165 / 290
第三章 ランク戦開催
38話 神にもわからぬことはある
しおりを挟む「イザナミ!!どうだったかい?」
声をかけられ、イザナミが振り返るとイザナギの姿が見える。駆け寄ってくる彼を待って、少し不満げに口を開いた。
「どうだったも何も…なぜ私があんな小汚い男の推薦者などにならなければならないのです。」
「その様子だと、無事に会えたみたいだね。」
笑いかけてくるイザナギを見て、鼻を鳴らすイザナミ。
「会えましたし、『例の物』も渡しましたよ。」
「そうかい。それはよかったよかった。彼、使ったのかい?」
「まだ…みたいですね。」
イザナミの顔に複雑な表情が浮かぶ。
どうやら彼女にとっては予想外の行動だったようだ。
イザナギはそれを見てフフッ笑う。
「まぁ、機が来たら使うだろう。その時が楽しみだね。ところで"Z"が呼んでるんだ。今すぐ集まれだってさ。」
「その呼び名やめませんか?いまいちわかりにくいのですよ…」
「でも、意外と気に入ってるんじゃないの?"IZM(イザム)"だっけ?」
イザナミはそれを聞くともっと嫌そうな顔をした。
「センスがないのですよ。ネーミングに…!」
「ハハハハ…でも、皆の頭文字から取ってるだけだからセンスも何もないさ。」
「もう少しひねりとか考えないのですかね。しかもなぜか私だけ3文字だし…」
イザナミは頬を膨らまして不満を態度で表した。
彼らが話しているのはゼウスが決めたコードネームのこと。
ゼウスは『Z』、ロキは『L』、アマテラスは『A』、イザナギは『I』というように、みな名前の頭文字からそれを決めているが、イザナミはイザナギと頭文字が被るという理由で彼女は『IZM』と命名されたのだ。
確かにイザナギとは一文字しか違わないから仕方ないかもしれない。名前のおしりから取って『G』や『M』というのもわかりにくい。
笑っているイザナギを見て、イザナミはあきれたように小さくため息をついた。
「もういいです…で、ゼウスさまたちはどこにいらっしゃるのですか?」
「ダメだよ、IZM。『Z』って呼ばなきゃあのじいさん怒るんだからさ。そこはよろしくね。で、今日は『世界の間』で話し合いだってさ。」
「ほんと面倒くさい…しかし、『世界の間』では人目も多くあるのでは?良いのでしょうか、そんなところで話し合いだなんて。」
「それは心配いらないって。あそこには個室があるらしいんだ。」
「…個室?ありましたかね、そんなの。」
「僕も初めて知ったよ。まぁ、あそこはZの管轄だからね。ある意味あのじいさんはVIPなんだろうね。」
肩をすくめるイザナギ。
それを見てイザナミは頭を抱えると、再び大きくため息をついた。
・
「みんな、揃っとるかのぉ?」
大きな体を揺らして、ゼウスが部屋に入ってきた。
他のメンバーは中央に並べられたイスに座り、テーブルを挟んで向き合っている。
「遅ぇよ、じいさん。自分から呼び出しておいて!」
「すまんすまん。ハデスやポセイドンたちに呼び出されてな。少々話すのに時間を食った。」
「げっ!感づかれた?」
ロキのその言葉に、ゼウスは首を横に振った。
「ハデスの奴は自分の眷属がやられたから、それに文句を言ってきおっただけじゃった。」
「ハデスさまの眷属とは…?」
イザナミが疑問を投げかけると、ゼウスは肩をすくめてイスに腰掛ける。
「リュカオーンじゃよ。この前、わしの推薦者が倒したんじゃがそのことに腹を立てとるらしい。」
「それはわらわの推薦者も一緒に倒した、あのユニークモンスターのことですね。」
アマテラスの言葉に、ゼウスが大きくうなずいた。
「あやつ、ズルしておったようだの。」
「ズル…?いったいどんなことしてたんだ?」
「ユニークモンスターに付与する『絶対防御』の耐久力の数値をこそっと上げとったみたいじゃな。」
「きったね!でもまぁ、あの人のやりそうなことだよな!」
「じゃな。しかし、わしの推薦者がそれを凌駕したもんだから難癖つけてきおっての。普通の設定ならランクが低くとも時間をかければ倒せなくはないことを指摘してやったら、黙って帰っていったわ!」
大きく笑っているゼウスの横では、『ウンエイ』ことヘルメスが乾いた笑いを浮かべていた。
(あなたも大概ズルされてますけどね…)
しかし、何かを感じ取ったゼウスが視線を向けてくる。
それに気づいてヘルメスは我関せずと言ったような態度で、再びキーボードに手を走らせ始める。
そこでイザナギが口を開いた。
「ポセイドンさまはどんなご用事だったのです?」
「ポセイドンの奴は…よくわからん。」
再び肩をすくめるゼウスに対して、ロキが声を大きくする。
「なんだよ…よくわからんって。」
「わからんものはわからんのじゃ。ハデスと話し終えてここに向かおうとしたら突然呼び止められてな…だが何を言うでもなく、ただニカッと笑ってどっか行きおったわ。」
