

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二十六話 新たな壁

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そして私達はなかなか平穏な毎日を送っていた。ギルドに行き依頼を受け、ギルドに戻り報告する。そして美味しいものを食べ、宿に戻り眠る。その途中で私はなんとかイメージをして『サーチ』を覚えた。『サーチ』は私を中心にその周りにいる人や魔物が何人何匹いるか分かるというすぐれものだ。そのかいがあってか、だいぶ依頼も楽に済ませるようになった。そんなある日、街に不穏な空気が流れた。私達はなぜ不穏な空気が流れているのかを一通の王城からの手紙が来た。その手紙を受け取ったレイド兄さんは何やら不機嫌な顔をしていた。

「どうしたの、レイド兄さん。なんの手紙?」

「.....。この手紙を読んだものに告げる。明朝9時、広場に集まり街の住民に『鑑定』を受けてもらう。また『鑑定』を受けるまで街から出ることを禁じる。」

「(えっ...)」

私はいきなりのことに固まり、肩が震える。

(...それじゃあ今めっちゃまずい状況じゃない⁉それに明日って...時間がない‼)

「どうする。今からでも逃げるか?」

「い、いや。手紙を送って来てるんだ。もう街全体に警備兵がいたりしても....」

レイド兄さんは腕を組み、壁に寄りかかってずっと不機嫌な顔をしている。私はベッドに座り込んだまま頭を抱え込んだ。寒気が止まらない。そんなに夜が冷えるわけでは無いのに。

「ねぇ、レイド兄さん。『隠蔽』じゃ隠せないかな....?」

レイド兄さんはしばらく黙ってそこからため息をついた。

「....きっとダメだろうな。王直属の部下が持つ【鑑定士】はそれなりに訓練されている。早くに【鑑定士】を持つことがわかったら、すぐに王城に行き訓練をする早くても25年ぐらいな。だからお前が『隠蔽』を持っていようと、ばれる可能性が高い。それに...もしいけたとしても『隠蔽』を使っているのがバレたら更に怪しまれるかもな。」

「そんな....」

頭がどんどん真っ白になっていく。考えようとしても、冷静になれなくて考えがまとまらない。なんとかして突破口をひねり出そうとするけどその考えもレイド兄さんの一言でかき消された。

「詰みだな。聞かれそうだから先に言っとくともしお前がこの短時間で姿を隠せるような魔法を生み出したとしても、王直属の部下にはお前が使ってるのと似たようなスキル【索敵】を持ってる。【索敵】は『サーチ』と一緒な。それも【鑑定士】と同様に訓練されてるしな。すぐに見つかる可能性が高い。」

「そんな....じゃあ詰みじゃ....」

せっかく落ち着いてきたのに、見つかったらきっとまたすぐに殺される....⁉強行突破....いや無理だ、いけたとしてももしかしたらこの世界全体に私とレイド兄さんとスピカのことが知られて一生追われる身になってしまう。こんなことだったら私一人だけだったら良かったのに‼私一人だったらこんな迷惑は....

(じゃあ強行突破しましょ‼それしか無いわ‼)

スピカが自信満々に言うもんだからレイド兄さんと私はポカーンとした顔でスピカを見た。
今まで腕を組んで寄りかかっていたレイド兄さんが呆れた顔でスピカの前に来た。

「話聞いてたか?強行突破って言ったとしてもな。」

(でもそれしか無いじゃない。それとも他にあるの?)

「いや...あのなぁ....」

(じゃあいいじゃない‼警備兵といえども人間よ‼きっとどこかにスキはあるはずだわ‼)

レイド兄さんが珍しくたじろいでいる。私はそのレイド兄さんの姿とスピカが面白くて笑ってしまった。

「ぷっ、あははは‼なにそれ‼おっかし‼」

私が大げさに笑うものだからレイド兄さんは赤面した。

「おい‼なんでそこで笑う‼一大事なんだぞ⁉」

「だってだって、こんな光景を見て笑わないほうがおかしいって‼」

レイド兄さんか私の胸ぐらを軽く掴む、私は手を上げて大笑いしていた。ああ...この光景をずっと見てみたいな。

(じゃあ決まりね‼)

「おい‼」

「まぁまぁレイド兄さん落ち着いて?」

―――――そこからしばらく経って、レイド兄さんは落ち着きを取り戻し、強行突破という作戦会議をしていた。イニーの地図を床に広げ、どこから出るか話していた。
「ここが広場だからそこから逆の方向に行ったら?」

「地図を見ろ。逆の方向に進んだら王城に近くなる。それこそ危ないだろ。」

「あ、そっか。」

(じゃあブーヨの森は?あそこなら人もあまり寄り付かないわよ?)

「あそこにはSランクのボスモンスターがいるだろ。」

(あんなやつはディルが倒したわよ。核を割ってね。)

「....」

何も反応しないのが逆に怖いです。というか私はSランクのやつを倒してたんだ....あのときは無我夢中だったからな....

「じゃあここがいいな。ここが一番安全だ。」

(そうね‼)

どうやら決まったらしい。レイド兄さんがブーヨの森を指しながらちょっと嬉しそうに微笑んでいる。

「おい。どうした。ぼーっとして。」

私の目の前にレイド兄さんが覗き込んできた。

「...んーん。なんでも無い。それよりもいつにする?今から?」

レイド兄さんが私の目の前から離れる。

(今からにする?)

「いや、明朝にしよう。今日も依頼を受けて疲れてるんだ、明日こそ体力を使うから休んだほうがいい。」

「わかった。」

私は静かに頷いた。

(じゃあ結構は明日の朝で、広場と真反対のブーヨの森に行く‼逃げ切るわよ‼)

スピカが私達の真上をくるくると円を描いて回っている。レイド兄さんは膝を抱えて立ち上がり、ベッドに寝転ぶ。

「じゃあ寝るぞ。ディル、明かりを消せ。」

レイド兄さんがベッドとベッドの間にあるランプを指しながら言ってくる。

「はいはい。」

私も膝を抱えてベッドに寝転び、明かりを消す。スピカも私のベッドに入ってきた。

(じゃあ、おやすみなさ~い。)

そして私はレイド兄さんとスピカが眠っているのを見て私も静かに寝た。この前は結局レイド兄さんに助けてもらっちゃったからなぁ....今度は―――。
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