ガチャガチャガチャ 〜職業「システムエンジニア」の僕は、ガチャで集めた仲間とガチャガチャやっていきます〜

noah太郎

文字の大きさ
195 / 290
第三章 ランク戦開催

68話 本気を見せるから

しおりを挟む

「あと30分でレイド開始だね。」


タケルがそう言うと、ミコトは静かにうなずいた。

周りでは、タケルのクラン『孤高の猟団』メンバーたちや、タカハ最大のクランである『Spicy cod roe』、通称SCRのメンバーたち、そして、タカハの冒険者ギルドに所属する冒険者たちが、これから始まる戦いの準備をギリギリまで行なっている。

すでに陽は傾き始め、辺りには夕陽が差し込んできており、時折吹き抜ける肌寒い風が、皆の不安を逆立てるように撫でながら駆け抜けていく。

そして、橙が染め上げる原っぱの真ん中に、件の祠が風の音とともに静かに佇んでいた。


「酒の準備は…どんな感じだ?」


祠を見つめる二人に対して、そう後ろから声をかけるのはSCRのリーダーであるフクオウだった。


「順調…とは言い難いね。」

「そうか…現時点でどれくらい出来ているのだ?」

「…出来上がっているのは樽3つ分だね。」

「3つ分…果たして本当に効くのだろうか。」

「正直言って、わからない…かな。」


タケルはフクオウに視線を向けることなくそうつぶやく。
フクオウもその言葉に返すことはない。

三人の間には無言が訪れた。

しかし、しばらくしてそれを破ったのはミコトだった。


「たぶん大丈夫だよ…」


ミコトの言葉に、タケルとフクオウが視線を向けた。
ミコトはなおも祠を見据えながら話し続ける。


「イノチくんが言ってたんだ。あのウォタさんにも弱点があったって。」


タケルは驚き、フクオウは首を傾げた。


「ミコト殿、そのウォタという者は…」


疑問を投げかけてくるフクオウに対して、ミコトは説明を付け加える。


「ウォタさんはイノチくんが仲間にした神獣なんだけど…一応この世界では最強の存在なんだって。そんなウォタさんでも弱点があったってイノチくんが笑ってたんだ…」

「神獣を仲間に…?にわかには信じ難い話ではあるが…」


信じられないといった様子のフクオウをよそに、ミコトはゆっくりと前に数歩進んでくるりと振り返る。


「だから大丈夫!『八岐大蛇』にだって必ず弱点はあるよ!フクオウさんもタケルくんもそう思うでしょ?」


フクオウはその笑顔に少したじろいでいた。
夕陽に相まって笑顔を向けるミコトはどこか神秘的にも感じる。

フクオウはそれに目を奪われたのだろう。

だが、タケルは愛らしさの中にあるミコトの不安を感じ取っていた。


「ま…まぁ、やってみねばわからぬからな。しかし、失敗も許されないのは事実。お互い、死力を尽くし合おう。」


フクオウは頭をかきつつ、その場を後にする。
その背中を見送ったタケルは、ミコトにとある疑問を投げかけた。


「そう言えばさ、ずっと疑問だったんだけど…」

「どうしたの?」


風になびく髪を指で耳にかけながら、ミコトはタケルへと視線を向ける。


「ゼンさんは…どうしてるの?姿を全く見ないんだけど…」


その言葉にミコトの表情か少し曇る。
だが、言いにくそうにしながらもミコトは静かに口を開いた。


「本当はもっと早くに言えば良かったんだけど…」

「何か…あったの…?」


ミコトは首を横に振る。


「何かあったというか…実はゼンちゃん、タカハに来る前から閉じこもっちゃってるんだよね。この事は他人には言うなって念を押されてたし、タケルくんにもゼンちゃんは然るべきところでって言われたから…」

「閉じこもる?だ…大丈夫なの?」

「うん…強くなるために必要なことだって、何かあれば呼べって言われてたんだけど…」


少し悩ましげな表情を浮かべるミコト。
それを訝しく思ったタケルは、さらに問いかける。


「…けど?もしかして、何か問題が発生している?」


ミコトはその言葉に小さくうなずくだけ。


「ミコト…話してくれ。ゼンさんの戦力は今回かなり重要なんだ。そのゼンさんに何かあったとなると、戦略を見直さないといけなくなる。」


タケルの真面目な顔に気圧されて、ミコトは事情を説明し始めた。


「う…うん。タカハに来て以来、私もゼンちゃんに気を遣って声をかけなかったの。だけど、今日のこともあるからそろそろ説明しておこうと思って、昨日声をかけてみたんだけど…」

