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第一章 アクセルオンライン
45話 鑑定…いや違う
しおりを挟む「待て待て待て!!勝手に話を進めるなよ!なんで俺らが野盗の討伐をしなきゃならないんだ!」
イノチは慌てて、アクアドラゴンの発言を撤回する。しかし、彼はそんなことはお構いなしに話を進めていく。
「それくらいよかろう。困っとる相手が目の前にいるのだから、手伝ってやるのは人間ならば普通のことではないのか?」
「くっ…正論だ…くそっ…だけど俺らにだって他にやることがあるし…」
「ほう…それはなんだ?言ってみろ。」
「…ゔ…それは…俺のランク上げ…とか…」
「お主のランク上げ…?あぁ、ギルドランクのことか!それならば、尚のこと野盗討伐を受けるべきだろう。討伐クエストはランクが上がりやすいからな!」
「いや…そのランクのことでは…」
墓穴を掘ったと後悔するイノチの前でアクアドラゴンの言葉は止まらない。どうやら不満があったらしく、イノチの肩の上で唾を飛ばしている。
「そもそもだ!我を仲間にしたというのに、貴様らはいっこうに驚きもせん。竜種だぞ、竜種!この世界で最強の一角を誇る我を仲間にして、未だ平然としておるお主らに、我は意義ありじゃ!!」
そう可愛らしく吠えるアクアドラゴンに、エレナとフレデリカが愛くるしい視線を向けているが、それすら気に食わないと言ったようにキャンキャン言っているのだ。
そんな中、今度はこの男が口を開く。
「イノチ殿…先ほどからウォタさまがおっしゃっている話は…一緒に行動されているとのことですが、いったいどういうことでしょう…?」
「え…あ、いや…実はですね…」
イノチは『アソカ・ルデラ山』の坑道で起きたことの顛末を、タケルの存在を隠しつつ、アキルドたちへ説明する。
「なっ…なんと…竜種であるウォタさまを従えたと言うのですか…」
アキルドは、開いた口がふさがらないといった様子でイノチを見ている。それに対して、シャシイは驚きつつも、別のことが気になる様子だ。
口をパクパクしているアキルドをよそに、シャシイがイノチへと問いかける。
「私はその『リュカオーン』というモンスターのことが気にかかります。討伐したという事ですが、その証拠となるものはお持ちでしょうか?」
「それならキバがドロップしたから、それがありますよ。」
イノチはアイテムボックスから『リュカオーンのキバ』を取り出した。
「…たしかに、この辺に生息するモンスターではあり得ない大きさだ。少し見てもよろしいか?」
「どうぞどうぞ。」
シャシイはイノチからキバを受け取る。そして、魔法を唱えた。
「鑑定…」
「そっ…それは…アキンドさんも使っていたやつ!?」
シャシイの瞳の前に小さな魔法陣が現れ、手に持つキバを見定めるように、大きさを変えながら動き出す。
それを見て興奮するイノチに、アクアドラゴンが話しかけてくる。
「なんだ、お主。鑑定魔法が珍しいのか?」
「そっ…そりゃあ、鑑定魔法はファンタジーの定番だからな!」
「ふむ…目に魔力を通せば使えないこともないぞ。まぁ得手不得手はあるがな。どれ…やってみろ。我を鑑定してみるのだ。」
「…え?ウォタを…?まぁ、やってみるか。えっと…こうかな?」
ガチャ魔法を使う時と同様に、目に魔力を集中させてみる。すると、自分の瞳の前に小さな魔法陣が現れ、アクアドラゴンの周りにいくつかの情報が現れたのだ。
(なんだこれ…アクアドラゴンの周りに…なになに…)
【名 前】ウォタ(レアリティ不明)
【種族名】ドラゴン(アクア系)
【属 性】水
【タイプ】大賢者
【備 考】竜種、世界最強の一角
(おっ…見えた。これが鑑定か…タイプ『大賢者』ってなんだろう…他には…)
【加 護】神の生命
【スキル】水系魔法(全級)、氷魔法、聖魔法(回復系)、アクアブレス
【ウィークポイント】雷系、土系魔法
……
(加護にスキル…弱点まで!すげぇな、鑑定!…ん?まだあるな…おぉ!アクアドラゴンの攻撃パターンや回避行動、その挙動までしっかりと書いてある!!リュカオーンの時もこれが使えてたらもっと楽だったよなぁ…)
「どうだ…?見えたか?」
「え…あ、うん。見えた。」
「…お主は戦いよりも、そういったことの方にセンスがあるようだな。我の属性やタイプが確認できたであろう?そこから相手の弱点を洗い出すなどすれば、戦闘にも役に立つ魔法だな。」
(ん…?弱点を洗い出すって…弱点はもう見えてるけど…どういうことだ?)
