240 / 290
第四章 全ての想いの行く末
11話 フレデリカの切り札
しおりを挟む「ここまで進んできたけど、あれから創血の奴らは出てこないわね。」
エレナは王宮内の広間の中央に立ってそうつぶやいた。
周りにはレジスタンスたちもいて、彼らはこれから進むべき方向を確認し合いながら、それぞれ警戒にあたっている。
帝国軍との戦いで負傷した者たちもいるが、エレナとアレックスの助勢もあって最小限に留められているようだ。
彼らの様子を見ていたエレナの元に、アレックスがやってきた。
「エレナさん♪BOSSたちと落ち合うのは、ここで間違いないよね♪」
「そうね。でも、まだ来てないってことは何かあったかしら。」
「かもしれないね♪」
それを聞いたエレナは悔しそうにため息をつき、小さく愚痴をこぼす。
「ちっ…ということはあっちが当たりだったってことね。」
「そうだねぇ♪まぁ、BOSSが一緒だから必然ではあったかもね♪」
「…?なんでそう思うのよ。」
アレックスの言葉に首を傾げるエレナ。
そんな彼女に対して、アレックスは自信満々に答えた。
「え~♪だって、BOSSって意外にトラブルメーカーなとこあるじゃない♪」
「確かに…そうかもね。」
根拠もないが納得するエレナ。
確かにリュカオーンのときも超級ダンジョンのときも、いろいろとやらかしてきたイノチである。
そう思われても仕方はないだろう。
「だけど今回は仕方ないわね。メンバー編成の際、珍しくBOSSの意思が固かったらあんまり反論できなかったし…」
「そうだね♪でも、こっちはこっちで僕は楽しいよ♪」
そんなアレックスの様子にエレナは肩をすくめた。
東門側の守りに当てられていた創血の牙のメンバーは、ハーデとメテル以外みんな大したことはなかった。
そして、その二人ですら一瞬で戦闘不能になってしまい、不完全燃焼さが否めないエレナだったが、今回の作戦ではイノチの想いを汲み取ってもいるのだ。
「…今回は我慢ね。あのバカ竜を復活するさせるためにこの作戦は早く終わらせなきゃならないから。」
ため息とともにそう告げたエレナを見て、アレックスがニヤニヤと笑う。
それに気づいたエレナは、少し恥ずかしげに彼女へ問いかけた。
「アレックス…何よ、何か言いたげだけど…」
「うん♪フレデリカさんもだけどさ、二人ともBOSSのことなんだかんだ考えてあげてるよねって思うんだ♪」
「ばっ…!違うわよ!早くあのバカ竜を生き返らせて一発ぶん殴るつもりって話よ!!」
「はいは~い♪そうだねぇ♪ウフフ♪」
アレックスの態度にエレナは顔を赤らめたまま、少しあたふたしている。
しかし、その時であった。
ゴゴゴォォォォォンンンンッ!!!
