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第三章 ランク戦開催
97話 錬金術師の有能性
しおりを挟む元気を取り戻したこと伝えに、レンジとスタンに挨拶に言っていたイノチが部屋に戻ってきた。
「おかえり、BOSS。あいつら、なんか言ってた?」
窓際に座って『ドラゴンキラー(SR)』をくるくる回していたエレナがそれに気づいて声をかける。
「いや、特には。元気になってくれてよかったって言われたくらいだな。」
イノチは問いかけてきたエレナの言葉に答えつつ、椅子に座り込んだ。
横ではフレデリカが自身の専用武器である『ゴッドイーター(UR)』の手入れを行なっており、アレックスは疲れたのか眠ってしまったようで、ベットで横になり、小さく寝息を立ている。
それらを眺めていると、エレナが立ち上がって同じように椅子に座ってきた。
「それで?あと、他にやることはないわけ?」
「う~ん、そうだなぁ。最後にもう一度、セイドと情報交換はしておきたいな。それとケンタウロスとミノタウロスとも連絡をとっておきたい。俺のせいでまったく連絡してなかったし…」
「そうですわね、セイドへの連絡は賛成ですわ。あちらの動きはできる限り最新のものがいいですから。直前に動きが変わることもあるでしょうし…生誕祭前夜に連絡を取るのがいいですわ。」
「だね。あとは神獣たちか…あいつら、今頃何してんだろ?」
イノチは椅子にもたれかかり、天井を見上げて疑問を浮かべたが、フレデリカが武器の手入れを続けながら小さくつぶやいた。
「大人しくしてるはずですわ。」
「え…?フレデリカ、なんでわかるの?」
「そうよ。直接連絡できるのはBOSSだけでしょ。なんであんたがそんなことわかるのよ。」
「あいつらには、あるものを渡しておきましたもの…」
「「あるもの…?」」
同時に首を傾げるイノチとエレナ。
フレデリカは手入れを終えた『ゴッドイーター』をテーブルに置き、口を開いた。
「えぇ、エレナとアレックスの入浴中の一枚、ですわ。」
「はぁぁぁっ!!!???」
それを聞いた瞬間、エレナがテーブルに手を叩きつけて立ち上がった。
真ん中に置いてあった花瓶が一瞬宙に浮き、そのまま綺麗に着地する。
イノチが花瓶の動きに目を奪われていると、顔を真っ赤にして青筋を立てたエレナが怒鳴り始めた。
「なななな…何を渡してくれてんのよ!!」
「別にいいではないですか。減るものでもないし…アレックスは恥ずかしげに笑ってましたですわ。」
「そういう問題じゃないでしょ!!いったいどんなものをあいつらに渡したのよ!」
「…これですわ。」
「こっ…これは…!」
フレデリカは小さなメモ紙のようなものを懐から取り出して、机の上に滑らせた。
それは写真のようなもので、エレナとアレックスが温泉で湯をかけ合いながらじゃれ合っている様子が描かれている。
もちろん、意図したかのように部分的に隠されてはいるのだが…
「フ…フレデリカ、これってどうやって…」
顔を赤らめながらも驚いたイノチが、フレデリカへ問いかけると、彼女は自慢げに話し始めた。
「以前、BOSSから『写真』という道具について伺ったのを思い出し、『念写』というスキルを創造したのです。これは試験的に撮った一枚ですわ。」
「…たしかに、そんなこと話したね。でも、具体的な構造とか仕組みとかは伝えてなかったと思うけど…」
その言葉にフレデリカは大きくため息をつき、肩をすくめた。
「BOSS、アルケミスト…錬金術師を舐めないでほしいですわ!真理を探究するものとして、想像力と創造力は必要不可欠!!」
「そ…そうぞう…りょく…それだけで、このクオリティ…」
ビシッと指を差してそう告げるフレデリカに、イノチは顔をひきつらせる。
しかし、その反面でイノチは関心していた。
(フレデリカの錬金術師の能力はやっぱりすごいな…もしかしてこれを利用すれば…ムフフ…)
「ボッ…BOSS?どうしました…ですわ?」
いつのまにかニヤけているイノチをフレデリカは訝しんだが、再び机を叩く音が部屋に響き渡り、二人はそちらに目を向ける。
「う…う~ん、よく寝たぁ♪…あれ?BOSS帰ってきて…」
その音で目を覚ましたアレックスが、イノチに気づいて笑顔を向けるが…
「フ~~レ~~デ~~リ~~カ~~~~~!!!」
エレナが怒りに目を輝かせ、フレデリカの名を呼んだ。
黒く歪んだオーラを身にまとうその姿は、まるで鬼神のように見える。
「エレナがキレました、ですわ。」
「フ…フレデリカ!どうにかしろよな!!」
「いやですわ。めんどくさい…」
「お前がいらんことしたから…エ…エレナさん?すこぉし、すこぉし落ち着こう…ね!」
「なになにぃ♪何があったのぉ?♪」
焦るイノチ、面倒臭がるフレデリカ、笑っているアレックス。
そんな三人の前でエレナが大きく吠えた。
「さっさと回収してこぉぉぉぉぉぉい!!!!」
・
「はぁ…飛んだ目にあったな…」
イノチが大きくため息をついた。
エレナに怒られたフレデリカは、あの後すぐにケンタウロスたちから例の写真を取り戻してきたらしい。
スキル「竜化」を使ったようで、ものの数分で帰ってきた。
そもそも、ラビリスの大空洞では渡すタイミングなどなかったはずなのにと、イノチが聞いてみたところ、フレデリカはこう答えた。
『ケンタウロスが気を失っている間、わたくしが奥を探索に行ったのは覚えてますか?あの時にあいつらの部屋を見つけたので、メモと写真を置いておいたのですわ。』
もちろん、持ち帰った写真を受け取ったエレナは、その場でビリビリに破り捨ててしまったが、影でフレデリカがニヤリと笑っていたことは伏せておく。
「ところでさ、生誕祭まで少しだけ時間があるから一つやりたいことがあるんだけど…」
イノチがそうつぶやくと、テーブルを囲んで食事をとっていたメンバーたちが顔を向ける。
「やりたいことって何よ…どうせまた、くだらないことなんじゃないの?」
「BOSSが言うなら、おもしろいこと…それかエッチなことじゃない♪」
「ですわね。アレックスは鋭いですわ。」
「…おい、お前らの中で俺はどんな人間性なんだよ。」
イノチは小さくため息をついたが、気を取り直して話を続ける。
「生誕祭までにさ、俺たちの戦力をもっと強化しておきたいんだよ。この前の襲撃では難なく追い返せたけど、相手のクランの全貌が見えてるわけじゃないし。どんな奴が出てくるかわからないだろ?できる限りのことはしたいんだ。」
「なるほどですわ。しかし、どうしますか?『黄金石』は先日、BOSSが不正したせいで、全てなくなってしまいましたし…」
「う…痛いところをつくな…」
たじろぐイノチの横で、エレナが口を開く。
「なら、BOSSのランク上げのために、どこか近場のダンジョンでも探す?モンスターを倒せば『黄金石』もドロップするでしょうし…」
「でもでも、あんまり効率的じゃないよねぇ♪BOSSのランクも100超えてるから、普通のモンスター相手じゃ大して上がらないし♪」
「アレックスの言う通りだな。」
「そうよねぇ…」
「なら、どうするのです?BOSS。」
イノチは手に持っていたコップを口に運ぶ。
そして、水を一口だけ含んで小さく飲み込むと、三人に向かってニヤリと笑う。
「そこでアルケミスト、フレデリカ様の登場だ。」
「わたくし…ですわ?」
フレデリカとともに首を傾げる三人に、イノチは嬉しそうに
説明を始めた。
「フレデリカの職業はアルケミスト、錬金術師だろ?そのスキルは『錬金』だ。さっきの『念写』のようにスキルや武器、道具を創り出すことができる。」
「それはみんな知ってることよ…でも、その『錬金』を行うためには等価交換が原則でしょ?素材やアイテムなんてそんなにあるわけでもないし…どう戦力アップに繋げるのよ。」
「ふふふ…それはだな…」
肩で笑い始めるイノチ。
その様子に、ついに気でも触れたかという視線を送るエレナとフレデリカ。
その横で、アレックスが楽しそうにニコニコと笑っている。
イノチはゆっくりと顔を上げてこう告げる。
「『黄金石』を錬成するぞ!」
「「はぁ…?!」」
相変わらずニコニコと笑うアレックスの横で、エレナとフレデリカの疑問の声がこだますのであった。
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