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第三章 ランク戦開催
5話 神の企み
しおりを挟む「ヘルメス、他の動きはどんな感じじゃ?」
カタカタとキーボードに手を走らせるヘルメスに向かって、横からゼウスが話しかける。
「ゼウスさま、ここでは"ウンエイ"とお呼びくださいと言っているではありませんか…」
「おぉ…そうじゃったの!」
「じいさんもここでは"Z"なんだろ?あのコードネームはどこへいったんだよ。」
「そんなことも言っとったな…よし!今からちゃんとしようかの!ロキ、お主は'L"で良いか?」
楽しそうに話すゼウ…いや、Zに対してロキはため息をつくと、「いいよ、それで。」とつぶやいて、Zとは反対のイスに座り込む。
ウンエイを中心に並ぶ三人は、中央にある大きなモニターに目を向けた。
「『ランク戦開催通知』は運営会議後に出しました。それによる各国のプレイヤーの動きはこのような感じです。」
モニターには世界地図が映し出されており、それぞれの国の位置に数字が書き出されている。
「リシア帝国のプレイヤー数は約500。それに対してジプトは300、ノルデンが200。ジパンは100という結果になっています。リシアでの動きはまだありませんが、ジプトとノルデンのプレイヤーは、少しずつジパンへ入っていますね。」
「おおかた、事前の調査といったところかの。」
「だろうね。しかし、ジプトの動きが思ったより鈍いね。なんでだろ。」
ロキの問いに、ウンエイが手を動かすと、ジプトの位置に1枚の写真が現れる。
「先日、ジプトには彼が入りましたので…」
「…あぁ。そうだったね!」
「お主、自分がひいきにしてるプレイヤーの動向くらい、ちゃんと把握しとかんか…」
舌を出して笑うロキにあきれるゼウスは、小さくため息をつく。
「彼がジプトでプレイヤー狩りを始めたことで、大半のプレイヤーの目がそちらに向いているようですね。今、ジプトから来ているのは、全て野良のプレイヤーです。」
「なるほどのぉ。では、ジパン内部の動きはどうじゃ?」
「今のところ、大きな動きはありませんね。強いて言うならば、トウトの街にプレイヤー『トヌス』が、タカハの街にプレイヤー『タケル』と『ミコト』が移動しているくらいでしょうか。」
ウンエイは地図をジパンにしぼり拡大する。
説明のとおり、タケルたちの名前がそれぞれの街のところに表示されているのが見てわかる。
「イノチくんの作戦が動き始めてるみたいだね。タケルっちって、アマちゃんのプレイヤーでしょ?」
「そうですね。アマテラス大神さまが選ばれたプレイヤーです。」
「なら、そのミコトってのとトヌスってのは?」
ロキの質問に答えるものはいない。
少しの間をおいて、Zが口を開く。
「ミコトっちゅう娘は、おそらくイザナギではないかの?あやつ、女の子好きじゃろ?」
「Zさま…それはイザナギさまに失礼では?」
「そうだぜ、じいさん!あいつのイザナミLOVEさを知ってんだろ?」
ロキとウンエイは反論したが、その言葉にゼウスは、意味深な笑みを浮かべるのみである。
首を傾げるロキとウンエイには、それ以上答えずに話を進める。
「では、このトヌス…こやつは誰の推薦かのぉ。」
「それが、調べてみたところ、彼には推薦者がいないようです。」
「推薦者がいない?!そんなことあり得るの?」
「ほう…」
驚くロキと面白そうに笑うゼウス。
「推薦者がいなければ、この世界には来られないんじゃないの?」
「そうなのですが、何かの手違いで彼のもとに『ゴッドギア』が届いてしまったようです…理由は不明です。」
「へぇ~。確かにこいつ、この世界の住人を部下みたいに引き連れてて、変なやつだなとは思ってたけど…まさか生い立ちから謎とはね!」
「…ウンエイよ、彼のこと少し調べてくれんかの。それとな、あとでお主らに会わせたい奴がおるから、その準備も頼む。」
「会わせたい奴?誰だよ…それ!これ以上メンバーを増やすのか?」
ウンエイが頭を下げる横で、ゼウスの突然の言葉にさらに驚くロキ。
そんなロキを見て、ゼウスはニカッと笑う。
「心配するでない!わしらにとってプラスになることじゃからな!フォッフォッフォッ!」
その笑い声を聞きながら、本気で部屋の引っ越しを考えるウンエイなのであった。
・
「アマテラス、イザナミ、行こうか。」
特徴的な美豆良(みずら)と端正な顔立ちの男が、二人の女性に声をかける。
彼の名はイザナギ。
イザナミと共に日本の国土を生み出し、加えて多くの神々を生み出した日本神話最古の男神である。
「行くというのはどちらにですか?」
赤と黄色を基調とした着物をまとい、まさに才色兼備を思わせる顔立ちの女性が、イザナギに問いかけた。
「ゼウスから呼ばれたんだ。話があるらしい。」
「ゼウスさまですか…あのお方はまた良からぬことを考えておありなのでは?」
ゼウスの名を聞いて、訝しげな表情をするイザナミ。
「まぁ、そう言わないで。聞くところによると、どうもバシレイアの話らしいんだ。それなら、思いつくのはひとつしかない。」
イザナギの言葉を聞いて、アマテラスはそれならばという表情を浮かべたが、イザナミはまだ疑っている様子だ。
「イザナミもそう疑わないでさ。話だけでも聞いてみようよ。そもそも、僕とアマテラスの『プレイヤー』は、彼の『プレイヤー』と行動を共にしているらしいしね。」
「…わかりました。あなたがそういうなら…」
その言葉を聞いて、うんうんとうなずくイザナギ。
「なら行こうか。」
そう言って歩き出すイザナギの後ろを、イザナミとアマテラスはゆっくりとついていくのであった。
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