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第三章 ランク戦開催
62話 黒幕参戦
しおりを挟む「アシナさん!」
倒れ込んだアシナの元へタケルは急いで駆け寄った。
大きな爆風を受けたのか、体はすり傷だらけだ。
「う…ぅ…」
意識はあるようで、タケルはそれを見て安心する。
そして、すぐさまシェリーを呼びつけた。
「シェリー!頼む!」
「はいはい!任せてちょうだい!ラブリィヒィィィル!!」
駆け寄ってきたシェリーが魔法を唱えると、ピンク色の輝きがアシナを包み込み、その傷を癒していく。
痛みから解放されていくアシナの顔を見て、再びホッとしたタケルは周りに目を向けた。
荷馬車はバラバラに壊され、その周りには怪我をしてうめき声をあげる酒蔵の従業員たちが数名倒れている。
「なっ…なにがあったんだ…みんな!酒蔵の人たちの保護を!」
その言葉にソウタたちクランメンバーはすぐに反応した。
散り散りに広がると、従業員たちを安全な場所へと移動させていく彼らを見て、ミコトも手伝おうと駆け出したその時だった。
「ヒヒヒッ!すっげぇ吹っ飛んだなぁ…やっぱ人は脆くていけねぇや。加減が難しい…。」
どこからともなく悪戯な笑い声が聞こえてきたのだ。
その声の主を探そうと、ミコトやタケルたちがキョロキョロとあたりを見回していると、上空から再び声が聞こえてくる。
「ここだよ、こぉこ!!」
その声につられて見上げれば、黒いロングコートに身を包み、フードを被った男が宙に浮かんで笑っている姿があった。
「お前…何者だ!!なぜこんなことを!!」
タケルが怒りの矛先を向けると、男は笑うのをやめて口を開いた。
ミコトやクランメンバーたちも男を注視し、睨みつけている。
「そんなに大勢で見つめられたら恥ずかしいじゃん!」
「はぐらかすな!なんの理由があってこんなことをするんだ!!」
舌を出して再び笑う男の言動にさらに怒りが込み上げてきたタケルは、腰元の鞘から刀を抜き放って男に切先を向けた。
「おうおう…物騒なこった。」
「理由によっては斬るぞ!」
「まぁ、そんな怒るなよ。」
男はそう言いながらゆっくりと下へ降りてきた。
そして、地面へと降り立つと再び口を開く。
「ちょっと欲しいものがあってな…それを拝借しにきただけだよ。」
「欲しいもの…だと?それはなんだ…?」
「なんだと思う?」
男がそう口元で悪戯な笑みを浮かべた瞬間、タケルは男に斬りかかっていた。
男の左肩から袈裟斬りに真っ二つに…
したはずだったが、その刀は空を切る。
「おいおい、いきなり斬りつけるなよな。お前、意外と短気だなぁ…」
いつのまにかタケルの後ろに回り込んでいる男を見て、タケルも、ミコトや他のメンバーたちも驚きを隠せずにいる。
その場にいる全員が同じことを思っていたのだ。
男の動きが見えなかった…と。
タケルは嫌な汗が背中を伝っていくのを感じた。
男はアシナを治療するシェリーに目を向けた。
が、特に気にすることもなく話を続ける。
「お前らさ…作れたんだろ?あの酒をよ…」
「…酒…?なんのことだ。」
タケルの言葉に男は吹き出して笑う。
「ヒヒヒッ!ダメだなぁ嘘は。俺は最初から知ってるんだ。お前らが『八塩折酒』を作ってることを…そして、完成させていることもな!」
「…何でお前がそんなこと知っているんだ。」
タケルはあくまで冷静さを装って問う。
その問いに男はさらに笑みを深めた。
「なんでって…そりゃ、俺があの若造に作り方を教えたからに決まってんだろ!」
「…やはりか。」
大笑いする男を見て、タケルは悔しさと再び込み上げてくる怒りで歯を鳴らした。
「ということは、あいつがイシナさんをたぶらかし、タケルを利用して八岐大蛇を呼び起こした張本人ってことか?」
オサノの言葉にソウタがうなずく。
「おそらくそういうことだね。」
「でも、何で今さらここを襲うんだよ。」
「僕らが作った『八塩折酒』が欲しいからだろうけど…」
首を傾げるカヅチの横で、ソウタが男を見据えながらそうつぶやく。
「理由はなんだ?」
「わからない…八岐大蛇の復活の阻止、とか?」
「じゃあ、何で作らせたんだよ。」
「確かにそうだな…ていうか、カヅチ…僕に聞かれてもわかるわけないだろ!」
しつこく質問してくるカヅチに対して、ソウタがあきれているとミコトがふとつぶやいた。
「『八岐大蛇』を自分たちの手で復活させてタカハの街を滅ぼす…」
その言葉に、ソウタ、カヅチ、オサノたちはハッとする。
考えれば簡単にわかることだ。
奴は酒を欲しい理由は飲むためでも何でもない。
八岐大蛇を復活させる気なのだ。
そして、その目的は、北の村と同様にタカハの街を滅ぼすこと。
「あの女の子は鋭いな。というか、普通に考えたらわかるよね。」
「お前の狙いは何なんだ…前回といい、八岐大蛇を復活させてどうする気なんだよ!」
「それは何でタカハを滅ぼそうとしているのかを聞きたいってことで良いかな?」
タケルの言葉に男はまだ笑っている。
ジッと睨みつけるタケルをどう見ているのか。
その真意はフードで隠されたままだが、男はゆっくりと口を開いた。
「いいよ…教えてあげるよ。僕らの目的はね、タカハのプレイヤーの殲滅なのさ。」
「なっ!?殲滅?!」
その言葉にタケルに続き、ソウタたちも驚きの表情を浮かべた。
「いいね!その表情!嫌いじゃないよ!ヒヒヒッ!」
「なぜ…そんなことを…」
「なぜって…もうすぐランク戦が始まるからに決まってるだろ!君の仲間もジプトで同じことをやってじゃないか!」
「…うっ。」
笑いながらそう告げる男の前で立つタケルの頭に、ゲンサイとウォタたちのことがよぎった。
しかし同時に、タケルの中に一つの疑問が浮かび上がる。
ーーーなぜ奴が、ジプトの件と自分たちが関係していると知っているのか
ゲンサイたちがジプトで暗躍していたことはわかっても、なぜそれが自分たちの仲間だとわかったのか。
タケルは浮かび上がった一つの疑問を男へ投げかけた。
「…お前、プレイヤー…か?」
口元だけニヤリと笑い、男はそれに返す。
「お前の刀…今回もそうだが、あのときの剣戟もなかなかのものだったよ。」
「あのとき…?」
「そうさ!ラーメンの替え玉…うまかったかい?」
「…!?」
タケルとミコトはその言葉に驚いた。
同時に、あのとき屋台でラーメンを食べた帰りに襲ってきたレイピア使いのことが頭に浮かぶ。
男はそれに合わせたように、何もないところからレイピアを発現させた。
「これ、見覚えあるだろ?ヒヒッ!」
「そのレイピアはあのときの…!?お前、いったい…」
タケルはそうこぼし、さらに問いかけようとした。
しかし、耳元で小さく音が鳴ると、男はタケルを静止するようにを手に持つレイピアの切先をタケルへと向ける。
そして、誰かと話し始めたのだ。
「へいへ~い。あぁ、今一つは…あん?蔵の中?あ~そういうことな。リョ~カイ!」
ヘラヘラと返事をして通話を終了すると、男は面倒くさそうにしながら伸びをし始めた。
「くぅぅぅぅ…さてと。少し長く話し過ぎたな…そろそろ話はおしまいにしよう。俺ももう一つ仕事ができちまったしな。」
「もう一つの仕事…だと?」
警戒するタケルは刀を男に向けたまま問いかける。
「そうなんだよ!今の通話の相手は人使いが荒くてよぉ…って、こんなん聞かれたらまたピーピー言われるな。てことでさ、お前らが持ってる『八塩折酒』を全部よこしな!」
フードの男はそう告げると、口元に楽し気な笑みを浮かべ、レイピアを構える。
そのフードの中では、片目が赤く輝きを放っていた。
「みんな!油断するな!!来るぞ!!」
「ちょっとくらいは楽しませてくれよぉ!!」
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