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第三章 ランク戦開催
31話 スキル…
しおりを挟む「お前ら!ミノタが世話になったようだな!ミノタ、あいつらでいいんだよな!?」
「そうだミノ!」
馬男がビシッと指差して声を張り上げ、その横でミノタが鼻息を荒くする。
馬男の顔には不敵な笑みが浮かんでいて、どこか自信気である。
「ほう…なかなか美人揃いじゃねぇか。こりゃ、楽しめそうだぜ!」
「ケッ…ケンちゃん!俺はあのちっちゃいのが良いミノ!」
「相変わらずだな!ミノタは!」
こちらを舐め回すように見る二人だが、イノチたちに焦った様子はなかった。
「今度は馬男か…」
「あれもユニークモンスターなのかしら?」
「まぁそうでしょう。馬の方は牛より強そうですわ。」
「うわぁ~♪お馬さんだね♪かっくいいなぁ♪」
「…くっ!てめぇら、なんかバカにしてねぇか?」
雰囲気を感じ取り、イラ立ち始める馬男。
それを見てイノチたちは「馬だけにお上手なことで。」とか「もう一人が鹿じゃなくて残念ね。」などと言って笑い合っている。
「やっぱりバカにしてやがる!!」
「そっ…そうだミノ!!俺もあぁやってバカにされたミノ!!」
「くそぉ…!わかったぜ!!お前ら、許さねぇからな!!」
馬男はそう叫ぶと背中の弓を取り上げ、腰元から矢を手に取ると、ものすごい速い動作で矢を放ってきたのだ。
音を切り裂いて飛んでくる矢。
それはイノチ目掛けて、一直線に飛んできたのだが…
「こんなもの、なんともないですわ。」
フレデリカがいとも簡単にその矢を手で掴み取ってしまった。
「なっ!?」
目の前で起きたことに驚きを隠せない馬男。
しかし、矢を握り折るフレデリカに唖然とするも、すぐに気を取り直して前足を高く突き上げて駆け出したのである。
「なっ…なかなかやるようだなぁ!!だが、俺のスピードにはついてこれまい!!」
円を描いてイノチたちの周りをグルグルと走る馬男。
そのスピードがどんどん速くなっていき、そのうち彼の姿は見えなくなり静寂が訪れた。
「さすがケンちゃんミノ!!誰もその速さにはついてこられないミノよ!!」
離れたところでミノタが嬉しそうに手を突き上げている。
「確かに速いわね…」
「これは…予想外ですわ。」
「目っ…目が回っちゃったよ…♪」
「俺は全く見えません。」
そんなことを言いつつも、どこか余裕のあるイノチたち。
(こっ…こいつら!舐めてやがるなぁ!!ムカつくぜ!とりあえずはあの男からだな!!)
馬男はそう考えて一気に距離を詰めると、イノチの後ろに突如として姿を現した。
横にいるエレナもフレデリカも、自分には気づいていない。
それもそのはず。
今まで誰一人として彼のスピードについて来れたものはいないのだから。
「死ねぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
笑みを浮かべながら、鋭い爪をイノチに向けて走らせる馬男であったが、彼にとって予想外のことが起きた。
「それが最大スピードですの?」
フレデリカがこちらを向いていて、いつの間にか自分の手を掴んでいるのだ。
「はぁっ!?なっ…なんで!?」
そう思ったのも束の間、鋭い拳が顔めがけて飛んできた。
しかし、馬男は焦りつつも自由な方の腕でそれを防御する。
「あら…!」
「ぐあぁっ!!」
鈍い音と小さな悲鳴が上がり、馬男は4本の足で地面を抉りながら吹き飛ばされ、少し離れたところで止まる。
「今のを防ぐとは…少しは期待できそうですわ。」
(なっ…なんなんだよ、こいつらは!?普通の人間じゃねぇ…!)
