ガチャガチャガチャ 〜職業「システムエンジニア」の僕は、ガチャで集めた仲間とガチャガチャやっていきます〜

noah太郎

文字の大きさ
39 / 290
第一章 アクセルオンライン

38話 タケルの過去

しおりを挟む

「フレンドか…」


イノチは携帯のフレンド欄に表示されたタケルのIDを見て、そうつぶやいた。

エレナとフレデリカもその後ろを歩いているが、すこし気まずそうにしている。

三人は今、メイの待つ館への帰路についている。

タケルと別れた後、アクアドラゴンのところまで戻り、『ダリア』を含めた報酬を手に入れた。

もちろん、アクアドラゴンも仲間に加わった。今は、イノチの首で光る蒼い宝石のついた首飾りの中で眠っている。

しかし、ドラゴンをテイムするというテンション上がりMAX的なイベントも、イノチは特に喜ぶことなく終えたのだ。

そこからのイノチは終始無言だった。

帰りの廃坑道の中でも、登山道からでる馬車の定期便の中でも、街について館に向かって歩く今でさえも…

イノチはただ静かに、夕暮れの帰りの道を歩んでいるのだ。


「BOSS…大丈夫かしら…」

「そうですわね…元の世界に戻れない…これがBOSSにとって大変ショックなことだと言うことはわかりましたけれど…」


エレナとフレデリカはイノチを心配そうに見つめ、ため息を吐いた。

そうしていると、館の前に着く。


「おかえりなさいませ。」


エレナが玄関のドアを開けると、メイが出迎えてくれた。

いつものようにエントランスフロアに立ち、丁寧なお辞儀で三人を迎えてくれるメイだが、メイの言葉に元気よく答えるイノチの姿は、今はどこにもない。

ただ一言だけ「ただいま」と言うと、そのまま自室に行ってしまったのだ。


「わっ…わたくし、何か至らない点でも…あっ…ありましたでしょうか…」

「違うの…BOSSにとってショックなことがあってね…メイのせいじゃないわ。」


イノチの態度に焦るメイに、エレナとフレデリカは優しく声をかけながら、廊下を歩くイノチの背を見送った。





数刻ほど前…


「死ぬだって!?なんでだよ…ゲームの中だろ、ここは!!」

「落ち着きなよ…この世界は現実の可能性が非常に高いって、さっき言っただろ?」

「だけど…死ぬって…死ぬってどういうことだよ!!馬鹿なこと言うなよな!!」

「だから、それを今から説明するんだ!少し落ち着けって!」


動揺して立ち上がり、声を上げて叫ぶイノチを、タケルは落ち着かせるように諭す。

エレナとフレデリカにも諭されながら、イノチは落ち着きなく再び腰を下ろした。


「まぁ、驚くのも無理はないさ。順序立てて説明するから落ち着いて聞いてくれ…」


イノチはその言葉にうなずく。


「まず、僕はこの世界に来て5年になる。」

「ごっ…5年…だって?!」

「うん、現実の世界だと一か月くらい経っているはずだけど、戻れてないからね。今、自分がどうなってるかもわからない…」

「そっ…そんな長い時間をこの世界で…」

「最初のガチャで彼女を…サリーを引き当てたんだ。彼女は『SR』だったから正直ここまでこれたのもあるね…ほんとに感謝してるよ。」


タケルはそう言うと苦笑いをし、サリーは後ろで頭を軽く下げた。

イノチはそんな二人を見て、彼を激しく罵倒した自分が恥ずかしくなるが、タケルは気にせず話を続ける。


「そこからなんとか生き延びて、僕はプレイヤーランクを20まで上げたんだ。そして、ちょうど3年前かな…クランを作った。僕と同じような境遇のプレイヤーが何人かいてね…みんなで話し合って立ち上げたのが『孤高の旅団』ってクランさ。僕はそこのリーダーをやってる。」

「クランか…みんなって…何人くらいいるんだ?」

「今は五人だね…」


タケルの表情に少し翳りが見えた。それに気づいたイノチは、おそるおそる問いかける。


「何かあったんだね…」

「あぁ…ある時までは、みんな本当にこれがゲームと思ってたんだ…脚が飛ぼうが腕が落とされようが、生きていればポーションで全て治ったからね。」

「……」

「だけど1年前、ジプト法国からきたプレイヤーがいて、彼がこの世界はゲームじゃないと教えてくれたんだよ。みんな、最初は信じなかったけど、彼の説明を聞いていくほどに思い当たることがあり過ぎた…」

「ジプト法国っていうと、世界に点在するうちの国の一つだよね。そのプレイヤーは今どうしてるんだ?」

「…さぁ、わからない…でも、リュカオーンのことを教えてくれたのは彼さ。こいつは『キーモンスター』と呼ばれているユニークモンスターだとね。」

「キーモンスター?」

「そう、『キー』は鍵って意味さ。この世界には、そいつらが何体もいるらしいんだけど…それらを全て倒すと『女神の像』というアイテムが手に入るみたいなんだ。それがあれば元の世界に戻れるらしい…」