アクアドラゴンの言葉に疑問を感じるイノチ。エレナは首を傾げるイノチの様子を不思議そうに見つめていた。
しかし、シャシイの鑑定が終わったため、話はそこで途切れる。
「ふぅ、お待たせいたしました…」
「何かわかりましたか?」
「…はい。」
「…?シャシイ殿、いかがなされた?」
あぶら汗をかき、少し様子のおかしいシャシイに、アキルドが声をかける。
「いや…結果を話す前にイノチ殿にひとつ伺ってもよろしいか?」
「え…はっ…はい、なんですか?」
「このキバの持ち主は、本当にあなた方が倒したのですか?」
「…そうですけど。」
「間違いないのですね?」
「はっ…はい。えっと…なんかまずかったですか?」
それを聞くと、シャシイは大きくため息をつく。そして、驚くべき事実を話し始めたのだ。
「アキルド殿…驚かれずに聞いてください。あくまで私の推測ですが…このキバの持ち主は伝説級…それもアクアドラゴンさまと同等クラス…我が軍総出でも倒せないほど強力なモンスターの可能性が高い…」
「なっ…!?それは誠か…シャシイ殿!」
「はい…このキバの鑑定結果は一言でいうと不明…そんな結果がでるのは、私の知る限りではこの『ダリア』しか知りません。」
「なんと…」
かなり驚いているアキルド。目を見開いて、シャシイから受け取ったキバをマジマジと見つめている。
「イノチ殿、このモンスターと戦い、よくぞご無事でしたな。」
「そっ…そうですね、ハハハハハハ」
「そこは我の加護のおかげだな!」
笑ってごまかすイノチの肩で、アクアドラゴンがウンウンとうなずいている。
しかし、イノチとしてはこの件についてあまり詮索されたくないのだ。なんとかごまかそうと話を切り出す。
「まっ…まぁ、このモンスターのことは置いておくとして、まずは『ダリア』の話を進めません?」
「それはそうですが…しかしですね…」
シャシイが納得いかないといったようにイノチを問い詰めようとする。
が…
「イノチ様であれば、それくらいやってのけるでしょうな!」
突然、声がした方に皆が目を向けると、ドアの前にはアキルドと瓜二つの人物が立っていたのである。
◆
「はぁ…」
「どうしたの、BOSS?元気ないわね。」
三人と一匹は、館への帰路の途中だ。
「あぁ…アキンドさんのおかげで、なんとか『リュカオーン』のことはごまかすことができたけどさぁ~。結局、野盗討伐を受けることになっちゃったからなぁと落ち込んでいるのです。」
ギルド総館では、アキルドの弟であるアキンドが突然現れ、シャシイたちを丸め込んでくれたのだ。しかし、話の流れから依頼を受けた方が切り抜けやすそうだったので、とっさに受けてしまったのだ。
「よいではないか。」
「よくねぇよ!!ウォタのせいで受けることになっちまったんだから!俺は早くプレイヤーランクを上げたいのに!」
「プレイヤーランク…?ギルドランクのことだろう?」
「違うってば!」
「はい!その話は終わりね!!」
ギャーギャーと言い合う二人に、エレナが割って入る。
「あたしもBOSSに聞きたいことがあるんだけど…」
「なんだよ…」
「さっき鑑定魔法の結果、ウォタの情報ってどこまで見れたの?」
「何を言っておるのだ?属性やタイプまでしか…」
「あなたは黙ってて。どうなの、BOSS?」
ウォタはエレナの凄みに気圧されてしまい、イノチの肩の上に戻ってブツブツと何か言っている。
「えぇ~と…やっぱり話した方がいいよね…」
エレナたちは頷いている。
イノチはため息をつくと、鑑定結果を皆に伝えた。
「属性とかの他に、弱点や戦いのパターンまで見れたよ…」
「え?!」
「なっ!?」
「やっぱりですわ!」
驚くエレナとウォタの後ろで、なぜかフレデリカはうなずいている。
「お主…鑑定魔法を使ったのではないのか!?」
「そっ…そうだよ!ウォタに言われたとおりにやったよ!」
「BOSS…全部説明してもらいましょうか…」
「そうだぞ!白状せい!!」
エレナとウォタに詰め寄られ、イノチは泣く泣く全てを話すのであった。
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