164 / 290
第三章 ランク戦開催
37話 恥は承知がモットーです
しおりを挟む「この街を救うですと?それはいったい…」
突然の言葉に戸惑うボア。
無理もないだろう。
いきなり街を守ろうと言われても、その理由がわからないのだ。
トヌスもそれは理解しているからこそ説明を続ける。
「会長さんはキンシャという人物に覚えはあるかい?」
「キンシャ…あのオオクラと一緒にいた者だな?覚えている。ここにもよく来ていたからな…そこの馬鹿者と一緒に。」
ギロリと睨みを効かせるボアにヘスネビはさらに小さくなる。
しかし、トヌスはそれには構わず話を続ける。
「そいつがジプトから送り込まれた間者…いわばスパイってやつだったことも知ってたかい?」
「スッ…スパイですと…!?」
「そうだ。先日の俺の公開処刑の件については、ジプト法国が一枚噛んでいて、ホニン国王の失脚を狙っていたと考えている。」
「そっ…そんなまさか!」
驚いて立ち上がるボアに落ち着くようにトヌスは声をかける。
「俺が得た情報では、ジプトだけでなくリシアとノルデンもこの国を我が物にしようと企んでやがる。現にタカハにはノルデンの差し金も入り込んでいるようだからな。」
トヌスはそう言うとソファへ背中を預けた。
タカハでタケルたちを襲った人物について、当初調べてみたが正体は分からなかった。
しかし、トヌスは先日会ったイザムからその情報を聞き出していたのだ。
彼女が言うには、各国の情勢は以下の通りだ。
リシアでは現国王の生誕祭が近づいている。
それに合わせて国内の軍の動きが活発になっていて、まるで遠征でもするかのような量の人と物資が集められている。
生誕祭には各国の外交官も呼ばれるため、おそらくはそこで宣戦布告をし、ジパンへ乗り込んでくるのだろうと。
ジプトでは同じような動きがあったが、今現在『霧雨の悪魔』と呼ばれる殺人鬼が多くの街で暗躍しており、そちらに国の意識が向きつつある。
そのため、ジパン国内にいるジプトのプレイヤーたちは、本国と連絡がつかず身動きが取れない。
ノルデンについてはわかっていることが少ないらしい。
敢えて言うならば、同じようにスパイを送り込んできていること。ただし首都トウトではなく、別の都市にだと言う。
その理由はわからないが、イザム曰く、タケルたちを襲ったのはノルデンの者で間違いはないらしい。
それらの中から、トヌスは渡していい情報だけを選んでボアに伝えていく。
「…と言った感じだ。このままだとこの国は周りの国のどっかに乗っ取られちまう。俺たちはそれを防ぐために動いてるんだが…なにせ、この国は戦乱を終えて間もない。圧倒的に人手が足りないんだよ。」
「国には…これらのことは伝えたのか?」
「そういう状況だということは伝えてる。それに俺の部下たちは国軍に引き取ってもらった。各都市の人手不足を解消させるためにな。」
「…そうか。しかし、君がここに来たということはまだまだ足りないということか。そういえば、君を救った彼らはどこに?」
ボアの問いにトヌスは身を乗り出して答える。
「うちのBOSSはリシアに行ってるぜ。ジプトにも仲間がな。ノルデンに行くのは情報も人手も足りなくて諦めたが…」
「なんと…!リシアにか。それは心強いことだが危険ではないのか?」
「まぁ、それも承知の上さ。この世界じゃリシアが1番厄介だからな。それを何とか出来そうなのはBOSSしかいないしよ。」
ボアは納得したようにうなずいた。
「しかし、それらのことから考えれば、あとはノルデンということか…君は我々には具体的に何を求めているのだ?」
「まぁそう簡単にいってくれればいいんだが…俺の願いは単純さ、人脈と人手がほしい。」
ボアはトヌスの目を見る。
真っ直ぐとした瞳には、決意すら感じさせる強さがある。
しかし、ボアには疑問があった。
「一つ疑問なんだが…君はなぜそこまでするんだ?」
「ん?」
「助かったとはいえ、この国は君を殺そうとしたんだぞ。私だってそれには一つ噛んでいたと言ってもいいほどだ…なのになぜ…」
