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第三章 ランク戦開催
17話 決着①
しおりを挟む「やっべぇ!やりすぎちまったか?これじゃバラバラどころじゃねぇなぁ!」
砂けむりが徐々に晴れていく中、ハーデは少し焦ったようにつぶやいた。
あんな小さな幼女相手に、思いっきり斧を振り抜いてしまったのだ…跡形もなく消し飛んでいてもおかしくない。
ハーデはそう思い、斧を担ぎ上げた。
まだ舞う砂けむりを片手で払いながら、ハーデは斧を撃ち込んだ場所を…幼女の安否を確認しようとする。
「もったいねぇことしたなぁ…あんな可愛い娘、なかなか手に入らねぇのによぉ。まぁ、やっちまったもんは仕方ねぇか。ガハッ、ガハハハハハ!」
しかし、大きく笑っていたハーデの視界にあるものが映ると、彼の笑みこそ跡形もなく消え去ったのだ。
漆黒の大きな盾。
上からの衝撃に耐えるべく、上向きに構えられたその巨大な盾が、傷ひとつ負わずにそこに佇んでいたのである。
「…あれ?一回だけ?もう終わったのかな♪」
その下から、何事もなかったかのように可愛らしい声が聞こえてくる。
そして、盾をゆっくりと下ろし、笑顔を見せるアレックスが姿を現したのだ。
「おっ…おま…お前…なんで…?」
「おじさん♪おじさんの攻撃って、アレでおしまい?」
ハーデは驚きを隠せなかった。
放ったのは、巨大なトロールでさえ一撃で屠るハーデの一番の大技だ。
ランクが同等のプレイヤーですら、まともに喰らえば致命傷を負うというのに…
この娘は、いなす訳でもなく、単に受け止めたというのだ。
しかも、無傷で。
「お前…今のを喰らって…無事なのか…?」
「…今のを喰らって?あれれ、今のって砂けむりを巻き上げて、視界を悪くするための陽動じゃなかったの?僕はてっきり、次の攻撃が来ると思って待ってたんだけど…めちゃくちゃ軽い攻撃だったから、勘違いしちゃった♪ごめんねぇ♪」
「かっ…軽い…!?」
ハーデはその言葉に驚いたが、すぐに怒りが込み上げてきた。
「てっ…てめぇ…俺様の…!!俺の攻撃が軽いだと!?舐めるんじゃねぇぞぉぉぉ!!」
「うわぁ♪怒ったぁ♪」
持っていた斧を、再び大きく振り上げるハーデ。
そして、そのままそれを、アレックス目掛けて振り下ろした。
ニッコリと笑いながら、アレックスは盾を構える。
アレックスの構える漆黒の盾に斧が当たり、ギィィィィンッと高い金属音が鳴り響いた。
そんなことを気にもぜず、ハーデは太い腕に力を込めて、何度も何度も、漆黒の盾に巨大な斧を叩きつける。
「オラオラオラオラオラァァァァ!!これでもかぁぁぁ!!これでもぉぉぉ軽いかよぉぉぉぉぉ!!」
傷つけられたプライドを隠すように、何度も何度も斧を振るうハーデ。そのうち、額や体のあちこちから汗が噴き出してきた。
それだけ必死に斧を振るハーデだが、漆黒の盾を挟んだ反対側には、涼しい顔をしたアレックスの姿があることを彼は知らない。
「う~ん…こんなもんかぁ。ゲンサイさんの方が重くて強かったなぁ。はぁ~このおじさんも飽きちゃった。気持ち悪いし…もう終わらせよっ♪」
そうつぶやいた彼女は、ハーデが振り上げた斧を振り下ろすタイミングに合わせ、自分の盾を押し上げてぶつけたのである。。
「それぇ♪」
ガキンッ!!!!
「ぐあぁぁぁ!!」
突然の衝撃に、思わず斧から手を離してしまったハーデ。
吹き飛ばされた斧が、遠くに落ちて大きな音を立てる。
(なっ…なんちゅう馬鹿力だ…)
痺れる手を押さえながら、ニコニコと笑う目の前の幼女に驚愕の視線を送っていると、その幼女が口を開いた。
「ねぇ、おじさん♪あっちの剣のお兄さんは、おじさんより強いの?」
「…ん?剣の…?あぁ、副団長のことか…俺よりは確かに強えぇな。」
「そっか♪」
アレックスは、エレナと戦っている赤と黒髪の男を楽しげに見つめている。
彼女は相手の強さについて、見定める癖があった。
その理由はシンプルで、強者と戦いたいと思っているからだ。
可愛いなりをした彼女もまた、『戦闘狂(バトルジャンキー)』だったのである。
ちなみにアレックスは、今まで出会った人物の強さランキングがをつけている。
一位は、ウォタだ。
稽古をつけてもらった時、ウォタの通常状態でのブレスを防ぐことはできたものの、一回受けただけで体力のほとんどを持っていかれてしまったのだ。その上、ウォタの覚醒の話も聞かされてしまい、彼女の中でウォタは晴れて一位を獲得したのだ。
二位は、ゲンサイである。
トウトからの帰りに、一度戦っただけだが、あの一撃の重さは忘れられないものとなった。ウォタのブレスですら、踏ん張り切れたのに、彼は盾ごと自分の体を吹き飛ばしたのだ。
三位以下は、ゼン、フレデリカ、エレナ、タケルと続き、最下位はトヌスである。
ちなみに、イノチが入っていないのには理由が二つ。
一つはBOSSなので。
もう一つは…いろんな意味で『論外』なのである。
アレックスは、ハーデに視線を戻す。
その目は、すでに自分には興味を失っているのだと、ハーデ自身がわかるほど、瞳に冷たいものを宿していた。
「はぁ~あ…ハズレだね♪おじさん、そろそろ終わらせてもいいよね♪」
「…おっ…終わらせる?斧がなくなっても、俺はまだ戦えるぜ!、人を舐めるのも大概に…っ!?」
そこまで口にした瞬間、ハーデはアレックスの盾が黒いオーラをまとい始めたことに気づいた。
「僕は自分から攻撃はしないんだ♪だから、おじさんがここで負けを認めるならそれでお終い♪どうしてもそれが嫌なら、コレ、受けてみてよ♪」
静かに、パチパチと音を立て、盾の周りを黒い電撃が走っている。アレックスはすでに盾の後ろに姿を隠し、来るならどうぞというように待ち構えている。
一瞬、ハーデの頭を敗北の文字が駆け抜ける。
一番の大技を軽々と防がれ、斧すらも簡単に弾かれてしまったのだから、それも無理はないだろう。
しかし、『創血の牙』で支部長を任されている彼にとって、ここでの敗北は降格を意味する。
「…負けを…認める?」
ハーデは小さく笑うと、腰を落として拳をぎゅっと握りしめた。
「確かにお前は強えぇ…だがな、俺にもプライドはあるぜ。」
「あは♪おじさん、急に男前だ♪さっきはロリコンマックスだったのに♪」
アレックスの挑発は、もはや彼の耳には届かなかった。
職業『戦斧』であるハーデは、基本的に斧がないと戦うことはできない。
しかし、彼は斧を拾いには行かず、己の体で戦うことを選択したのである。
彼のプライドがそうさせたのであろう。
「お嬢ちゃん、行くぜ!!」
「どぉ~んと、来い♪」
大きく息を吐き、再び肺いっぱいに空気を吸い込むと、拳を大きく振り上げて、ハーデはアレックスに飛びかかった。
アレックスは、そんなハーデに対し、ニコニコと笑みを浮かべながら盾を構える。
「おぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
叫び、大きな拳を盾めがけて振り抜くハーデ。
その拳が盾に触れた瞬間、バチバチッと音を立て、黒い電撃が辺りに大きく舞い散った。
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