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第二章 始まる争い
8話 ナリゾコナイ
しおりを挟む「ミコト!ダンジョンの情報を出して!」
「うっ…うん!」
エレナに声をかけられ、ミコトは携帯端末を取り出すと、急いでダンジョン情報を引き出した。
『超上級ダンジョン』
階層:地下50階
出現するモンスター:オーガ(Lv.75)、ガーゴイル(Lv.80)、トロール(Lv.65)、ゴーレム(Lv.70)、マンイーター(Lv.61)ミミック(Lv.1)、ウィングヘッド(Lv.85)
入手可能アイテム:オーガのキバ(SR)、ガーゴイルの瞳(SR)、ゴーレムの核(SR)、強化薬(キャラ・武器)、黄金石
備考:ミミックは弱いけど、罠を張るから注意してね!
「このダンジョン、けっこうエグいわね…ウォタがついてるから大丈夫だとは思うけど。」
「そもそも、BOSSが落下の衝撃に耐えられるか心配ですわ。」
「それは大丈夫じゃないかな?私たちプレイヤーが死んだら、エレナさんたちも消えちゃうんでしょ?」
「まだ落ち続けている可能性はあるけど、現時点では死んでないってことか…でも、ここを直接降りるわけにもいかないし…」
「下に向かえば会えるんだよね?」
「おそらくは…」
ミコトの問いかけに、エレナははっきりとは答えられない。フレデリカも首を横に振っている。
なぜなら、ダンジョンの構造なんて誰にも分からないのだから。
すると、ミコトの懐からゼンが顔を出した。
「大丈夫だと思うぞ。ダンジョンの周りには空洞などできないからな。落ちたと言うことは、ダンジョン内のどこかの階層にいるはず…しかも、さっきのはミミックだからなおさらだ。」
「「「ミミック…?」」」
「あぁ…そこにも書いているだろう。強くはないが、仕掛けたトラップで冒険者などを殺して捕食するモンスターだ。」
「じゃあ、さっきのアイテムは…」
「おそらくミミックの本体だ。」
聞き返したエレナに、ゼンはそう告げる。
「『黄金石』に目が眩むあたりがBOSSらしいですわ。」
フレデリカの言葉に、一同は納得といった顔を浮かべてうなずいていた。
「ミミックにやられることはないとして…何階層まで落ちたかわからないけど、BOSSにはそのうち会えると信じて、あたしたちは攻略を進めましょう!ミコト…!」
「はっ…はい!」
急に呼ばれたミコトは、『エターナル・サンライズ』を握りしめて返事をする。
「BOSSがいない以上、現時点での決定権はあなたに委ねられるわ!戦闘では基本的にあたしたちが考えて動くけど、重要な決定事項はあなたに任せるからね!」
「えっ…えぇ…私が!?」
「そうですわ。あなたはクラン『ガチャガチャガチャ』のサブリーダーなのですから…」
「うぅぅ…そうだよね…わかりましたぁ…」
ミコトは自信なさげにうなずくのであった。
◆
一方で、落下中のイノチ。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
暗い穴を下へ下へと落ちていく。
胃の中が持ち上がる浮遊感。
昔、遊園地で経験したフリーホールの浮遊感がずっと続く感じ。
その感覚が体の中をどんどん支配していく。
「うっ…うげぇ…!!!」
吐き気を催しながら、イノチは必死に声を出した。
「ウォ…ウォタ…!やばいっ!やばいから早く出てきて!!!」
「なんだ…もう出番か…っておい!何を一人で楽しげなことしとる!!?」
「どー見たら、これが楽しく見えるんだ!?落ちてんの!!お・ち・て・る!!わかる!?」
「そんなん、見りゃわかるわ…しかし、なんでそんなに焦っとるんだ?」
「だぁぁぁぁ!!飛べないからに決まってんだろ!やばっ!!地面が見えてきた!」
真下に広がる広い空間を視界が捉えた。