「理由か…そんな大したものはねぇさ。」
トヌスはそう言って小さく笑う。
「確かに俺はこの国に殺されかけた。商会にもだいぶ世話になったな。こいつにもたくさん殴られたし…」
その言葉を聞いてヘスネビはもう見えなくなりそうなほど小さくなっている。
「だけどよ、自分がいる国が他の国に乗っ取られるのを黙って見ておくほど嫌いにはなってねぇ。ただそんだけさ。」
(またその目か…)
ボアは先ほどと同じようにトヌスの瞳の奥にある強さの光の見ていた。
そして同時に、その光の正体が知りたいとも思った。
彼を突き動かすものがいったい何なのか。
彼に対する罪悪感からではなく、トヌスという男の寛容さに興味を惹かれたのである。
「人脈と人手か…」
小さくつぶやくボア。
「最善を尽くしたい。リシアもジプトもノルデンも、全ての国が攻撃を仕掛けてくると考えて準備しておきたいんだ。」
「わかった。できる限り協力しよう。まずは国王へ直接打診する。私が言えば少しは信じてくれるだろう。それからトウトとタカハの軍の増強だな。」
「そのことについてなんだけどよ…俺が依頼した手前こんなこと聞くのもなんだが、どうやって人を集めるんだ?」
「…なんだ?君は私の人脈を頼ってきたんだろ?その範囲を知っているものと思っていたが…」
「いや、すまんが知らない。教えてもらってもいいか?」
それを聞いた途端、ボアは大きく笑い出した。
「ハハハハハハッ!まさか知らずに依頼に来たのか!ますます気に入った!君は面白いやつだな!!」
「…すまねぇな。俺は恥は承知がモットーだからよ。」
「気にするな!君はジパンは島国だということを知っているか?」
「あぁ、それは知ってるぜ。」
ボアはその言葉にうなずきながら、テーブルに大きな地図を開く。
「これはこの国の領土を記した地図だ。見てわかるようにジパンの周りには多くの島が存在していて、その全てがジパンの領土だ。これら一つ一つにはだいたい2,000人程度の人々が住んでいる。」
ボアはそれらの島を赤い筆で記していく。
それらはまるで、ジパンを取り囲むように無数に存在していた。
「こんなにあるのか…」
「多いだろう?」
ボアは自慢げな表情を浮かべている。
「だが、これ全部から人をかき集めるのは一苦労じゃないか?」
「それはそうだ。海を渡るのは簡単ではないからな。陸路の移動もあるから、主要な都市に人を集めるとしたら、期限ギリギリと言ったところか…」
「それじゃあ意味がない。寄せ集めで勝てるような相手でもないだろ?」
トヌスは残念そうに首を横に振った。
しかし、ボアは笑みを浮かべて話を続ける。
「主要な都市に集まるならば…と言っただろ?そんなことはしないさ。彼らには彼らの得意な戦い方があるしな。」
「どういうことだ…?」
ボアは小さな船の模型を取り出してきて、地図の上に並べ始める。
そして、楽しげにこう告げた。
「海戦だよ。彼らは船での戦いに長けているんだ。だから、その力を借りてこうするのさ。」
ボアは船の模型を数カ所にまとめ上げていく。
「リシアからの航路がここ。ジプトからはここだな。ノルデンはここと…ここか。」
「なるほどな…要は海の上に船の防壁を作るってわけか。」
「上陸できなきゃ、奴らも何もできんだろう?」
腕を組んで自慢げに鼻を鳴らすボア。
トヌスは感服したとばかりに息をつくと、再びソファに背を預けた。
「助かるよ。これでなんとかなりそうだ。」
「気にするな。あとは各国の動きを常に探っておきたいところだが…」
「それは俺に任せてくれ。BOSSや仲間と連絡する手段は整ってるからな。」
ボアはそれを聞くと「完璧だ。」とうなずいた。
「それじゃ、細かいことを決めてすぐに動き出そう。少し待っていてくれ。副会長たちを呼んでくる。」
そう告げて部屋を出ていくボアを見送りながら、トヌスはもう一つある懸念について考えていた。
(あとは…この国のプレイヤーたちをどうするか、だな。)
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる