ガチャガチャガチャ 〜職業「システムエンジニア」の僕は、ガチャで集めた仲間とガチャガチャやっていきます〜

noah太郎

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第一章 アクセルオンライン

21話 パニック・ラン

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エレナが会敵する少しだけ前。

広間の中央に向かってゆっくりと進んでいくエレナの様子を、イノチは遠くから見守っていた。

エレナは少し進むと、しゃがみこんで何かを確認している。


(…何やってんだ、あいつ?)


エレナの行動に疑問を持ちつつ、イノチはふと、自分の右手に目を落とした。

さっきほど考えていた疑問が、頭から離れないのだ。

右手に装備されたSR装備アイテム。

いったいこれは何なのか…
入手確率がかなり低いレアアイテム?
それを幸運にも手に入れたとか?
もしかして最近、実装された新アイテム?
でも、それにしては能力がチート過ぎやしないだろうか…


「本当に、ラノベでよくあるチート系のアイテムだったりしてな…ハハ」


そんなことを思い浮かべながら、イノチは考えにふける。

特に気になっているのは、右手の甲に浮かび上がった『Z』の文字だ。


(『Z』ってどこかでも見たんだよなぁ…どこだったかなぁ…)


記憶をたどるが、どうにも思い出せない。


「ダンジョンから出たら、まずはいろいろと情報を集めないといけないなぁ…今日は単にレベル上げに来ただけだったのに、こんなことになるなんて予想してなかったなぁ…」


イノチがそう言ってため息をついたその時だった。

何かが地面を突き破るような、そんな鈍い音が広間の中央から聞こえてきたのだ。


「なっ…なんだ?何が起きた!エレナは…?!」


見れば、エレナが黒い物体と対峙している。暗くてよく見えないが、グネグネとうねるそれは触手のようにも見える。


「なんだ…あれ…」


イノチが驚いていると、エレナが先手を打ち、その触手のようなものを切り裂いた。
それを見たイノチが喜びの声を上げる。

…が、それらはすぐに再生し、くっついてしまった。


「エレナっ!あぶなっ…!」


今度は、構えるエレナの下から、何度も触手が襲いかかるが、エレナはそれを難なくかわしていき、岩場に華麗に着地する。


「なんだ、こいつ。土の中から攻撃とか…どう攻略するんだよ。しかも、あの触手みたいなのは、攻撃が効いてないみたいだし…本体をおびき出さないといけないタイプのモンスターってことか?」