「『キーモンスター』…『女神の像』…元の世界に戻れる…か。その『女神の像』っていうのはどんなアイテムなんだろう。」

「それについて詳しくはわからない…けど、僕らはその『女神の像』を目指すことにしたんだ。そして、法国からきたプレイヤーと協力して、このリュカオーンを討伐することにしたのさ。」


タケルはそこまで話すと、少し離れたところに横たわっているリュカオーンの死骸を指さした。


「…だけど、その時の戦闘で僕らは、仲間を何人か失ったんだ…」


タケルが悔しそうな表情を浮かべた。
イノチも自分から問いかけることができず無言でいると、タケルが再び口を開いた。


「死んだと思われるのは三人…思われるってのは、確かめる術がないからだね。でも、彼らの遺体はその場で光の粒子となって消えてしまった…一緒にいたキャラクターや装備なども全て一緒にね。」


それには、後ろで話を聞いていたエレナたちも、驚いた表情を浮かべている。


「でも、もしかしたら生き返ってるかも…例えば教会とか神聖な場所でさ!」

「僕らもそう思った。そう思ってこのジパンを隈なく探したよ…でも、そんな場所はなかったし、彼らとも今日まで会っていない…もし生きているなら、普通はクランメンバーを頼ると思うんだけどね。」


イノチの仮定にタケルは首を振る。しかし、イノチは諦めない。


「もしかしたら、生き返る国はランダムでここジパンにはいないのかも!」

「確かにその可能性はあった。でも、すぐに違うとわかったよ。ある事実によってね…」

「ある事実…?」


タケルは首を傾げるイノチに、自分の端末のある画面を見せた。


「これは僕のフレンド一覧だよ…この三人がそのメンバーだ。」

「こっ…これ…事実って…まさか…」


タケルが指し示す三人の名前を見て、イノチはすぐにピンと来た。その三人のプレイヤーネームと他のメンバーの名前には明らかに違いがあったのだ。


「…想像の通りさ。名前がグレーアウトしているんだ。死んだらフレンドを解除されるとしても、グレーアウトは明らかに不自然だろ?」


その言葉は妙に納得感があった。

確かにその通りだ。
フレンド解除されるなら一覧から消せばいい。わざわざグレーアウトする仕様がわからない。

イノチは、再び訪れた得体の知れない不安感とゾワゾワと背中に感じる不快感に身をよじる。


「君に話すことではないかも知れないけど…」


考え込むイノチに対して、タケルが寂しげに口を開き、端末のあるプレイヤーネームを指さした。


「そのメンバーの中に女の子がいてね…これだね、プレイヤーネーム"きなこ"…彼女もリュカオーン戦で死んでしまった一人なんだけど…」


タケルが話の途中で口ごもった。
うつむいて目を閉じたタケルは、そのプレイヤーのことを思い出しているようだった。


「もしかして…その子は君の…」

「あぁ、大切な人とだけ言っておくよ。」


静かに声をかけたイノチに対して、タケルは一言だけ告げた。

イノチの心に、やるせない気持ちが広がっていく。

自分がゲームだと思っていたこの世界は、思いもよらない過酷な世界だった。

涼しい顔して笑っていたタケルも、たいへんなつらい経験をしていたのに、ちょっと動揺して彼に罵声まで浴びせて、自分はなんて馬鹿なんだろうか…

おかしいと思いつつ、ゲームだからと自分を誤魔化していたことをイノチは恥じた。

ヘラヘラ笑って過ごしてきたことを恥じた。

真っ黒な陰りが、少しずつイノチの心を支配していった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

乙女ゲームの正しい進め方

みおな
恋愛
 乙女ゲームの世界に転生しました。 目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。  私はこの乙女ゲームが大好きでした。 心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。  だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。  彼らには幸せになってもらいたいですから。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

【完結】ドアマットに気付かない系夫の謝罪は死んだ妻には届かない 

堀 和三盆
恋愛
 一年にわたる長期出張から戻ると、愛する妻のシェルタが帰らぬ人になっていた。流行病に罹ったらしく、感染を避けるためにと火葬をされて骨になった妻は墓の下。  信じられなかった。  母を責め使用人を責めて暴れ回って、僕は自らの身に降りかかった突然の不幸を嘆いた。まだ、結婚して3年もたっていないというのに……。  そんな中。僕は遺品の整理中に隠すようにして仕舞われていた妻の日記帳を見つけてしまう。愛する妻が最後に何を考えていたのかを知る手段になるかもしれない。そんな軽い気持ちで日記を開いて戦慄した。  日記には妻がこの家に嫁いでから病に倒れるまでの――母や使用人からの壮絶な嫌がらせの数々が綴られていたのだ。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...