ガチャガチャガチャ 〜職業「システムエンジニア」の僕は、ガチャで集めた仲間とガチャガチャやっていきます〜

noah太郎

文字の大きさ
130 / 290
第三章 ランク戦開催

4話 トヌスの決意

しおりを挟む
トヌスは久々に…
というほどでもないが、馬車から遠目に見える巨大な城都を見て、大きなため息をついた。

『トウト』の街。
自分が殺されそうになった街…しかも、冤罪をかけられて。

本来なら当分来たくなかった街だが、命の恩人であるイノチの頼みは断れないし、他国のプレイヤーが自分たちを狙って、この国にやってくる可能性があるということも看過できる話ではない。


「頭!もうすぐ着きやすぜ!」


馬に乗り、横を走るロドが声をかけてきた。
トヌスはそれに小さく応じると、イノチから預かった書状に目を落とす。

きれいな封蝋が押されたそれは、イノチが『イセ』の商人ギルドマスターに書いてもらったもの。

ジパン国外交庁国政部隊隊長のシャシイに向けられた依頼の文書である。


「あいかわらず、すげぇ奴だぜ…」


トヌスは小さくつぶやいた。





馬車は大きな城門を超え、そのまま城へと向かう。

大通りには多くの人々が行き交い、その喧騒が街を包んでいる。通り沿いにはたくさんの店が軒を連ねており、さまざまな人たちが思い思いに生活しているのが見受けられた。

この世界に来てどれくらいたっただろう。
トヌスはふと思った。

ある時、ヘッドセットが届き、この世界に降り立った。
初めは単なるMMORPGだと思い、単純に楽しんでいたのだが、気づけばこの世界から抜け出せなくなっていた。

その事実を知った時、途方に暮れ、自暴自棄になりかけた。

まさかゲームの中に閉じ込められるなんて…
そんな小説みたいな話があるわけがない…

同行していたプレイヤーが、自分の目の前で光の粒子となって消えたことを思い出す。

それ以降、彼とは会っていない。
ゲームなのに…再び会うことはなかったのだ。

それが指す意味をトヌスが理解するのに、そう時間はかからなかった。

これは夢…悪い夢なんだと自分に何度も言い聞かせた。
部屋にこもり、必死にここから逃げる方法を考えた。

しかし、浮かんできたのは、"死"の一文字だけ。
そして、死ねば目が覚める…死ねば元の世界に戻れるなどと根拠もない考えが頭をよぎった。

心が、辛い現実から逃げようとしたのだ。

飛び降りようと建物の屋上に立つ。
下を見れば、まるで何が手招いているようにみえた。

その手は天使の手…その世界から俺を救い出すために助けに来てくれた天使たちの手だと…

しかし、飛び降りかけた寸前、けたたましい鳴き声に目が覚める。
そして、ある一つの光景が目に入ってきたのだ。

それは、路地裏でゴミを漁る子供の姿。
鳴き声の正体はカラスだった…子供に対して、ナワバリでも主張するかのように大きく鳴き、クチバシで子供をつついている。

小さな彼は、それに負けまいと必死に食べ物を探し、空腹を満たそうとしていたのだ。
まだ7~8歳ほどの少年がゴミを漁る光景は、トヌスの心に大きな衝撃を与えた。

あんなに小さな子供でも、生きることを諦めていない。
それに対して、自分はなんと情けないのだろうか。

たかが元の世界に戻れなくなったくらいで…
何をそんなに嘆いているのか。
戻れる可能性がないわけでもないのに…

トヌスは屋上から降りると、すぐにその子供のもとへと向かった。

カラスを追い払い、大丈夫かと問いかけるトヌスはに対し、彼はその手を払うと、再びゴミを漁り出した。

その目には、お前は信用していないという彼の心が映し出されていたのを今でも覚えている。

元の世界では、子供たちのカウンセリングを行う仕事に就いていたトヌス。

家庭内の問題、いじめ、素行不良など、さまざまな問題を抱える子供たちに向き合ってきた彼にとって、その目はその子たちと同じ…いや、今までで1番闇を抱えた瞳だった。

彼の中で一つの決心が固まる。

彼を…彼らを救いたい。

元の世界で、子供達を守るために奮闘してきたトヌスにとって、純粋なその気持ちは、この世界でも変わることのない彼の信念だったのだ。


「頭!王城が見えてきましたぜ!」


通りの先に見える大きな城。
それを見たロドが、トヌスに声をかける。


「おう。」


ロドを見て、トヌスは小さくうなずいた。
あの時の沈んだ目は、輝きを放つ強い瞳に変わっている。

トヌスは小さく鼻をすすった。





「ようこそ、トヌスさま!そして、皆さまも。」


城に着くとシャシイ自らが出迎えてくれた。
彼によれば、『イセ』のギルドから事前に使者が来ており、今回のトヌスの用事については、ある程度把握しているとのこと。


(さすが商人ギルドのマスターだな…冒険者の方じゃ、こうはいかねぇ。)


