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二十七話 守るために

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朝起きるといつもの光景が目に広がっていた。レイド兄さんが一番早く起きて2番目が私、
最後はスピカの順。広場に集合が駆けられているのが朝の9時、今は7時、私達は他の人に怪しまれないように不審な行動を避け、いつもどおりに着替えをし、朝食をとって時間が来るまで準備をした。そんなことをしているとあと20分ほどで9時になる。

「ごめん!なんか緊張してきちゃった、トイレ行ってくる!」

私はベッドから立ち上がり、レイド兄さんの返答を待つ。

「じゃあ早く行ってこいよな。」

レイド兄さんがベッドに座りながら言った。私はその言葉を聞いてすかさず返事をする。

「うん。」

私は返事をしたあとに部屋を出て、一階に向かった。

そして宿の人に宿代を払い外に出た。

ここから広場まで10分ぐらい、その間さっき言った口実で10分持てばいい。巻き込まれるのは自分一人でいい。そんなことを考えながらちょっと小走りで広場に向かった。その途中で人目に入らないところに行き『影縫い』と『隠蔽』をといた。この顔と格好だったらレイド兄さんとスピカに迷惑はかからないだろうし、王城の人も私の顔を知っているはずだからすぐに見つけてくれるはず。
小走りで広場に向かったから普通よりもちょっと早くついた。広場の方を見ると先に『鑑定』を受けている人たちがいる。きっと商人か貴族かのどっちかだろう。私は少し前に出で【鑑定士】の近くに向かった。【鑑定士】は私が視界に入ったのと同時に何やら怪しげに私の方を見てくる。きっと気づき始めているんだろう。少しして王兵が一人近づいてきた。

「失礼、あなたから鑑定をさせてもらっても?」

私は笑顔で答えた。

「はい。」

私は【鑑定士】の前に行き、『鑑定』を受けた。私を鑑定した鑑定士は声は出さないものの内心興奮しているように見えた。そして何やら手紙を書き、他の兵に渡した。紙を渡された
兵はすぐさま走ってどこかに行ってしまった。他の兵は他の待っていた人に「もう『鑑定』を受けなくていい。各自の仕事に戻れ。」と大声でいい、その間私は【鑑定士】に馬車に乗るように指示された。私は馬車に向かったが途中で足がすくむ。私はその気持ちをかき消すように馬車に乗った。馬車には一人の男が座っており、私が馬車に入ったなり私の額に手を当てられた。

「眠ってもらうぜ、【忌み子】。『スリープ』」

これでいい。これできっと大丈夫。
そんなことを考えて、私は眠った。

―――同時刻、レイド兄さんとスピカはディルレットが戻らないことを不審に思っていた。

「流石に遅くないか?」

(確かにそうね...)

俺は落ち着かず、ディルの荷物を見た。荷物はあるからきっと戻ってくると思う。すると廊下から足音が聞こえ、誰かがドアをノックした。スピカは姿を消し、その後に宿の人が入ってきた。

「私はそろそろ向かいますが、レイドさんは行かなくてよろしいのですか?」

「すまない、すぐ出るよ。ディルレットを待っていたんだ。」

俺が荷物を持ちながら聞くと相手は不思議そうな顔をしていた。

「ディルレットさん....ですか?」

俺は不思議そうに聞くものだから俺は相手を睨むように見てしまった。

「どうした....?なにかおかしいことでも?」

俺が睨むものだから相手は少しうしろに後ずさりした。

「あっ!いえ....ただ、その方はさっき私にお金を渡してを出ていきましたよ?」

「はっ?」

(えっ?)

二人の声がハモる。予想外の言葉に二人が固まり、スピカが姿を現してしまいそうになった。

「どうゆうことだ⁉さっきなんて言った⁉」

俺はつい相手に怒鳴って言ってしまった。焦りからか相手の目の前に行き肩を掴む。

「えっ⁉えっと....その方はさっき私にお金を渡して出ていきましたよ。と言いました。」

首筋から冷や汗が止まらなくなる。やられた!!前日から少し様子がおかしかったのにそれを俺はスルーしてしまった!!俺は急いで宿を出ようと荷物の方を向く。

(もう荷物は私が持ったわ!!)

スピカが耳元で教えてくる。俺と同じ気持ちなのだろうと確信した。俺は相手に「すまない。」と声をかけて急いで宿を出た。お金はディルが全部払ってくれたらしかった。
宿を出て広場に向かうと広場の方から戻ってきている人たちがいた。俺はその中の一人の男に声をかけた。

「広場に集合じゃなかったのか⁉」

俺がそう聞くと男はキョトンとした顔で俺を見た。

「だってよぉ、広場に来て順番待ってたらいきなり「仕事に戻れ」って言われたんだ。多分、探してる人でも見つかったんじゃ無いのか?」

俺は苛立ちからつい男の前で舌打ちをしてしまった。

「おい、その人はどこに行ったんだ?」

「さっ、さっき馬車に乗っていったぜ?もしかして王城にでも向かうんじゃないか?」

俺は一言男にお礼を言って、走って馬小屋まで向かった。流石に馬車と人では俺が近づいてるって馬車から見つかったらかんたんに引き離されるに違いない。だから一刻も早く移動手段を手に入れる必要があった。

「一番足が速い馬をくれ!」

俺は店主に声をかけた。店主は俺が慌ててきた様子を見てちょっと焦っていた。

「えーっとですね、速い馬でしたらこちらがいいかと。」

店主が指を指した馬に俺は早速股がり、店主に金貨一枚を渡して馬車を追った。店主は金貨を見てとても驚いていたが、俺は構わず馬車に向かった。

街を出てしばらく経ち、やっとディルが乗っているであろう馬車を見つけた。馬車を見つけて俺は少しゾクゾクする。ここでもしディルを取り返せば俺は追われる身になるだろう。今引き返せば.....いや、ここで引き返したら面白くねぇな‼

「突っ込むぞ‼」

(その前に!これ!)

スピカが俺に仮面を渡してきた。俺はスピカに向かってうなずき、仮面をつける。俺はスピードを上げ馬車の真横に行く、馬車のスピードも上がる。俺は迷わず馬車のスピードに合わせる。馬車の窓にはカーテンがあり、様子が見えない。でも俺は迷わず馬車のドアを蹴り飛ばした。ドアを蹴り飛ばすと一人の手錠がかかっている女性と男が馬車の中で立って、こちらに手をかざしていた。俺の感がやばいと告げる。後ろでスピカが『ファイヤーボール』の詠唱をしているのを聞いて俺は体制を低くするスピカがファイヤーボールを男に向けて打った。その時にスピカが女性を見て叫んでいたのでこいつがディルだろう。俺は熱さで悶ている男を横目にディルを掴み引っ張る。俺はディルを持ち、馬の手綱を持って、馬車から離れて方向転換した。

(どこに向かうの⁉)

「このままブーヨの森まで‼」

馬車は小回りが利かないので少し経つとなかなかの距離が取れていた。
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