ガチャガチャガチャ 〜職業「システムエンジニア」の僕は、ガチャで集めた仲間とガチャガチャやっていきます〜

noah太郎

文字の大きさ
156 / 290
第三章 ランク戦開催

29話 ラビリスの神獣

しおりを挟む

「飽きたわ…!」


エレナが唐突につぶやいた。


「確かに…ですわ。」

「本当だよぉ♪ずぅっと歩いてるだけだと嫌になるねぇ♪」


フレデリカとアレックスも我慢の限界のようで、エレナの言葉に賛同する。

イノチたちが『ラビリスの大空洞』に潜って数時間が経ったが、今のところユニークモンスターに出会う気配はまったくない。

それどころか、ネズミ1匹たりとて出会う気配はなかった。

イノチもハンドコントローラーでマップに索敵機能を加え、警戒しながら進んでいたのだが、生き物の影すら映ることはなく、最初の1時間でやめてしまっていた。

今は反応があればアラートがなるようにして、自動で索敵を行わせている。


「確かに生き物がまったくいないんだよな。こんなことってあるのか?今までのダンジョンでも、虫くらいはいたけど…」


ものを聞くならフレデリカと言うように、イノチはフレデリカに視線を向けたが、彼女も首を横に振る。


「この大空洞は一応自然にできたものらしいので、虫1匹いないなんて考えにくいのですわ。何が特別な理由があるのかもしれませんわね。」

「なんでもいいんだけどさ…せめてザコキャラくらい出てきて欲しいわよ、ねっ!!」


エレナはそう言うと、足元にあった石ころを思いっきり蹴飛ばした。

大きく弧を描いて飛んでいく石ころ。
それが最後にたどり着いたのは、広い通路に転がる大きな岩の影だった。


「イテッ!!誰だミノ!?石なんか蹴って危ないミノ!」


鈍い音の後に、聞き慣れないおかしな声が聞こえてくる。
明らかに語尾がおかしいその声は、石をぶつけられて怒っているようだ。


「なっ…なんかいるわよ…」

「だっ…だな。」


イノチたちが戸惑いながら様子を伺っていると、岩の影から声の主が姿を現した。


「お前たちかミノ!」


その姿を見て、イノチはさらに驚いた。

頭に大きな角が二つに二本足で立ち、鼻には金色の輪っかを携えていて、筋肉質な体とそれを覆う頑強な鎧。

蹄のように見える手には巨大な斧を持っているが、その太い腕なら簡単に振り回せそうだった。

しかし、一番驚いたのはその顔だ。


「うっ…牛男!?」

「誰が牛男だミノ!!石をぶつけたり、悪口言ったりと失礼なやつだミノ!!!」


イノチの言葉に鼻息を荒くする牛男。
頭から湯気を立て、プンスカと手足をジタバタさせている。


「あれって…亜人か?」

「アジン…?なにそれ?」


イノチの言葉に首を傾げるエレナの横で、フレデリカが口を開く。


「BOSSが言っているのは亜人族のことです?それならば違いますわ。亜人族は確かに人間とは種族が違いますが、見た目はほとんど一緒ですわ。この私が良い例です。」

「そう言えばフレデリカはドラゴニュートだったね。なるほど…ならあれはモンスターということか…」

「おそらくは…しかし、あまり脅威を感じないのは気のせいですの?」


離れた場所で地団駄を踏んでいる牛男を見ながら、フレデリカは肩をすくめる。


「お前ら!さっきから何ごちゃごちゃ言ってるミノ!?俺さまが神獣のミノタさまだとわかってるミノか!?!」


憤慨している牛男の言葉に、イノチは少し驚いた。


「おっ…おいおい…あいつ、自分のこと神獣って言ってるぞ。てことは、あいつが『ユニークモンスター』ってことか?!」

「真偽はわかりませんが…そっ…そうなのでしょう。」

「あれが…?拍子抜けだわ…」

「でもさでもさ♪ちょっと可愛いよね♪ミノミノ言ってるし♪」


少し驚いたイノチとフレデリカ。
横ではエレナが肩を落とし、アレックスが嬉しいそうに頬を赤らめている。


「お前らぁー!馬鹿にしているのがなんとなくわかるミノ!!許さないミノ!!!おりゃぁぁぁぁぁ!!」


そんなイノチたちに怒り浸透のミノタは、斧を片手で振り上げると思い切り投げつけてきた。


「おわっ!あいつ、斧投げてきたぞ!!」

「はぁ…とりあえずよけましょう。」


そう言うと、エレナはイノチをつかんで斧の軌道から飛び退ける。フレデリカとアレックスもとりあえずはそれに合わせて飛んでくる斧を回避した。

グルグルと弧を描いて勢いよく飛んでくる斧は、イノチたちがいた場所を通り過ぎると、まるでフライングディスクのようにミノタの元へと戻っていく。


「すばしっこい奴らだミノ!!」


そう言ってミノタが手を上げると、そこに引き寄せられるように斧が飛んでくる。

彼はそのまま、いとも簡単に回転していた大きな斧をキャッチすると、今度は突進してきたのである。


「それなら直接ぶっ潰すまでミノ!!」


体格はそこまで大きくないが、質量を感じさせる地響きを立てて、斧を振り上げて突進してくるミノタ。


「アレックス、よろしく。」

