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第三章 ランク戦開催
22話 ガチャの裏技
しおりを挟む「BOSS…彼がきました。」
「やっときたかぁ。はぁ~」
黒いロングコートの女性に声をかけられ、タケルは大きく息を吐くとイスから立ち上がる。
そのまま部屋を出ると、ドアの横で待機していたガージュが後に続いた。
「ガハハハハ!!やっと退屈な時間からおさらばだな!」
「あなたは少し品位を高めたほうがよろしいのでは…?」
隣で歩くサリーに冷ややかな目を向かられるが、ガージュは気にすることなく笑っている。
「サリー、来たのはオサノだけ?」
「はい。他の御方は『イズモ』で仲間を集めてから、来られるそうです。」
「それは助かるな!さすが『孤高の旅団』のメンバーたちだ。頼りになるよ!」
その言葉に嬉しそうにうなずくサリーの横で、ガージュはまだ笑っている。
「じゃ、サリーはミコトを呼んできてくれる?ガージュは一緒に来て。」
その言葉にサリーは軽くうなずいて姿を消した。
・
「よう、タケル!久しぶりだな!」
部屋に入ると、ソファーに座っていた男が声をかけてきた。
体格はガージュ並みにいかつく、袴のような着物を身につけ、口には長ぁーい爪楊枝をくわえている。
片目に傷があるその男は、お茶をゆっくりとすするとその湯呑みを置く。
「やぁ、オサノ!久しぶりだね!元気してた?」
「あぁ、もちろんだ!日々の鍛錬は忘れていないぞ!」
「カカカカカ!さすがはオサノだぜ!相変わらず真面目だなぁ!」
「ガージュも相変わらず豪快だな!!グハハハハ!!」
大きく笑い合っているオサノとガージュをよそに、タケルはオサノの前に座る。
そのタイミングで、サリーに連れられたミコトが部屋に到着した。
「おぉ、ミコト殿!!元気そうで何よりだ!!」
「オサノさん!お久しぶりですね!!イズモの街ではお世話になりました。」
立ち上がってミコトの方を向くオサノ。
丁寧に頭を下げるミコトに対して、その目はどことなく輝いているようだ。
それもそのはず。
『イズモ』で顔を合わせた際に、オサノはミコトの愛らしさに惚れ、恋に落ちたのである。
まぁ、一方的に自分の純愛を向けているだけで、ミコトには一切届いていないが…
「オサノ!本題に入るよ。」
顔を赤くするオサノに、ニヤッとしながら声をかけるタケル。
オサノは名残惜しそうに咳払いをすると、イスへ腰を下ろす。ミコトもタケルの横に座るが、それを見たオサノが悔しそうな顔を浮かべる。
「オサノってさ、見かけによらず小心者なんだよな!知ってた?ミコト!」
「え…?そうなんですか?とても強いのに…?」
「なっ…!タケル、何を突然に!!」
突然のタケルの言葉に、オサノは再び顔を赤くして声を荒げた。
それに大笑いしながら、タケルが話を始める。
「ハハハ…ごめんごめん。冗談だって!さぁ、さっさと本題を済まそう。」
「むう…」
恥ずかしそうに声を小さくするオサノ。
ニヤニヤしながら、タケルは話を進めていく。
「まずはこれからのこと。メッセージにも書いたけど、昨日この街で一番でかいクランのリーダーに会ってきたんだ。」
オサノは無言でうなずいた。
「ランク戦の話を踏まえて、一時的に手を組まないかと提案したんだけどね…結果は惨敗さ。」
タケルは肩をすくめた。
「理由はなんだって?」
「単純明快…組む理由がないんだと。他のクランの奴らなんか自分たちで迎え撃てるから、僕らと組む必要はない。余計なお世話だと言われたよ。」
「しかしまぁ、そいつの言うことも確かではあるな。知らなければ、別に他国のプレイヤーが脅威とは思わん…」
「そっ!オサノの言うとおりなんだよね。みんな、他国のプレイヤーの怖さを知らないんだ。」
「どうするかだな…」
腕を組んで悩んだ様子のオサノ。
二人の様子を見て、ミコトが疑問を投げかける。
「二人は他国のプレイヤーの強さを知ってるんだね。」
「…ん?そっかそっか!ミコトにはまだ話してなかったっけ。僕らのクランはさ、一時期いろんな国を歩き渡っていたんだ!」
