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第三章 ランク戦開催
65話 うちなる想い
しおりを挟むフクオウから連絡を受けたタケルたち一行。
急いでタカハの街へと戻ると、フクオウらクランSCRの拠点でもあるギルド総館へと向かう。
そして、ギルド総館の一室には一同が顔を合わせる。
「タケル!いったいどういうことだ!?お主ら、例の酒を作っておったであろうが…!何があったかちゃんと説明せよ!」
目の前に座るフクオウは、イラ立ちからテーブルに拳を叩きつけた。
フクオウの後ろにはクランSCRの幹部メンバーたちが立ち並び、タケルたちを睨むように見つめている。
それに相対するように、座るタケルの後ろにもミコトやソウタたちが並んでいる。
「落ち着いてくれ。今からことの顛末を簡潔に説明するから、みんなよく聞いてほしい。」
タケルの言葉に腕を組み、鼻息を荒くするフクオウは不満げにうなずいた。
・
・
・
「…ということがあったんだ。ここから先は推測だけど、おそらく酒を奪ったその二人が、北の祠に酒を奉納したんだと思う。」
「話はわかった。しかしだな、タケルよ。イベント開催はまだ少し先だぞ?今供えても『八岐大蛇』は出現せんはずであろう。そやつらはいったい…」
「…」
フクオウの言葉にタケルは腕を組む。
彼の言うとおり、イベント『朔夜の八頭龍』の開催時期はランク戦が始まる少し前のはずであり、現時点で北の祠に酒を供えても条件は満たせず、八岐大蛇は出現しない。
しかし…
手元の端末では、『八岐大蛇』出現までのカウントダウンがすでに始まっている。
『6:43:29』『:28』『:27』…
この刻々と進んでいくカウントが冗談ではないことを、タケルは知っている。
約6時間半後に『八岐大蛇』が出現するのは間違いないのだ。
なぜならば、"彼ら自身"がそう言ったのだから。
「これはあくまで推測だけど…」
敢えて推測と付け加えるタケル。
その言葉に対して、部屋に集まっている一同は耳を傾けた。
自分を見据えるSCRの幹部連中を見ながら、タケルはゆっくりと口を開く。
「その二人組は…おそらくこのゲームの運営側の者だと思う。」
その言葉にフクオウは目を見開いた。
後ろにいるSCRの幹部たちも響めきを隠せずにいる。
「運営だと…?どういうことだ。なぜ運営がそのようなことをするんだ。」
「それは僕にもわからない。しかし、あれは尋常じゃないよ。何をされたのかもわからないまま、僕らは一瞬でやられちゃったからね。まさにチートだよ。僕は『孤高の旅団』は決して弱い方じゃないと思ってるんだ。だけど、それを一人で制圧するなんて…そんなプレイヤーいるかな?」
「確かにな…お主らの強さは我らもよく知っているからこそ、そやつらが運営の者だということは一つの可能性として理解しよう。しかしだな…いったいどうやって『八岐大蛇』を…」
「運営なんだから、システムをいじるくらい簡単だろ?」
ソファにもたれながらそうつぶやくタケルに対して、フクオウは納得いかない様子だ。
「それはそうだが…あくまで推測であろう。それが事実でもやはり理解できない。自分たちでイベント開催通知を出しているのに、何故それを…ルールを破るようなことを運営が…」
「さっきも言ったが、その理由は僕にもわからないよ。だけど、目的なら彼らから直接聞いたから知ってるよ。」
「目的を直接…で、その目的とは何なのだ。」
フクオウは早く言えというように顔を近づけてきた。
それに対して、タケルは小さくため息をつく。
「タカハのプレイヤー殲滅…だってさ。」
「なっ!」
飄々と告げるタケルに唖然とするフクオウと幹部メンバーたち。
しかし、驚いていたフクオウはすぐに我に帰ると、タケルに対して声を荒げて問いかける。
「どっ…どういうことだ!!プレイヤーの殲滅だと!?いったい何でそんなことを!!なぜ我々が運営から狙われるのだ!」
「理由はわからないって言っただろ。奴らがそう言ってただけなんだから。だけど、現に『八岐大蛇』が復活しようとしてるんだから、嘘でも冗談でもないんだろうね。」
「訳がわからん!!」
フクオウは再びテーブルに拳を打ちつけた。
動揺を隠せない幹部たちも、互いにあれやこれやと推測を言い合っている。
フクオウも言葉が見つからずに、何かを考えるように下をジッと見つめていた。
それを見兼ねたタケルがフクオウに声をかけようとしたが、ミコトがそれを遮るように口を開いた。
「フクオウさん、聞いてもらえますか?」
突然の言葉に、タケルもソウタたちも驚いたようにミコトへと視線を移した。
フクオウや幹部たちも、同様にミコトへとその視線を向けている。
ミコトはそれを確認して小さく息を吐くと、強い眼差しを向けてフクオウたちへ話し始めた。
「正直、彼らの正体は今の時点ではわかりません。ですが、『八岐大蛇』の件、これはランク戦開催を前に他国が仕掛けてきた策略だと、私たちは考えています。」
ミコトのその言葉に、フクオウはため息をついて肩をすくめた。
「他国の策略?なんの冗談なのだ。わざわざそんなことをして何になると…」
「冗談ではありません。」
ミコトの強い口調に遮られ、フクオウは驚いた表情を浮かべた。
フクオウの言葉にうなずいていたSCRの幹部たちも、ミコトの言葉には驚いた様子だ。
しかし、そんなことはお構いなしにミコトは話を続ける。
「彼らはこう言ってました。『プレイヤーの殲滅の目的はランク戦が始まるからだ』って。だからこれは、ランク戦を有利に運ぶために行われていることなんです。」
「そうかもしれんが…しかし、それだけでは他国の策略という話には結びつけるにはいささか無理があるだろう。ランク戦の基本はプレイヤー同士の戦いであって国は関係ないはずであるし…」
フクオウの言葉に後ろの幹部たちももっともだと首を縦に振っている。
しかし、ミコトは言葉を止めない。
「その通り、ランク戦はプレイヤー同士の戦いの場が基本です。ですが、我々はリシア帝国に潜入している仲間からある報告を受けています。」
「リシア帝国に…潜入?いったいどんな話なのだ。」
フクオウは興味深そうにミコトの言葉に耳を傾けた。
「仲間の報告では、リシアのプレイヤーたちが帝国と結託してジパンに攻め入ろうとしていると…そう報告を受けています。ジプト法国も同様です。ノルデンには人員不足で行けませんでしたが…おそらくは同じことを考えている可能性が高いんです。」
「リシア帝国だけでなく、ジプト法国もノルデンもであるか…しかし、仮にそれが本当だとしても解せぬな。理由は何なのだ?全ての国にジパンを攻め落とすメリットがあるというのか?」
その問いにミコトはうなずいた。
「どの国もジパンを手中に納めることができれば、貿易の面や戦略の面で他国より優位に立てるからです。ジパンはそういう地理的な優位性を持つ国なんです。」
「…なるほど、そういうことか。おい、地図を持ってこい。」
フクオウの指示対し、部下の一人がすぐに地図を持ってきて目の前のテーブルへ広げていく。
「確かに言われてみれば、ジパンは世界の中心になっておるのだな。この国を手に入れれば貿易どころか覇道の足掛かりになるというわけだな。」
地図を見ながらうなずくフクオウは、再びミコトに目を向ける。
「ではなぜ、運営と思われる人物が他国の手助けをしているのか。これについてはどう説明する?」
ミコトはフクオウの問いかけに対し、少し間をおく。
自分たちも…正確にはイノチがだが、運営側の人物と接触していることについて正直に言うべきかどうか。
そのことについて少し悩んだからだ。
しかし、タケルはそんなミコトの気持ちを察したのか、ふと視線が合うとニコリと笑みを浮かべたのだ、
ミコトはそれを見て決意を固める。
「理由は簡単です。私たちも運営側の人物と会ったことがあるからです。」
ミコトのその言葉は、フクオウを黙らせるのには十分であった。
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