ガチャガチャガチャ 〜職業「システムエンジニア」の僕は、ガチャで集めた仲間とガチャガチャやっていきます〜

noah太郎

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第三章 ランク戦開催

72話 説得と根拠

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《ならば、次の段階だなぁ…》


八岐大蛇はそう不敵に笑うと、赤い双眸を光らせた。


「みんな、気をつけろ!何かくるぞ!!」


タケルの声に一同は身構える。

ゆらゆらと動く八つの頭全ての瞳が赤く輝くその様は、レイドボスらしく脅威と殺気に満ちていた。

次の瞬間、頭の一つが大きく息を吸い込んだ。


「ブレスだ!!回避の準備!」


タケルが大きく指示を出す。
しかし、次の八岐大蛇の行動を見たメンバーたちは驚きを隠せなかった。

その隣の頭とまた、大きく息を吸い込み始めたからだ。


「おいおい…ブレスは頭一つずつじゃなかったのか?」


オサノがあきれたようにつぶやくが、八岐大蛇の行動はそれで終わらない。

今度は三つめの頭が大きく息を吸い始め、計三つの頭がブレスのモーションを取り始めたのである。


「三つ目!?くそっ!前回とは行動パターンが全然違う!」


後方にいるミコトがブレスの軌道上にいないことを確認すると、タケルは回避行動をとりながら皆に向かって大きく叫んだ。


「みんな、回避に専念するんだ!あれは喰らえばヤバい!」


しかし、その言葉の直後、ゴウッという音が重なり轟き合い、三方向へ巨大なブレスが放たれた。

間近で感じるそれはかなりの高温で、地面を削り、木々を薙ぎ払い、周りの草木を燃やして全てを吹き飛ばしていく。

音を切り裂き、空気をも燃やし尽くし、ブレスが通り過ぎた後には焦げた匂いと白く揺らめく煙だけが残っていた。

そうして、ブレスを放ち終えた八岐大蛇の頭たちは、ゆっくりと口を閉じると他の五つの頭の元へと戻っていく。

高く飛び上がることで辛うじてブレスを避けたタケルは、着地するとすぐさま仲間の安否を確認した。

オサノ、ソウタ、カヅチ、シェリー、ガージュ。

とりあえずはみんな無事にブレスを回避できたようで、それぞれ八岐大蛇から距離をとって体勢を整えている。

ミコトも無事だ。

そのことにホッと胸を撫で下ろしていると、八岐大蛇が再び口を開いた。


《今のをかわすとは大したもんだぜ。前回は一本でも苦戦していたのにな!ガハハハハハハ!》

「お前…前回は力を隠してたのか?」


タケルの問いかけに八岐大蛇は笑う。


《正直言うとよぉ、前回は本来の10分の1程度しか力を出せてなかったんだ。酒が足りなくてなぁ…ハハハ。だが今回はたらふく飲ませてもらってるからなぁ。今のは挨拶がわりだぜ!》


その言葉を聞いたタケルは、顔には出さないが自分の計算不足を悔いていた。

酒の量で八岐大蛇が強くなるなど考えてもいなかった。
レイドの説明にあった、『酒の量で活動時間が長くなる』という事だけを鵜呑みにしてしまったのは自分の落ち度である。

しかしながら、今さら反省しても既に遅い。
八岐大蛇は強くなって復活してしまったのだから。

やはり、自分たちに出来ることはただ一つしかない。

今までの言動からこいつが酒好きなことは再確認できた。
ならば、無理に飲ませなくてもうまく誘導すれば…


「僕はね…お前を倒したいんだ。」


静かに話し始めたタケルの言葉に、八岐大蛇は興味があるのか、面白そうに耳を傾けた。


(せいぜい油断していろ…)


そう思いながらタケルは言葉を続ける。


「お前に煮え湯を飲まされた前回から、死んだ北の村人たちのことが頭から離れない。罪悪感と後悔に心を押し潰されそうなんだ。」

《たいそうなこった。だが自分が招いたことだろう?俺は"レイド用"に生まれた神獣だ。復活したらやることは蹂躙以外ねぇからな。だから俺は何にも悪くねぇ。あれはお前が原因だ。クククク…》

「そんなことは百も承知さ…だから、お前を倒して楽になりたいんだ。」

《フン…人間てのは本当に自分勝手だぜ。俺を倒したところで村の奴らは戻らねぇ。それはお前のオナニーじゃねぇか!》


馬鹿にしたように大きく笑う八岐大蛇。

奴の言うとおりだとタケルは歯を食いしばるが、すぐに冷静さを取り戻す。


「お前の言う通りさ…だからせめて、最大限に強くなったお前に勝って村の人たちに謝るんだ。ここで僕が死のうともお前は絶対に倒す。」

《言うじゃねぇか。最強の俺を倒す…か。確かにまだ力は最大まで復活はしてねぇなぁ。》

(よし、食いついた…)


タケルはここぞとばかりに言葉を紡ぐ。


「なら、もっと酒を用意してやるよ。それを飲んだらもっと強くなるんだろ?」

《あん?酒をもっと…?まぁ確かにそれはそうだな。》

「最大まで強くなって僕らを蹂躙してみろよ。今のお前は、はっきり言って拍子抜けさ。僕らのランクが高くなり過ぎたみたいだな。このままじゃ、僕はらに倒されるんじゃないか?」


その言葉に八岐大蛇がピクリと反応した。
タケルは冷や汗をかきながら、言葉を待つ。


《クククク…ガハハハハハハ!!お前らが俺を倒すだと?絶対防御すら崩せないのに?笑わせてくれるぜ!!それとも何か?この防御を崩せる策がお前たちにあるとでも?》


その八岐大蛇の言葉にタケルは小さく息をつく。
そして、大きく息を吸うと声を大きくして叫んだ。


「あぁ、そうさ!僕らにはお前のその防御壁を砕く策がある!笑ってられるのは今のうちだ!!」

《その根拠を言ってみろ…》


突然、八岐大蛇の声が低くなる。
タケルの自信ある態度に八岐大蛇は少し警戒しているようだ。

いつの間にか笑顔は消えており、様子をうかがうようにゆらゆらと首を動かし始めている。

八岐大蛇の問いに、タケルは再び間を置いた。
少しの沈黙が両者の間に訪れる。

風が小さく吹き抜け、焦げた香りを運んでくる。

そして、タケルは静かにある単語を口にした。


「アマテラス…」


その言葉を聞いた八岐大蛇は、目を見開き驚いた顔を浮かべた。

その言葉は予想していなかったらしい。


《なぜ…なぜお前がその名を…そんな…しかし、それならば防御壁を破るのも…》


今までの饒舌さはどこへ行ったのか。
何かを考えるようにぼそぼそと呟き始める八岐大蛇に対し、タケルは言葉を続けた。


「お前ならこの名前を知ってるだろ?そして、これがどういう意味かも…わかるな?」

《……》


八岐大蛇は黙りこくり、ジィッとタケルを見据えている。
タケルはそれをジッと耐え忍んでいた。

そもそもタケルは一つ嘘をついている。

八岐大蛇の絶対防御を突破するための策はある…が、それは八岐大蛇が許容範囲以上の酒を飲んで酔っ払わなければならないのだ。

しかも、そうなる確証はまったくを持ってない。
そして、それ以外に有効な策などない。

冷や汗が背中を伝うのがわかる。

短時間で造ることができた酒樽は5つ。
ヴェーたちに奪われた後、アシナたちが必死に造ってくれたこの酒樽たちが最後の希望でもあった。


(とりあえず…飲ませるしかないんだ…)


馬鹿馬鹿しくも思えるが、酒が効こうが効くまいがタケルたちができることは、八岐大蛇に酒を飲ませることだけだ。

古事記の通りに『八塩折酒』を飲んで八岐大蛇が酔っ払ってくれなければ、タケルたちに勝機はないのである。


タケルを見据えていた八岐大蛇が、ゆっくりと口を開いた。


《お前がその名をどこで知ったかは知らんが…確かにそれはさっきの話の根拠になり得る。どこまでがお前の思惑はわからんが…良いだろう、話に乗ってやる。持っている酒を全部よこせ。力を取り戻した俺を見事倒して見せてみろ!!》


それを聞いたタケルの顔には、不安と期待で笑いが込み上げてくる。


「フクオウ!!酒を頼む!!」


タケルの言葉にフクオウたちはうなずいた。
タケル以外のメンバーたちの顔には不安が滲んでいる。

しかし、もとよりこれが作戦なのだ。
犠牲なく八岐大蛇に酒を飲ませることができるのは、嬉しい誤算であるのだ。

ゆっくりと運ばれてくる『八塩折酒』の酒樽を眺めつつ、その場にいる全員がその行く末を見守っていた。
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