そんなことを思いつつ、書状を渡そうとすると、シャシイがここではなんだから言い、応接の間に案内される。

部屋に入り、人数分用意されたイスに各々腰を下ろしたことを確認すると、トヌスが口を開く。


「これが例の依頼状だ。」


トヌスは懐から取り出した書状を、シャシイへと手渡した。


「ふむ…なるほど。」


受け取った書状を読み、シャシイは何かを考えるように、あごに手を置いた。


「…リシアやノルデン、ジプトが我が国を狙っていると。西の玄関口『タカハ』と、ジパンの中央都市であるここ『トウト』の守りを固め、他国からの侵攻に備えよと…そういうことですか。」

「あぁ、そうだ…」

「う~む…」


悩ましげに頭を抱えるシャシイに、トヌスは首を傾げる。


「何をそんなに悩んでいるんだ?簡単なことだろ?軍を配備すりゃぁいい。」


その言葉を聞いたシャシイは、大きくため息をついた。


「簡単とは言いますがね…ご存知のとおり、我が国は戦乱を平定して間もないのです。各都市を安定させ、国を一つにまとめるために多くの施策を行っています。貴方の願いである身寄りのない子供たちを保護するというのもその一つだ。しかし、戦で多くの命が失われた。その弊害は大きいんですよ。」

「なるほどな。要は人手不足ってことか。」

「そんな単純なことではないですが、大きく言えばそうなりますね。」


頭を横に振るシャシイを見ながら、トヌスは考える。
そして、次の質問を投げかけた。


「どんな人材が足りてないんだ?単に兵隊か?指揮する奴か?詳しく教えてくれ。」

「詳しく…ですか。」


シャシイはトヌスを少しだけ見つめる。
そして、彼の目を見て何かを決めたように話を始めた。


「まず最初に足りていないのは…」






「頭…マジで言ってるんですか?」

「あぁ、俺は大マジだぜ。」


ロドは不満げに口を閉ざした。
周りにいるメンバーもどことなく不満げだ。

トヌスだけが一人、満足げにシャシイの帰りを待っている。
すると、ドアが開いてシャシイが入ってきた。


「お待たせしました。王から許可をいただけました。」

「そりゃよかったぜ!なぁ、お前ら!」


トヌスはロドたちへ笑いながらそう言うが、ロドたちは顔を背けた。その様子にシャシイは、まじめな顔で口を開く。


「今回の話、王はたいへん喜ばれておりました。イノチ殿の仲間の皆さまが…ではなく、未来ある若者が国のために先頭に立ってくれる。その事がとても嬉しいと…あなた方はその王の期待に応えていただけるのでしょうか。」


ロドたちは答えない。
見兼ねたトヌスが口を開く。


「お前ら、これはチャンスなんだ。野盗みたいな生活からおさらばして、自分の道を歩むな。それぞれが、それぞれのやるべきことをやれ。いつまでも俺と一緒じゃならねぇんだ。それはずっと言ってきたはずだぜ。」


ロドたちは下を向いている。
彼らもわかっているのだ…しかし、トヌスへ何も返せていない自分たちが許せないのだろう。


「これはイノチのだんなへ恩を返すチャンスでもある。お前らがしっかりやれば、ジパン国は他国からの攻撃に備えるための準備に人手を回せるんだ!しっかりやれよ!」


トヌスはそう言うと立ち上がった。
そして、シャシイに一言「こいつらを頼みます。」と告げると、部屋を後にする。

シャシイはうなずき、トヌスの背中をロドたちとともに見送った。


王城の門を、歩いて通り抜ける。
トヌスはチラリと城に目を向け、再び前を向くと小さくつぶやいた。


「あいつらもこれで独り立ちだ。俺も腹くくらねぇとな。」


そう言って、手に持つ黄金に輝く石を放り投げた。
宙を舞うその石は、夕陽の色に染まっていた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

乙女ゲームの正しい進め方

みおな
恋愛
 乙女ゲームの世界に転生しました。 目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。  私はこの乙女ゲームが大好きでした。 心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。  だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。  彼らには幸せになってもらいたいですから。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

【完結】ドアマットに気付かない系夫の謝罪は死んだ妻には届かない 

堀 和三盆
恋愛
 一年にわたる長期出張から戻ると、愛する妻のシェルタが帰らぬ人になっていた。流行病に罹ったらしく、感染を避けるためにと火葬をされて骨になった妻は墓の下。  信じられなかった。  母を責め使用人を責めて暴れ回って、僕は自らの身に降りかかった突然の不幸を嘆いた。まだ、結婚して3年もたっていないというのに……。  そんな中。僕は遺品の整理中に隠すようにして仕舞われていた妻の日記帳を見つけてしまう。愛する妻が最後に何を考えていたのかを知る手段になるかもしれない。そんな軽い気持ちで日記を開いて戦慄した。  日記には妻がこの家に嫁いでから病に倒れるまでの――母や使用人からの壮絶な嫌がらせの数々が綴られていたのだ。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...