ガチャガチャガチャ 〜職業「システムエンジニア」の僕は、ガチャで集めた仲間とガチャガチャやっていきます〜

noah太郎

文字の大きさ
71 / 290
第二章 始まる争い

6話 煩悩とガチャ

しおりを挟む

エレナを強化した午後のこと。

昼食を終え、食堂にはイノチ、ミコト、フレデリカ、ゼンの4名だけが残っていた。

エレナとウォタは腹ごなしだと言って、再び組み手をしに、庭へ行ってしまったのだ。

メイもアキンドに用事があると不在にしている。

イスに座るイノチは、今までにないほど真剣な表情で口を開く。


「みんな…準備はできているか?」

「うっ…うん…」


手を組みテーブルに肘をついて、真剣な物言いで静かに告げるイノチ雰囲気に、ミコトはごくりと唾を飲んだ。


「ミコト…真面目に聞かなくていいですわ。BOSSは『ガチャ』のことになると頭がおかしくなるのですわ!」

「えっ…?これ…ふざけてるの?」

「おい、フレデリカ!変なこと言うなよ!俺はいつだって真面目だ!ふざけてなんかいないって!ってか、頭おかしいとか言い過ぎじゃね?」


雰囲気を壊されたイノチは物申すが、フレデリカは肩をすくめて知らん顔をしている。

小さくため息をつくと、イノチは気を取り直して話し始めた。


「本題に入ろう。エレナの強化は終わったけど、計画していた『ガチャ』での戦力底上げがまだ残ってる。あくまでガチャだから運によるんだけど、俺とミコトで2回ずつ、合計4回引けるから、なんとか高レアリティのキャラを引いておきたい…」

「ベストは『UR』ってところかな…」

「もちろん、それ以上でもいいんだけど。でも、最悪『SR』でもいいかなとは思ってるけどね。」


フレデリカがコーヒーをたしなむ横で、イノチとミコトはうなずき合うと、それぞれが手に魔力を込めて、同じ言葉をつぶやいた。


「「ガチャガチャ!」」


二人の右手が白くまばゆい光を放ち出し、それぞれの目の前にガチャウィンドウが現れる。

『ノーマルガチャ』、『プレミアムガチャ』の2種類のアイコンが表示されていて、その下のスライドでは、排出される職業と装備のラインナップが定期的に横移動している。


「どっちから引く?」

「できれば…私が先に引いてもいい?」

「もちろん!」


ミコトの提案にイノチは笑顔で大きくうなずいた。


「なら、さっそくいくね。」


ミコトが『プレミアムガチャ』のアイコンをタップすると画面が変わり、1連、5連、10連のアイコンが3つ表示される。

さらに10連をタップして画面を注視しているミコトに、一緒に見ていいか了承を得ると、イノチもその画面を覗き込んだ。


(ん…?演出が俺のと違う…?)


画面を見て、イノチは自分の演出ムービーとの違いに気づいた。

ミコトのガチャウィンドウでは、単に置かれている砂時計が、一瞬輝いてグルグルと回転し始める。

そして、その回転が終わると、砂時計の上部から下部へ落ちていく砂たちがフォーカスされて、中から輝いた光の球が飛び出してくるというものだった。

白髪白ひげの男は出てこない。


「白…白…白…」


ミコトは出てくる球を一つずつ確認するが、1回目の結果はすべて『白』だった。

結果は、『強化薬』やレアリティが『R』の装備アイテムばかり。


「うぅ…爆死だぁ…」

「まだわからないって!あと一回できるからさ!」

「……そうかなぁ…」

「ミコト、無心で引くんだ…求めるから出ない。ガチャは欲を持ったまま引いたら負ける!」

「…無心…無心だね!なるほど!」


イノチが落ち込み気味のミコトに声をかけ、ガチャの極意?みたいなものを伝授していると、横からフレデリカがツッコミを入れてくる。


「欲望でしか引いてないBOSSが、どの口で言っているのか、ですわ。」

「うっ…うるさい!俺だってちゃんと無心で…」

「あら…なら、わたくしを引いた時のことをミコトに話しても問題ないですわね。ミコト、実はBOSSは…」

「わぁぁぁ!わぁぁぁ!やめろ、フレデリカ!あれはある意味で事故だ、事故!!」

「事故?だって、BOSS…わたくしの体を…」

「わぁぁぁぁぁ!フレデリカ!ストップだって!!すみません!欲望で引いてます!謝ります!ごめんなさい!!」


不敵な笑みを浮かべるフレデリカを、涙目で必死に阻止しようとするイノチを見て、ミコトも驚いていたが、すぐにその顔には笑みが浮かんでくる。


(相変わらず、仲良いなぁ…ふふ)


そんなことを考えながら、ミコトは気を取り直して、再び10連のアイコンをタップした。

再び、砂時計がグルグルと回転し始める。

ミコトはそこから目をつむり、手を組んで祈り始めた。

(みんなの力になりたい…みんなと一緒に戦いたい…)