馬男は、拳をパキパキと鳴らして自分の方を向くフレデリカを呆然として見つめていたが、他のメンバーたちは離れた位置に移動していて、フレデリカと二人きりになっていることに気づく。
「ケンちゃん!大丈夫ミノ!?」
「あぁ!!もっ…問題ない!!」
遠くで心配そうにしているミノタに手を上げて答えていると、フレデリカが疑問を投げかけてくる。
「さっきからケンちゃんケンちゃんって呼ばれてますけど、あなたたち名前があるんですの?」
「なっ…名前?もちろん…あるに決まってんじゃねぇか!」
「ふ~ん。なら、聞いておこうかしら。これから殴り飛ばす奴の名前を、ですわ。」
腕を組んで偉そうにそう告げるフレデリカにイラッとしつつ、馬男は声を張り上げて名乗りを上げた。
「調子に乗りやがって!!おっ…驚くんじゃねぇぞ!俺はラビリスの守り人ケンタウロスだ!!そして、あいつは…」
「同じくミノタウロスだミノ!!」
「ケンタウロスのケンちゃんに、ミノタウロスのミノタ…ククク…」
二人の名乗りに対して笑いを堪えるフレデリカ。
それを見たケンタウロスは怒り心頭に声を張り上げた。
「やっぱりバカにしてやがる!!お前らは絶対に許さねぇ!!!」
ケンタウロスはそう言うと、フレデリカめがけて駆け出したのだった。
・
イノチは目の前で繰り広げられる攻防に驚きを隠せなかった。
現在イノチのランクは『103』だ。
これによりエレナ、フレデリカ、アレックスの能力向上は大幅に進んでいて、彼女らはいくつかの新しいスキルも習得している。
仮に今の状態でリュカオーンと対峙したとしても、エレナだけで圧倒できるとまでイノチは考えていた。
あれだけ苦労して倒したリュカオーンを、一人で赤子扱いできると。
ならば、エレナよりレアリティの高いフレデリカがケンタウロスと戦えば、勝負の行方は歴然ですぐに終わるとさえ思っていた。
しかし、結果は違った。
戦況はフレデリカに傾いているが決定打に欠ける…そんな状態が長く続いていたのだ。
ケンタウロスのスピードは速く、弓を使うことから中長距離での戦いが得意かと思っていたが、実際はそうではない。
彼は近距離でも戦えるほどの体術を併せ持っていて、ヒットアンドアウェイスタイルでの戦いを得意としているようだ。
遠距離から矢や魔法を放ち、フレデリカの足が止まったところでスピードを活かして距離を詰める。
そして、鋭いパンチを数発放ったかと思えば、また離れていく。
そんなケンタウロスのスタイルに、フレデリカは少し翻弄されているようだった。
フレデリカ自体、そのスピードについていけていない訳ではないのだ。
現に今も相手の虚をついて一気に懐まで潜り込んでいる。
「げげっ!!」
「ケンちゃん、あぶないミノ!!」
ケンタウロスとミノタが焦りを見せる中、彼女は魔法をまとわせた拳を腰元に構えると、ケンタウロスの胸めがけて放った。
しかし…
「甘いぜぇ!!」
フレデリカが繰り出した拳は、ケンタウロスに当たる前で障壁に阻まれてしまう。
決定打に欠けるのはこの障壁の性で、フレデリカはこれを突破できずにいた。
「さすがケンちゃんだミノ!!」
喜ぶミノタを尻目に、面倒くさそうに拳をぷらぷらと振っているフレデリカを見ながら、イノチはつぶやく。
「あれってさ、リュカオーンの時と同じ障壁だよな?」
「そうね…あれは確かに硬いから苦戦するのもわかるけど…しかし、まどろっこしいわね。」
「フレデリカさん…大丈夫かなぁ♪」
心配するイノチとアレックスとは違い、エレナは勝負を決めきれないフレデリカを見てイラ立っているようだった。
腕を組んでギラついた目で戦いを見つめながら、つま先を小刻みに鳴らしている。
そんなエレナの心を読んだようにフレデリカが大きくため息を吐き出した。
「やっぱり硬いですわ…それ。でも、さっさと終わらせないと口うるさい奴がいるのです。なので、そろそろ本気でいきます、ですわ。」
「本気…だと?強がりを言いやがって!!」
その言葉に高笑いするケンタウロス。
しかし、フレデリカは気にすることもなく、肩にかかった桃色の髪を手で払い上げると、小さくつぶやいた。
「スキル…竜化(ドラゴン)…」
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