ガチャガチャガチャ 〜職業「システムエンジニア」の僕は、ガチャで集めた仲間とガチャガチャやっていきます〜

noah太郎

文字の大きさ
230 / 290
第四章 全ての想いの行く末

1話 創血の牙 ロノス

しおりを挟む

「ついに明日…ですね。」

「うん…。」


イスに座り、そう話しかけてきたイノチの言葉に、反対側に座るレンジは小さくつぶやいた。

いつも飄々とした態度のレンジだが、それは感傷に浸っているかのような控えめな返事だった。


「レンジさんでも、そんな顔するんですね。」

「ハハハハ…君は僕のことをなんだと思っているんだい?」


少し驚いたようにそう告げたイノチに、レンジは視線を向ける。

その顔は笑っていたが、イノチには彼の瞳の奥に冷たい炎が燃えているように見えた。

そんなレンジが口を開く。


「この反乱の成功は…打倒レオパルは国民の悲願だ。綺麗な街なのに…誠実な国民がいるのに…素晴らしい国なのに…国王一人のせいで、この国全体には死臭が漂っている。僕はそれを正したい。」

「その想いは僕らも同じですよ。理由と目的は違えど、この国の悪政を止めなければ、僕らジパンにも被害が及ぶ。それだけは何としても防がなくちゃ。」

「ありがとう、イノチくん…君たちには本当に感謝してるんだ。正直、僕らだけでは犬死していたかもしれない。だが、君たちが来てくれたおかげで、僕らの志に光明が見えたんだ。悲願を達成する可能性が上がったことで、仲間たちの士気も十分に高まっている。これなら、明日は…」


レンジはそこまで言うと、握りしめた自分の拳に目を向けた。

その拳は小さく震えていたが、隣にいるスタンがそっとレンジの拳を包み込んだ。

拳の震えが止まる。

レンジがスタンに視線を向ければ、彼女は静かに笑っていた。

レンジは感謝するように小さく笑い、再び口を開く。


「これなら明日は、奴の首を獲ることができるかもしれない。」


その言葉にイノチも笑顔で応えた。


「"かも"じゃない。必ず悪政を終わらせるんですよ。」

「ハハハ…その通りだね。弱気はいけないな。」


レンジはそう言って笑みを返すと、目の前のカップを手に取った。

気持ちを落ち着かせるように香りを楽しつと、一口だけ口に含む。

それを見ていたイノチも同じように紅茶を口に含んだ。

二人の間に少しの沈黙が訪れたが、イノチはカップを置くと、静かに口を開いた。


「ところで、作戦に移る前に確認したいことがあるんですが…」

「確認したいこと?…いいよ、聞こうじゃないか。」


レンジもカップを置いてイノチに向き直る。


「セイドの…内通者のおかげで相手の動きは筒抜けです。レオパルの行動、帝国軍と創血の牙の警備の範囲や配置など、重要なことはほぼ把握できてます。当日はかなり有利な状況で作戦を進められるはずです。でも、一つだけどうしてもわからないことがあるんです。」

「わからないこと?」


レンジはその言葉に疑問を浮かべた。
スタンも少し怪訝そうにイノチを見ている。

しかし、イノチはレンジを真っ直ぐ見据えて話を続けた。


「えぇ、クラン『創血の牙』の団長のことです。」

「……。」


レンジは無言のままだったが、イノチはなおも話を続ける。


「彼のことだけは全く情報がない。セイドに聞いても、団長のことはよくわからないし、調べても無駄としか返ってこない。彼が嘘をついてるわけではないと思うんですが…長く彼らと対抗してきたとレンジさんたちなら、何か知らないかと思って…」


イノチがそこまで告げると、レンジは難しそうな表情を浮かべていた。

何かを考えるようにしているその様子を、イノチは静かに見つめていた。

静かな時間が流れる中、ふと、レンジが小さく息を吐く。


「奴について知っていることがあるなら、それは"得体が知れない"ということかな…って、これじゃ答えにならないか。」


レンジは一人、苦笑いながら話を続ける。


「これまでも、何度か創血の牙とやり合ったことはあるんだ。だけど、奴とは直接対決したことはない。大抵のことは部下に任せていて、表にはほとんど出てこない。本当に得体の知れない奴なんだ。」

「そうですか…今回の作戦、不安要素があるとすれば彼なんです。どこに居るのか、どう動くのかもわからない。そういうイレギュラーな存在は厄介なんですよ。しかも、それが団長という一番強い存在ですから、なおのこと…」

「確かにそうだね…わかった。あまり時間はないけど、ギリギリまで奴のことを探ってみよう。スタン、頼んでいいかい?」


その言葉に、力強くうなずくスタン。


「イノチくん、改めて明日はよろしく頼むね。」

「こちらこそです。」


スタンが見守る中、二人は強く握手をするのであった。





「国王、そろそろお時間です。」

「うむ。」


宰相の言葉に、王冠を被り、立派な髭を伸ばした男はうなずいた。

座っていたイスから立ち上がると、目をつむってゆっくりと息を吸い込んでいく。

そして、めいいっぱいに吸い込んだ空気を、今度はゆっくりと吐き出して小さくつぶやいた。


「良い日だな。」

「はっ…生誕祭にふさわしき日かと。」


目をつむったまま、余韻に浸るように天を仰ぐ。

そのまま少しの間を置くと、静かに目を開け、男は周りに立ち並ぶ部下たちへと顔を向けた。

そして、その視線はある男で止まる。

顔まで真っ黒な鎧を身にまとった男。

クラン『創血の牙』の団長であるロノスであった。
その横には、真っ赤な鎧を着たアカニシの顔もある。


「ふむ…時にロノスよ。結局のところ、レジスタンスたちはどうなっとるのだ?」

「あぁ、なかなか小賢しい奴らでね。一度だけ、やつらの集会を襲撃できはしたんだが、そのあとはなかなか…」

「ふん…結局、お前の団はまったく使えなかったな。こういう時のために、貴様らには投資をしているというのに。」

「それに関しては申し訳なく思っているよ。」


飄々と何食わぬ態度で言葉を返すロノスに、宰相以下、周りの者たちも睨むように視線を向ける。

ロノスの横では、アカニシがレオパルの言葉に悔しそうに歯を鳴らしていたが、レオパルが言っていることは正しく、反論できなかった。

レオパルから依頼を受けたのは、紛れもなく副団長である自分なのだ。

そして、唯一のチャンスをものにできなかったのもまた、自分なのである。

依頼を受け、レジスタンスの動向を探り、奴らを壊滅すべく各都市で支部長たちが奮闘していた矢先、舞い込んだ敵の集会の情報。

歓喜し、アカニシ自ら襲撃に向かったが…

ご存知のとおり、イノチたちに阻まれて失敗に終わったのだ。

その後は、尻尾を掴むことすら叶わず、今日、この生誕祭を迎えてしまったのである。

それを思い出して、アカニシはさらにイラ立ちを募らせた。

そんなアカニシをよそに、宰相がレオパルに進言する。


「陛下。レジスタンスと言っても、たかだか民衆どもの集まりに過ぎません。恐るるに足らないかと…」 


その言葉に、レオパルが不眉毛に眉をひそめた。


「たわけ。私は恐れてなどおらん。ただ、裏でコソコソしている者どもを放っておくのが気持ち悪いだけだ。」

「も…申し訳ございません。」


宰相は言葉を誤ったと感じて、すぐに頭を下げた。
レオパルはその態度に軽く鼻を鳴らす。


「まぁしかし、宰相の言葉は正しいな。レジスタンスと言っても所詮は烏合の衆。百戦錬磨を誇る我らリシア帝国軍を前に、なす術などないだろう。」

「そ…その通り、陛下のおっしゃる通りでございます!」


王の同意を得られて安心したのか、宰相はすぐに頭を上げて媚びへつらった。

しかし、当のレオパルはそんなことを気にすることなく、再びロノスへ視線を移す。


「ロノスよ。今日は我がリシア帝国の生誕祭である。さらに言えば、今日この日は、我らがこれから歩む覇道の記念すべき第一歩となる日…リシア帝国の歴史に刻まれる日であるのだ。失敗は許されない。そのことをしっかりと貴様の部下たちにも伝えておけ。」

「もちろんだ。しっかりと警備にあたらせてもらう。」

「期待しているぞ。では、参るとしよう。」


手を上げて返事をするロノスの態度に鼻を鳴らすと、レオパルはそう告げて歩き出した。

それを追いかけるように、宰相を含めた部下たちも後に続いていく。

アカニシはそれを悔しげに見つめていたが、ロノスは興味がないのか顔を動かすことなく、まっすぐ前を見つめて静かにその場に立っているのであった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

離婚すると夫に告げる

tartan321
恋愛
タイトル通りです

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...