「はいよぉ♪BOSSぅ♪」


冷静に指示するイノチ。
ミノタに対して、漆黒の盾を構えたアレックスが前に出た。


「チビがぁぁぁ!!叩き潰すミノォォォォ!!!」

「あは♪きてきてぇ♪」


ミノタは目の前に現れた小さな少女に、彼女が構えている盾に向けて腕に力を込めて振り下ろす。

金属と金属がぶつかり合い、火花が散って大きな音がこだました。

衝撃波で砂ほこりが舞い上がり、アレックスの足が地面にめり込んで亀裂が走る。


「あはは♪中の上ってとこかなぁ♪」


しかし、アレックスの様子に驚いたのはミノタである。
普通の人間ならこの一撃で跡形もなくなるほどの力を込めたはずなのに、目の前の少女はそれを簡単に受け止め、笑いながら平然としているのだ。


「おっ…お前なんなんだミノ!!??」

「ねぇ♪♪♪これで終わり?♪♪♪もっとないのぉ♪♪♪」

「…ぐっ!?」


ミノタはその少女の表情を見て、一瞬背筋に冷たいものを感じた。

アレックスの顔に浮かぶ愉悦の表情は、ミノタに恐怖を感じさせたのだ。


「あれさ…始まってるよな?」

「えぇ…始まってますわ。」


イノチは大きくため息をついた。
アレックスはああなってしまうと手がつけられないからだ。

一度ウォタと手合わせした時もそうだった。
ウォタの攻撃を受けることに愉悦を感じ、歯止めが効かなくなったのだ。

受けることに楽しさを感じた瞬間、彼女の中で何かのリミッターが外れる。

それが『戦闘狂(バトルジャンキー)三姉妹』の三女、アレックスの本来の姿であった。


「もっともっとぉ♪♪♪キャハハハハ♪♪♪」

「こいつ、なんなんだミノ!?キモいミノ!!」

「気持ち悪いとかひどいなぁ♪♪♪君の攻撃はいい感じに気持ちがいいよぉ♪♪♪」


何度も斧を叩きつけるミノタに対して、アレックスは楽しげな声を上げる。


「…あれはどうしたらいい?俺はどうするべきだろうか。」


あきれたようにこぼすイノチの肩を、エレナとフレデリカがポンっと叩いてこう告げた。


「「放っておきましょう。」」





「ハァハァ…いったいなんなんだミノ。こいつ…いくら叩いてもびくとも…」


さすがに疲れたのか、呼吸を荒くするミノタに向かって、アレックスが盾の端から顔を出す。


「ねぇ…もう終わりなのかなぁ…」

「…くっ!!」


目をうるうるとさせて覗き込むアレックスを見て、ミノタの中に再び怒りの炎が燃え上がった。


「もう怒ったミノ!!うがぁぁぁぁぁぁぁ!!」


そう叫んだミノタの体に変化が現れる。


「もしかして…♪これって…♪ワクワクドキドキ♪」


アレックスが期待を胸に見守る最中、ミノタの体は巨大化していく。


「こっ…これは予想外じゃね!?」

「でも、リュカオーンだって体は大きかったですわ。」

「そうよ、BOSS。驚くことではないわ。」

「そっ…そういうもんなのか…?」


なぜか一人認識違いを気づかされて途方に暮れているイノチをよそに、ミノタの体は元の何十倍にも大きくなっていった。

そして、高く広い通路いっぱいに体を膨らませ、大きく叫び声を上げた。


「これならどうだぁぁぁぁぁ!!うがぁぁぁぁ!!!」
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

乙女ゲームの正しい進め方

みおな
恋愛
 乙女ゲームの世界に転生しました。 目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。  私はこの乙女ゲームが大好きでした。 心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。  だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。  彼らには幸せになってもらいたいですから。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

【完結】ドアマットに気付かない系夫の謝罪は死んだ妻には届かない 

堀 和三盆
恋愛
 一年にわたる長期出張から戻ると、愛する妻のシェルタが帰らぬ人になっていた。流行病に罹ったらしく、感染を避けるためにと火葬をされて骨になった妻は墓の下。  信じられなかった。  母を責め使用人を責めて暴れ回って、僕は自らの身に降りかかった突然の不幸を嘆いた。まだ、結婚して3年もたっていないというのに……。  そんな中。僕は遺品の整理中に隠すようにして仕舞われていた妻の日記帳を見つけてしまう。愛する妻が最後に何を考えていたのかを知る手段になるかもしれない。そんな軽い気持ちで日記を開いて戦慄した。  日記には妻がこの家に嫁いでから病に倒れるまでの――母や使用人からの壮絶な嫌がらせの数々が綴られていたのだ。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...