イノチは戦いの様子から、モンスターについて分析していくが、それは無駄に終わる。

なぜなら、突然の地鳴りとともに、土を巻き上げながら巨大な物体がエレナの前に姿を現したからだ。

四方八方にわたって何本にも伸びる触手。
体の形は常に変化し流動的で、横にも縦にもエレナの数倍はあるであろう巨体がそこにはいた。


「なんてデカさだよ…こんなの倒せるのか…」


イノチがそうこぼしていると、様子を見るように一本の触手がエレナに襲いかかった。


「エレナっ!!」


イノチの心配をよそに、エレナは軽快なステップでそれをかわしていく。

…が、かわし終えると、なぜか一目散にこちらに向かって駆け出したのだ。
もちろん、モンスターもそれを追いかけるようにこちらに向かってくる。


「なっ…なんでこっちに?!」


全力疾走でこっちに向かってくるエレナが何かを叫んでいる。


「BO~~SS!!撤退よぉぉぉぉ!!虫~虫ぃぃぃぃぃぃ!!!!!」

「虫!?」


そう言いながら、涙目のエレナはイノチの横を猛スピードで駆け抜けていく。唖然とした表情でエレナを見送ったイノチは、モンスターの方に目を向けた。

そこには何千…いや何万匹もの小さな虫型モンスターの集合体が、おぞましくうごめきながら、こちらに向かってくるのが見えたのだ。


「うげぇぇぇ!!なんじゃありゃ!!」


イノチも叫びつつ、全力でエレナと同じ方へと駆け出した。

通ってきた通路を必死に走っていくイノチの後ろから、キチチチッと威嚇音とともに、うごめき波打つように虫型モンスターの集合体が追いかけてくる。


「エレナァァァァ!!待って…待ってくれ!!」

「BOSS!!急いで!!飲み込まれたら確実に死ぬわよ!!」


イノチは、前方で走るエレナに必死で追いつこうと足を回すが、持っている剣と盾が邪魔で思うように走れない。


「あぁもう!!これ、邪魔だ!!」


そう言って投げ捨てた剣と盾は、通路いっぱいに広がる虫型モンスターの群れの中に、鈍い音を立てて飲み込まれていった。

走りながらその様子を見ていたイノチは、冷や汗をかきながら前を向き直して、必死に足を回す。

遠目に1階層への階段が見え始め、エレナがその下で待ってくれているのが確認できた。


「BOSS~!!はやくはやく!!!」

「わかってるよ!!これでも全力で走ってるんだぁぁぁ!!!」


そう叫びながら、イノチがやっとの思いでエレナの元へとたどり着くと、待ってましたとばかりにエレナはイノチを担ぎ上げた。


「わっ!」

「しっかり捕まっててよ!BOSS!!」

「了解…って、エレナ!きてるきてるぅぅぅ!!!」


ビッグベアの時と同様に後ろ向きに担がれたイノチは、目の前に虫の群れが迫っていることに焦りを隠せない。


「そんなのわかってるわよ!はぁっ!!」

「むぎゃっっっ!!」


突然、エレナが高速で走り出したことで、意味のわからない声をあげてしまったイノチであるが、気づくと虫の群れとの距離は一気に離れていた。


「やっ…た…にっ…にげ…られ…た!」


階段の下でうごめく姿が確認できる。
エレナに担がれたまま、イノチは安心したようにため息を吐いたが、その安心はすぐに不安と恐怖に変わる。

階段の下でグネグネとうねっていた虫たちは、個体ごとに羽ばたいて一気に飛びかかってきたのだ。


「エレナ!あっ…あいつら、飛び始めたぞ!!」

「うげぇ、勘弁してよ…もうすぐ1階層に出るわ!しっかり捕まっててよ!!」


エレナがそう言うと階段が終わり、二人は先ほどホブゴブリンを倒した広間に飛び出した。


「なんなのよ!あいつら、またリスポーンしてるじゃない!!」


エレナの視線の先には、倒したはずのゴブリンたちが再び広間を徘徊している。


「たっ…倒してる暇なんてないぞ!」

「わかってる!無視して駆け抜けるわよ!!」

「ギギギッ!?」


エレナはスピードを落とさぬまま、驚くゴブリンたちの間を一気に駆け抜けていく。その後方では、階段の入口から虫の大群が羽音を立てながら姿を現した。

彼らは、飛んでいる方がスピードが速いようで、徐々にイノチたちとの差を縮めていく。


「グギャッ!ガァァ…」
「ギョギャッ!!ガ……」


途中で、その大群に飲み込まれたゴブリンたちは、虫たちが去った後、骨だけとなりその命を虫たちの糧にしていく。


「エレナ!!あっ…あいつら、飛んでる方が速いぞ!!このままだと…追いつかれる!!」

「わかってるって!!あたしも全力で走ってるのよ!!でも、BOSSを置いていけばもっと速くなるけど…どうする!?」

「わぁっ!ごめん、ごめなさい!!文句は言いません!!エレナ様!!!」

「わかればいいの!最後の階段よ!!」


最後の階段に差しかかり、エレナは残りの力を振り絞る。

虫たちも何かに気づいたように、逃すまいと飛ぶスピードを速め出した。

徐々に迫り来る虫の群れが、階段の通路などほとんど見えないほどに、イノチの視界を埋め尽くしている。

大きな羽音を響かせて襲いかかる虫の群れは、すでに目と鼻の先だ。

大きく発達した複眼が特徴的で、青色の光沢を放ち、美しくも感じられる羽をはばたかせて襲いかかるそれらは、イノチにイナゴの群れを連想させた。


「BOSS!!出口が見えたわ!!」

「たっ…頼む、エレナ!もうほとんど距離がない…わぁっわわ!!痛ててて!!!」

「BOSS!大丈夫!?」

「痛いっ!かじるな!!このぉ!!」

「…くっ!あとちょっとなのに!!」


イノチの顔が虫の群れの中に入りかけ、耳や頬をかじられ始める。

必死に両手で顔の周りを払うが、虫の数が多すぎて、まったく意味を為していない。

そして、少しずつ…少しずつ…エレナの体にも虫たちが群がり始め、すでに二人の前方以外は虫たちに覆い尽くされてしまった。

しかし、イノチがもはやこれまでかと思ったその時であった。


「うわっ!!右手が…勝手に!!?」


再び輝き出した右手。
そこには『Z』の文字が浮かび上がり、『ハンドコントローラー』が姿を現した。

右手はエレナの太ももに移動する。


「ボッ…BOSS!?こんな時に、何やってん…の!?…あっ…」

「しっ…知らないよ!勝手に右手が…動いて…!?」


イノチの意思とは関係なく、彼の右手はエレナの太ももを撫で回…

いや…タイピングするような動きを始めた。そして、ゴブリンを倒した時と同じように、最後に何かをターンッとタップしたのだ。


「…ん?足が…足が軽くなった!!」


エレナの歓喜の声が聞こえる。
そして、二人の体がゆっくりと虫の群れから離れていく。


「エッ…エレナ?どうしたんだ!?」

「わかんないけど、足がめちゃくちゃ軽くなったの!!これならいけるわ!!おりゃぁぁぁ!!!」

「あひゅっ!!」


先ほどとは桁違いのスピードで階段を駆け抜けるエレナ。

それに引っ張られ、イノチはまた意味のわからない声を上げしまうが…

そのまま、二人はダンジョンの入口から飛び出した。

エレナは受け身をとって虫の群れの攻撃に備えるが、イノチはその勢いのまま転がって木にぶつかる。


「あぎゃっ!!」


叫びを上げるイノチを尻目に、エレナがダンジョンの入口を鋭く睨みつけていたが…


「…出てこれない…みたいね。」


何か透明な壁にでも阻まれているかのように、ダンジョンの入口から外には出れずにいる虫たちを見て、エレナはホッと胸を撫で下ろしたのであった。
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