豚姫

にしめ

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深夜の歌姫

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「栞乃、早くお風呂入ってしまいなさい」
私の母はこんな事しか言ってこない。こんな事とは、起きなさい、食べてしまいなさい、お風呂入りなさい、掃除しなさいという文句の事だ。
母も父も私になど興味がない。
兄と妹にはあれこれと聞いている。
だから私が中学生の時にコーラスグループに所属した時も妹がその事を話して初めて親は知った。
私は確かにちゃんとコーラスグループに入るねと言ったのに。
聞いていなかった。
これが現実。
私は高校に入学した。
高校ではいじめられないように中学3年生はダイエットと受験勉強を頑張った。
そのおかげで標準体重より少し軽くなることに成功し受験も知り合いのいない少し遠い偏差値の高い学校に進学することができた。
受験勉強の時も息抜きに近所の河川敷で歌を歌っていた。
高校生になった今でも河川敷で歌を歌うことは息抜きになっている。
母に言われた通りお風呂を済ませ、課題も終わらせて河川敷に向かう。
河川敷に着いたら、草原にレジャーシートを敷き座る。
そして歌を歌い始めるこれが私のルーティン的なものだ。
レジャーシートを敷くのは単に直接座るとチクチクして痛いからなのだが。
私は今流行りの曲を歌い始める。
今日はとても月が綺麗だなと思っているとガサガサと音がした。音のした方を見てみると女の人が一人こちらに向かっているのが見えた。
「ねぇ!!そこのあなた!」
突然その女の人は話しかけてきた。
「あなた、めっちゃ歌上手いね!ねぇ良かったらさ私とバンド組まない?」
急に話しかけられ戸惑っているとさらに戸惑いを与える言葉をかけてきた。
「えっ…」
「あぁごめん!急に話しかけたからびっくりしたよね!」
「あっ、はい…誰もいないと思っていたので…」
私はやっと口を開く事ができた。
女の人ハハッと笑って、
「そりゃ、こんな夜中じゃね~」
と言った。
「それで、バンドどう?」
「急ですね」
「私はいつも急なの!私あなたの声気に入っちゃった!ちょうどボーカル探してたの!良かったらさ今度ライブ見に来てよ今は私が仕方なく歌ってるけどあなたが入ったら絶対に良くなると思うの!」
その人は早口でバーッと喋ってきた。
「これライブハウスの場所ね、明日ちょうど出るから20時においで~じゃあね!」
そう言ってその人はどこかに行ってしまった。
私は迷った。歌が上手いと言われたことが初めてだったからとても嬉しかった。でも、1人で歌うのは怖い。もし他人から下手くそと言われたらと思うと私の生きがいを否定されたようできっと私は生きていけないだろう。
だが、気になる。あの人のバンドはどんな歌を歌うのか、どうして私をバンドに入れたがるのか気になる。
だから私は行ってみることにした。
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