ものすごい勢いで近づいてくる地面を見て、イノチは胃と股間が締め付けられる感覚に再び襲われる。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!死ぬぅぅぅぅぅぅぅ!!!」
「ったく、落ちとるくらいで大袈裟なやつだ!」
そう言いながらウォタは、イノチの体を伝い、背中までやってくる。
そして。体を少し大きく変化させるとイノチを抱える形で浮遊し始めたのだ。
「ほれ!」
地面にぶつかると思った瞬間、体がふわっと浮かび上がったイノチは、一瞬何が起こったのかわからない。
「…あっ…あれ?浮いて…る?」
「それ以外に何があるのだ…!」
「ウォタ…お前、空飛べるのか?」
「我は竜種だぞ!空を飛ぶくらい朝飯前だ。」
イノチを地面に下ろすと、鼻を高くしてドヤ顔をするウォタ。
苦笑いしつつも、ウォタの功績にお礼を告げようとしたその時である。
「キシャァァァァァァ!!」
「なっ…なんだこいつ!スライム?!」
イノチの目の前に小さくドロドロとした流体のモンスターが現れたのだ。
身構えるイノチに対し、ウォタがゆっくり口を開いた。
「あぁ…こいつはミミックだな。」
「ミミック…?宝箱じゃないの!?」
「お主が何を言っとるのかよくわからんが…あれは擬態し、トラップを仕掛け、かかった獲物を捕食するモンスターだ。一見、スライムにも見えるが、あやつらとは違って体が流動的なのが特徴だな。ほれ、ドロドロとうごめいとるだろ?こいつらは基本、どんなものにも擬態できるらしいぞ。」
「へぇ…でも、トラップを仕掛けてかかった獲物を捕食かぁ…モンスターも生きるのは大変!っとか言ってね、ハハハハ」
「笑っとる場合か?他人事のように言っとるが、今回のやつの獲物はイノチ、お主だぞ。」
「えぇ!?俺かっ!?なんで!」
驚くイノチを見たウォタは大きくため息をつく。
「イノチ…お主は本当に頭良いのか悪いのかよくわからんな…察すればわかるだろ?なんで落下したのか。」
「落下…?そうか…ワナか!!そういえば『黄金石』はどこに…?もしかして擬態ってことは…」
ウォタは小さくうなずいている。
イノチはミミックに視線を向け直すと、悔しげに口を開く。
「くそっ!俺の純情を返しやがれ!!」
そう言って、腰にある剣を抜き放った。
しかしその瞬間、イノチの視界の中で驚くべき事が起こったのだ。
ミミックの真上の天井が抜け落ちる。
突然のことに、回避できなかったミミックは、驚きと苦しさのような悲鳴を小さく上げて、岩の下に消えていった。
その代わりに、大きな咆哮がフロア全体に響き渡り、壁や天井がそれに呼応する。
「こいつは…!イノチ、我の後ろに下がれ!!」
「なっ…なんだよ、こいつは!」
とっさの判断で前に立つウォタに、イノチが声をかける。
二人の目の前には、二本足で立ち、その上に異形を載せたモンスターが立ち塞がっているのだ。
大きさは立ち上がった大型の熊ほどで、その体表は鳥の羽毛のようなもので覆われている。
体と思われる場所には、なんだかよくわからない房のようなものがあり、それが大きな口のように見えた。
そして、特徴的な羽…一見、爬虫類型の翼にも見えるその大小4枚の羽は、独立的に羽ばたいているのだ。
「気持ち悪いやつだな…」
「気をつけろ…こいつは強い。」
何かを知っているような口ぶりのウォタ。
振り向かず発する言葉はどこか緊張しているようだ。
「ウォタ…お前、こいつを知ってるのか?」
その問いかけに、ウォタは少しだけ沈黙した。
明らかに尋常でない様子のウォタの態度を見て、イノチに不安が募り始める。
イノチが目の前のモンスターをチラリと一瞥すると、ウォタがようやく口を開いた。
「こいつは『ウィングヘッド』…通称『ドラゴンヘッド』とも言う…」
「ドッ…『ドラゴンヘッド』って…竜の頭…?」
ウォタは悲しげな表情を浮かべてそれに答える。
「あれは…竜種の成り損ないだ…」
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