砂時計が止まる。
上部から砂がサラサラと落ち始め、輝く球体が次々と飛び出していく。


目を開いて、ミコトはその結果を追っていく。


「白…白…白…白…白…」


5つ目まではすべて『R』だ。
このまま出ないのではという不安が、ミコトの頭をよぎる。


「白…白…白…白…お願い!!出て!」


そう祈るミコトの想いも届かずか、無常にも最後に白球が飛び出してきた。


「あっ………」


呆然とその結果を見ているミコト。
イノチは心配になり、声をかけようとミコトに近づいていく。

仕方ないのだ。
ガチャは運…高レアリティが出なかったのはミコトのせいではないのだから。

なんて言おうか考えながら、ミコトに声をかけようとしたその瞬間、ミコトの表情が突然、驚きに変わった。


「あっ…あれ!?なにこれ?白い球が空へ飛んで…」

「これは…!確定演出じゃないかな!」

「「カクテイエンシュツ?」」

「もしかして…!」

「そう!そのもしかしてだよ!」


その演出もイノチの時とは違ったが、今はそんなことどうでもいい。

フレデリカとゼンが首を傾げているのを尻目に、イノチとミコトは興奮して画面に魅入っている。

空へと高く舞い上がった白球は、宇宙まで飛び上がり、やがて地上へと落ち始める。
大気圏で赤く炎をまとうそれは、ひび割れてその中身を徐々に現していく。

そして…


「虹玉…!ミコト、『SR』だよ!やったじゃん!!」

「うん!よかったぁ~。あとは中身が何かだね!」


画面では演出が終わり、ミコトが『TOUCH NEXT』の表示をタップする。

その結果は…

強化薬が4つに『R』の武器と装備が3つ、それにポーションが1つ。

そして、念願の『SR』はというと…


「メイジ専用武器…『エターナル・サンライズ(SR)』…?私の専用武器だ!」

「名前からしても強そうだね!…属性は『炎』だ!なら、ゼンさんと同じだね!」


自分のことのように喜ぶイノチを見て、ミコトは嬉しそうに笑みを浮かべた。

しかし、笑っているその顔に一瞬だけ翳りが落ちる。

イノチも気づかないほどの一瞬でもだけだが…

戦うことが苦手なミコト。
本音を言えば…武器ではなく新たな『仲間』を希望していたのだ。

だが、結果は結果だ。
わがままを言っても、それが覆るわけではない。

ミコトは気持ちを切り替えて、口を開く。


「次はイノチくんだね!頑張って!!」

「うっ…うん…頑張るよ!」


その笑顔にドギマギしながら、イノチは相槌を打った。

そして、自分の画面に向き直り、『プレミアムガチャ』をタップしたところで、フレデリカが声をかけてくる。


「BOSS!無心ですわ!M・U・S・H・I・N…む・し・ん!」

「うっ…うるさい!わかってるって…」


どこから出したのか…
黄色のチアガールのポンポンを手に、声援を送ってくる。

完全に嫌味にしか見えないそれに気を取られつつ、イノチは10連をタップする。


(たのむぅぅぅぅ!『UR』をお願いします!!ここまで頑張ってきたんだから…マジでお願いですぅぅぅぅ!)


手を組み、祈る姿勢のイノチは、周りから見れば無心で祈る聖人に見えた。

しかし、その心の中はガチャの煩悩に取り憑かれている。

白髪白ひげの男が再び現れ、ニカッと笑いかけるが、イノチはそれを見ていない。
必死に祈り続けているのだ。


(URURURURURURURURURURURURURURURURURURURURURURURURURURURURURURURURURURURURURURURUR………)


たぶんミコトがこの脳内を見たら絶対に引いている。

それほどまでの煩悩を心に秘めたイノチのガチャの結果は…






チュドドドーン……


チーン……
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

乙女ゲームの正しい進め方

みおな
恋愛
 乙女ゲームの世界に転生しました。 目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。  私はこの乙女ゲームが大好きでした。 心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。  だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。  彼らには幸せになってもらいたいですから。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

【完結】ドアマットに気付かない系夫の謝罪は死んだ妻には届かない 

堀 和三盆
恋愛
 一年にわたる長期出張から戻ると、愛する妻のシェルタが帰らぬ人になっていた。流行病に罹ったらしく、感染を避けるためにと火葬をされて骨になった妻は墓の下。  信じられなかった。  母を責め使用人を責めて暴れ回って、僕は自らの身に降りかかった突然の不幸を嘆いた。まだ、結婚して3年もたっていないというのに……。  そんな中。僕は遺品の整理中に隠すようにして仕舞われていた妻の日記帳を見つけてしまう。愛する妻が最後に何を考えていたのかを知る手段になるかもしれない。そんな軽い気持ちで日記を開いて戦慄した。  日記には妻がこの家に嫁いでから病に倒れるまでの――母や使用人からの壮絶な嫌がらせの数々が綴られていたのだ。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...