「まさか…」

「うん…返事が…ないんだよね。」


その瞬間、タケルの心に焦りが浮かぶ。

誰が考えてもわかるように、ゼンがいないというのはかなりの痛手だからだ。

元々、ミコトとタカハに行くことになった時から、ゼンの戦力を勘定して『八岐大蛇』討伐の作戦を考えてきた。

ウォタより劣るとはいえ、それでも神獣。
戦力的にタケルたちの中で頂点に立つ存在。

それがいないとなると…

突然、無言になったタケルを心配してミコトが声をかける。


「タケルくん…?」


ミコトの声は、タケルの頭の中をぐるぐると回っていた。


ゼンがいない…
戦力の配置、戦略の見直しが必要だ…

だが間に合うか…?
レイド開始まであと30分もない…

タカハと祠の間に配置した防衛ラインからもっと人員を…

いや、あそこにいるのはほとんど冒険者たちだ。
この世界の住人たちを死地に来させるわけにはいかない。

どうする…どうする…どうする…


「タケルくん…?」

「ちょっと黙っていてくれ!!」


突然タケルが声を荒げ、それにミコトは驚いた。
タケルはすぐにハッとして気づき、ミコトに謝罪する。


「ご…ごめん!」


目の前ではミコトが怯えた顔でタケルを見ている。


(何をしているんだ…僕は!全然冷静じゃない!!)


切り替えるように頭を振り、改めてミコトに向き直るタケル。


「ごめん。ゼンさんにはかなり期待しているところがあったんだ。なにせ、竜種だしね…彼がいないと聞いて焦ってしまった。ミコト、ごめんね。」

「ううん…」


ミコトも頭を横に振ってタケルを見る。


「私がもっと早くいっておけばよかったんだよ。ゼンちゃんに気を遣ってしまって言えなかった私も悪い。でも、どうしよう…タケルくんの作戦に穴が空いちゃったよね…?」

「そ…それは…」


間違いなくそれは事実だ。
ゼン抜きでの作戦を考えなくてはならない。

しかし、あの八岐大蛇をゼン抜きで倒せる自信が、今のタケルにはなかった。

黙り込むタケルに対して、ミコトもどう声をかければわからず下を向いた。


「お二人さん。」


そんな二人に突然声がかけられる。

見れば、ソウタたちクランメンバーが集まっていた。
彼らは笑みを浮かべていて、これから始まるレイドにも臆していない様子だ。


「みんな…どうしたんだい?」


タケルの言葉にソウタが笑う。


「あれれ?君ってそんなにビビりだったっけ?僕らのリーダーはもっとこう…いつも飄々としていて掴みどころがなくて、自信に溢れていたと思うんだけど?」

「確かにな…我らのリーダーはどんなレイドにも臆することはなかったはずだ。」

「だね。あたしらのリーダーは一度負けても、最後の最後まで勝つために行動する男だったね。」


ソウタに続いて、オサノ、カヅチが鼓舞するように告げる。

そして…


「そうよ、タケル。」


そうつぶやきながら、最後にシェリーが一歩前に出た。


「あなたはあたしたちのクラン『孤高の旅団』のリーダーでしょ。そんな顔は似合わないわ…」


ニコリと笑ってシェリーは続ける。


「あたしたちはどんな時も生き延びてきた。それは今回も一緒…じゃなきゃ、死んだ仲間に顔向けできない。そうでしょう…タケル。きなこはあんたがここで死ぬ事を望まない。」


その言葉を聞いたタケルは下を向き、眼を閉じた。

死んでいった仲間たちの顔が浮かぶ。
その中に一人、橙色の髪をした可愛らしい少女がいる。

その少女はニコリと笑うと、こうつぶやいた。


ーーー私の分まで…ちゃんと生きてね…


死ぬ間際に彼女がタケルに残した言葉だ。

タケルは目を開くと、顔を上げて仲間へと視線を向ける。
ソウタ、オサノ、カヅチ、シェリーと順番に見渡せば、彼らはタケルに笑顔を向けている。

タケルは最後にミコトヘ顔を向けた。
そして、一人不安げにする少女に向かって言葉を向ける。


「ミコト…ゼンさんのことは気にしないで。ここからはクラン『孤高の旅団』の本気を見せるから。」


タケルはそういうと背中に垂れていた自分のフードを被り、顔を隠す。

そして、口元に不適な笑みを浮かべたのだった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

乙女ゲームの正しい進め方

みおな
恋愛
 乙女ゲームの世界に転生しました。 目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。  私はこの乙女ゲームが大好きでした。 心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。  だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。  彼らには幸せになってもらいたいですから。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

【完結】ドアマットに気付かない系夫の謝罪は死んだ妻には届かない 

堀 和三盆
恋愛
 一年にわたる長期出張から戻ると、愛する妻のシェルタが帰らぬ人になっていた。流行病に罹ったらしく、感染を避けるためにと火葬をされて骨になった妻は墓の下。  信じられなかった。  母を責め使用人を責めて暴れ回って、僕は自らの身に降りかかった突然の不幸を嘆いた。まだ、結婚して3年もたっていないというのに……。  そんな中。僕は遺品の整理中に隠すようにして仕舞われていた妻の日記帳を見つけてしまう。愛する妻が最後に何を考えていたのかを知る手段になるかもしれない。そんな軽い気持ちで日記を開いて戦慄した。  日記には妻がこの家に嫁いでから病に倒れるまでの――母や使用人からの壮絶な嫌がらせの数々が綴られていたのだ。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...