「国を出て…旅をしていたの?」
「…まぁ、理由はいろいろあるんだけどね。」
目を泳がせて困ったように笑うタケル。
イノチはこの世界の真実をミコトに伝えた時、タケルが最愛の人を失った話は伝えていない。
それは、イノチなりの配慮だった。
言いにくそうに頬を掻くタケルの代わりに、オサノが口を開く。
「ミコト殿はこの世界から逃れる術を知っているな?」
「はっ…はい。『キーモンスター』と呼ばれるユニークモンスターを倒して女神の像を手に入れること。そうすれば、元の世界に帰れる…」
「そうだ。しかし、ユニークモンスターは世界中に点在していてな。この国にいるだけでは倒すことはできない。だから、そいつらを探す旅をしていたと言うわけだ。」
タケルはオサノへ感謝の視線を向けた。
オサノも目で応えながら、話を続ける。
「その時に何度か他国のプレイヤーと戦うことがあった。突然襲われたこともあったし、決闘を申し込まれたこともあったな。」
「でも、皆さんは勝てたんですよね。」
「もちろん。負けていたらここにはいないからな。」
オサノは湯呑みを手に取り、口へと運んだ。
そして、「このお茶、うまいな。」と呟きながら、湯呑みを置くと続きを話し始める。
「しかしな…奴らははっきり言って強かった。ほとんどのやつが『SR』以上の装備を持っていたからな。ギリギリの戦いも何度もあった…」
「ほっ…ほとんどが『SR』装備って…あれって、そんなに簡単に集められるものなんですか?!」
「ミコトの疑問の通りさ!普通はなかなか集めきれないよ。」
驚くミコトに、タケルが少し真面目な顔で応える。
「彼らは『黄金石』にゴールドを注ぎ込みまくっている、言わば"廃課金者"って奴らだ。それに加えてある裏技も使っている…」
「裏技…?」
タケルは一呼吸おく。
小さく息を吐き、ミコトに視線を向ける。
対するミコトは、タケルの真面目な顔を見て息を飲んだ。
「それはね、『キャラクター』の還元さ。」
「キャッ…キャラクターの還元?それって一体どういうことですか?」
「簡単なことさ。そこにいるサリーやガージュたちを強制的に死に追いやるんだ。携帯端末にそのボタンがあるよ。」
タケルの言葉に、ミコトは驚いた様子で携帯端末を取り出す。そして、タケルに言われた通りにアイコンをタップしていった。
「これ…ですか。」
「それそれ!『キャラ一覧』の右下にある『還元』ってボタン。それを押すと、キャラクターは全て"あるアイテム"に還元されるんだ。」
「あるアイテム…?それって…」
「『希少石』って言って、SR以上が確定するアイテムだよ。」
「SR以上が確定……でもですよ!還元された皆さんはいったいどうなるんですか!?」
うつむくタケルに変わり、オサノがそれに応える。
「どうなるかはわからん。だが、消えてしまうことは間違いない。だから、俺たちはそれを『キャラクターの死』と呼んでいる。」
「死…ぬ…」
「あぁ、そうだ。ここはゲームとは違うからな。ガチャ魔法で手に入れたキャラクターにも命はある。それはミコト殿も知っているだろう。」
「そんな…そんなこと…そんなことって!!」
ミコトは怒りと悲しみに声を荒げた。
しかし、オサノは冷静にそれに応える。
「ミコト殿の気持ちもわかる。だが、他国ではそれが現実であり、それゆえにジパン国のプレイヤーよりも確実に強いんだ。」
「そんなの…ひどいです。うぅ…」
「そう思うよ…だからこそ、そんな奴らをこの国にのさばらせるわけにはいかないんだ。」
タケルの言葉に、ミコトは涙を拭う。
「…そうだね!絶対に防がなきゃ!!でも、どうやって…みんなを一致団結させるの?」
「それについては、考えがあるんだ。」
「ほう。さすがタケルだな。では、うちのクランリーダーの策とやらを聞こうではないか。」
オサノの言葉にタケルは大きくうなずくと、ニヤリと笑って立ち上がった。
「タカハのユニークモンスターの討伐だ!!」
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