「…それってさ…気づかれてるんじゃないの?」
「そうかもしれんな…しかし、まぁ気にすることはないじゃろ。」
ひげを触りながらゼウスはイスにもたれかかる。
大きな巨体を必死に支えるようにギシギシッと音が鳴った。
「ひとまずポセイドンのことは置いておいて、とりあえずは今日の議題について説明しようかの。」
ゼウスがそう告げると、ヘルメスがうなずいてキーボードに指を走らせる。
すると、スクリーンが現れて一人の人物が映し出された。
「これは?」
ロキの言葉にゼウスが答える。
他のメンバーもゼウスの口から出てくる答えを待つ。
しかし…
「わからん。」
その言葉に思わず全員がずっこけた。
1番ずっこけたロキは、テーブルにぶつけた額をさすりながらゼウスを見る。
「おっ…おいおい勘弁してくれよ、じいさん!まさか本当にボケちまったのか?!」
「そうですよ、ゼウスさま。こんな時にご冗談などおやめください。」
ロキとイザナギが声を上げる中、ゼウスはもたれていたイスから体を起こして、真剣な表情を浮かべていた。
「わしはボケとらんし、ふざけてなどおらんよ。今回の議題はこやつの正体について、なのじゃ。」
テーブルに両肘をつき、顔の前で手を組んで真面目な表情をメンバーに向けるゼウス。
その場に緊張感が走る中、ゼウスが再び口を開いた。
「こやつは先日タカハに現れて、アマちゃんとこのタケルっちを襲ったんじゃが…その時、イザナギのとこのミコッちゃんもおっただろ?覚えとるか?」
「あぁ、あの時の…確かに持っているレイピアはあの時と同じものですね。得体の知れない奴ではありましたが…と言うことは、こいつはプレイヤーではなかったということですか?」
「プレイヤーでないし、我々神側の者でもなさそうじゃ。現時点では本当に何者なのかわからんのじゃよ。」
「そっ…そんなことあり得るのか?俺ら神すらも正体がわからないなんて…。」
ゼウスはロキのその言葉に目をつむった。
「…ひとつだけ考えられることがある。」
皆はゼウスのその言葉に耳を傾ける。
ヘルメスがキーボードを打つ音だけが響き、画面ではそのレイピア使いの画像が拡大され、レイピアの柄部分が大きく映し出された。
「この紋様じゃ。」
ゼウスの見据える先には、レイピアの柄部分に彫られたある模様が映る。
するとそれを見たロキが驚いた顔でつぶやいた。
「これって…ガイアの紋様じゃないか?」
「ガイアって言うと…始まりの神のことか?」
「確かに似てますわ。これは大地の…山の紋様ですし…」
「そうですね。ガイアは地母神で大地の象徴と呼ばれていた方ですし…しかしこれは…」
アマテラスの疑問をゼウスが代わりに言葉にする。
「さよう…似て非なるものじゃな。」
一同は理解に欠けると言ったようにゼウスを見ている。
それに対して、ゼウスは皆を見回しながらこう告げた。
「こやつが何者かはわからん。この紋様もガイアのものなのかもわからん。わからないことずくめの人物が、なぜかタカハに現れて我らの推薦者を狙ってきたのか。これをどう考えようか。それが今日の議題じゃ。」
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
乙女ゲームの正しい進め方
みおな
恋愛
乙女ゲームの世界に転生しました。
目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。
私はこの乙女ゲームが大好きでした。
心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。
だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。
彼らには幸せになってもらいたいですから。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
【完結】ドアマットに気付かない系夫の謝罪は死んだ妻には届かない
堀 和三盆
恋愛
一年にわたる長期出張から戻ると、愛する妻のシェルタが帰らぬ人になっていた。流行病に罹ったらしく、感染を避けるためにと火葬をされて骨になった妻は墓の下。
信じられなかった。
母を責め使用人を責めて暴れ回って、僕は自らの身に降りかかった突然の不幸を嘆いた。まだ、結婚して3年もたっていないというのに……。
そんな中。僕は遺品の整理中に隠すようにして仕舞われていた妻の日記帳を見つけてしまう。愛する妻が最後に何を考えていたのかを知る手段になるかもしれない。そんな軽い気持ちで日記を開いて戦慄した。
日記には妻がこの家に嫁いでから病に倒れるまでの――母や使用人からの壮絶な嫌がらせの数々が綴られていたのだ。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる