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第二章 始まる争い
53話 ネタバラシ
しおりを挟む「今回の件については、私の不徳の致すところ…本当にすまなかった。」
王の御前。
広々とした応接の間に案内された一行は、王からの謝罪に対して反応はさまざまだ。
エレナは相変わらず腕を組んで仁王立ち。
アレックスは「可愛いおじいちゃんだねぇ♪」とか言ってるし、トヌスとロド、ボウはかしこまり、小さく縮こまってしまっている。
ちなみに、トヌス他の仲間たちは数も多いので、外で待機させている。
「王様の顔に泥を塗ってしまったようで…こちらとしても申し訳なく思っています。」
イノチがそう詫びると、王は首を横に振った。
「気にするな…我らとしては無実の者を危うく処刑してしまうところだったのだ。それを止めてくれたことに、むしろ感謝しておる。この国は戦乱の時代が長かったからな…今の民はそういうことに敏感な者も多い。仮に、彼を処刑してしまっていたら、その亀裂は見えないところで拡がっていき、最後には国を傾けかねん。」
この王様は信頼できる。
それが、今の話を聞いてイノチが感じた第一印象であった。
正しいことを選択でき、人のためにに動ける人間。
過ちには頭を下げることができる、礼儀を兼ね備えた人物であると。
(広場でも思ったけど、間違ってしまってごめんなさいなんてこと、国のトップがなかなか言えることじゃないもんな。この人は信用できる人だ。)
広場での一幕。
オオクラは捕まり、キンシャは逃げおおせたが、民衆がざわつく最中で、王は民の前に立ち、頭を下げたのだ。
イノチがそう思う傍らで、シャシイが口を開いた。
「オオクラ殿については、国の執行部がしっかりと対処させていただきます。それにトヌス殿には大変なご迷惑をおかけしたお詫びとして、こちらを…」
テーブルの上に、大きめの布袋が置かれた。
音から察するに、大量のゴールドが入っているようだ。
シャシイはそれをトヌスの前へと滑らせる。
しかし…
「確かに迷惑は被ったがな…俺たちも胸張れるような生き方はしてねぇ。ああなっても文句は言えねぇんだ。だから、これは受けとらねぇ。」
王とシャシイが驚く最中、トヌスの横ではロドとボウもうなずいている。
「但し、俺から一つだけお願いがあるんだが…」
改めてトヌスが口を開くと、王は静かにうなずいた。
「この国には、身寄りがなくて辛い思いをしている子供が、まだまだたくさんいる。この金はその子たちの支援に当ててほしいんだ。俺の仲間たちも、元はそういう子供たちだからな。せめて真っ当な仕事に就けるまで支援してやってほしい。」
「そうか…やはりまだまだ及ばぬな。わかった!お主の願いを聞き入れよう。組織を編成し、そのような子供たちを保護する施策を進めることとする。」
王はそばに立つ側近に指示を出すと、彼は頭を下げ、退室していった。
「さて…これにてこの話は終わりかな…?ならば、私からも聞きたいことがいくつかあるのだが…」
「話せる範囲でならいいですよ。」
「感謝する。」
イノチの言葉に笑顔を見せた王は、再び口を開いた。
「真相はオオクラに吐かせるとして…まず、ことの顛末を説明してはくれないか?」
イノチはその言葉にうなずくと、静かに話し始める。
トヌスが捕まったことを知らせに来たロドたちの話から始まり、ガムルの店でスネク商会のヘスネビと揉めたこと。
エレナを城に忍び込ませたけど、捕まってしまったこと。
ロドたちがスネク商会に捕まったこと。
そして、広場での一幕までの自分たちの動きを細かに説明していった。
「なるほどな…して、まずは城にどうやって忍び込んだかだが…」
「詳しくは言えませんが、俺のスキルで彼女を透明化させました。」
「なんと!透明化とな…ものすごいスキルだ。私も多くの国を訪れたが、そんなスキル見たことも聞いたこともない…では、広場で轟いたオオクラの声は…あれはどんな仕組みなのだ!?」
突然、目を輝かせて身を乗り出す王に引きつつ、イノチは説明を続ける。
「あっ…あれも俺のスキルですけど…エレナ、その首飾りを貸して。」
「これ…?はいはい…」
エレナから首飾りを受け取り、イノチはその一部を操作する。すると、再びオオクラの声が流れ始める。
これには王もシャシイも驚愕した。
「こっ…これは!いったいどういう仕組みなのだ…こんな魔道具、見たことがない。」
「たしかに…!」
「ちなみにですけど、ここを触ると…」
突然、オオクラの話し声が大きくなる。
「なっ…なんと…!音の大きさまで変えられるのか…?!」
王もシャシイも言葉にならず、口を開いたままその首飾りをジッと見ている。
「これは、ある程度離れたところからも操作できるので、俺は高いところで様子をうかがい、タイミングを見計らって、さっきみたいに大音量で流したんです。内容自体は、エレナに城に忍び込んでもらった時に録音しました。」
「ロクオンとは…?
「声をコピーすることです。」
「声を模倣するのか…しかし、街中で音を聞いた者がおったが、あれは…」
「あれも俺がしました。ロドたちに手伝ってもらって、街中にこれを置いてもらったんです。」
イノチは小さな小石を取り出して、テーブルの上に置く。
「これは?」
「これは通信式の拡声器ってとこですね。」
「ツウシンシキノカクセイキ?」
頭に疑問を浮かべる王とシャシイ。
トヌスも驚きすぎて、開いた口がふさがらなくなっている。
「これらは、この首飾りと繋がっていて、首飾りから流れる音を同じように発してくれるんです。こんな風に…」
イノチが小石の一つに触れると、首飾りから流れている声と同様のものが小石から流れ始める。
「なっ…なんと…シャシイよ。お主はものすごい人物を連れてきたようだぞ…『ダリア』の件といい。イノチ殿、私はお主のことが怖くなったぞ。」
苦笑いする王に、イノチもまた苦笑いした。
「これを話したのは、王様が信用できる人と思えたからです。できれば、他言無用でお願いします。」
「もちろんだ。だがしかしなぁ…」
何か思わせるような態度をとる王に、イノチは意味を察して口を開く。
「もちろん、この力を使って悪いことをするつもりは一切ないですよ。それはあなたに誓います。」
「王よ、イノチ殿はそのような人物ではないことを私も保証します。商人ギルドのマスターであるアキルド殿からも、信頼を得ている人ですから。」
「そうか、アキルドも…ならば信じよう。」
王は大きく笑みを見せてうなずいた。
「ところで、スネク商会はどうなったんです?」
「あぁ、そうであったな。先ほど会長のところに使者を送ったのだが、たいそう驚いておったようだ。調べてみるとすべて、ヘスネビという男が独断でやっていたことでな。しかし、肝心のヘスネビがどこにもいないらしい…」
「そうですか…それでしたらここに行ってみるよう、会長に伝えてください。」
「これは…?」
「イノチ殿、ここは『ガムルの沈黙亭』ではないですか!」
「そこで悔い改めてさせてます。」
イノチはニヤリと笑う。
王はそのメモを受け取ると、シャシイにスネク商会へ伝えるように指示を出す。
「お主には、なんでもお見通しみたいだな。」
「そんなことはありません。ただ仲間を助けたかっただけです。」
シャシイが出ていくのを見送りながら、王はフッと笑う。
「お主には感謝してもしきれんな。本当に礼を言う。」
こうして、イノチたちのトヌス救出作戦は幕を閉じた。
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