「なっ…!何!?何が起きたの!?」
建物が軋むほどの地響きと揺れに、エレナが怪訝な表情を浮かべていると、広間に走り込んできたレジスタンスの一人が大きく叫んだ。
「西門付近で大きな爆発を確認しました!!」
その言葉を聞いたエレナとアレックスは、急いで外へと駆け出して西門の方向へと視線を向ける。
そしてそこに、大きく立ち上る黒い粉塵を見た。
「あれは…」
「なんだろう…♪」
アレックスが首を傾げる横で、エレナにはそれが何なのかなんとなく予測できた。
あれはフレデリカの炎魔法が放たれた時に現れる黒煙だ。
そして、その大きさから特大の炎魔法が放たれたということも…
「フレデリカのやつ、竜化している…?まさかっ…!!」
嫌な予感が頭をよぎり、駆け出そうとするエレナの服を掴んでアレックスが引き止めた。
それに驚いたエレナが声を荒げる。
「何するのよ、アレックス!!」
「だめだよ、エレナさん♪BOSSからの指示、忘れちゃった♪?」
「…!!」
アレックスの言葉に、エレナはイノチの言葉を思い出していた。
『何があっても持ち場を離れないこと。お前らが持ち場を離れたら、残されたレジスタンスのみんなに迷惑がかかるんだ!わかったな!』
その言葉が大きく胸へとのしかかる。
不安と忠心が心の中でせめぎ合っている。
「BOSS…!」
そんな葛藤の狭間で、エレナは立ち上がる黒煙を見つめながら、不安をこぼしたのだった。
◆
「いきますですわ!!」
竜化したフレデリカは、そう告げてロノスへと飛びかかった。
一瞬で間合いを詰めたフレデリカは、右手に持つファングソードを左から右へと振り払う。
それに対してロノスは構えていた剣でそれを受けた。
目にも止まらぬ剣戟を何度も繰り出すフレデリカに対して、ロノスは全てを読んでいるかのように自らの剣で全てを受け切っていく。
一度間合いを取ったフレデリカ。
「はぁぁぁぁぁ!!!」
今度は真上に高く跳び上がり、その勢いのままファングソードをロノスへと振り下ろす。
…が、ロノスはその一太刀を簡単に受け止めてしまった。
ギィィィィンという透き通った金属音が響き渡る中、フレデリカはファングソードを押し込めようと腕に力を込める。
しかし、ロノスは特に焦る様子もない。
「く…余裕ですわね!」
「うん、これくらいなら問題ないかな!それに…その武器じゃ、俺の剣は越えられないだろ?」
涼しげにそう告げるロノスだが、その見立ては正しかった。
フレデリカの持つファングソードのレアリティは『R』だが、対するロノスの持つ剣はその見た目からも高レアリティであることがわかる。
ファングソードの一撃を受け止めても、傷一つつかないその美しく光り輝く剣身が何よりの証拠なのである。
「俺の剣のレアリティはURだよ。名を『ミストルテイン』と言う。」
「ミストル…それはまさか!!」
そこまで口に出したフレデリカは、目の前のロノスが笑っているように感じた。
フルフェイスの兜をかぶっているためにその表情は見えないが、フレデリカにはなぜだがそう感じたのだ。
しかし、それを確かめる前にフレデリカのファングソードの刀身にヒビが走る。
「早く戦える武器を出しなよ。腕を落とされてからじゃ遅いだろ?」
「ちっ…!!」
見透かされていたことに気づいた瞬間、ファングソードが真っ二つに折れ、ロノスの剣がフレデリカに襲いかかった。
しかし、辛うじて先に反応していたフレデリカはその斬撃をかわすと、ロングスカートのスリットの間からもう一つの武器を取り出した。
「ハハハハ…やっぱり隠し持ってた!」
後方へと高く跳び上がり、体を捻らせながら空中で銃を構えるフレデリカを見て、ロノスは笑う。
「油断するんじゃないですわ!!」
「銃とは面白いね。弾丸と俺の剣、どちらが早いか…試してみよう。」
ロノスは再び剣を構えて迎撃の態勢を整えるが、フレデリカはそれを予想していたかのように笑い返した。
「言いましたですわ!油断するなと…!!」
そう叫んだフレデリカがトリガーに指をかける。
その瞬間、彼女の手と銃の周りには紅蓮の炎が燃え上がった。
赤黒い炎をまとった銃はその全身を真っ赤に染め上げ、エネルギーを収束させるようにキィィィンと音を鳴らす。
その様子を不思議そうに眺めていたロノスを空中から見下ろしながら、フレデリカは容赦なくその言葉を綴った。
「獄炎の焔焔たる意志たちよ、我が手に集いて来たれ、全てを滅せよ!アンファール・バースト!!!!」
フレデリカの叫びとともに、獄炎の炎がまるで竜のような形を成してロノスへと襲いかかる。
「な…なにあれ…!ウィングヘッド倒した時以上の威力じゃん!!」
驚きを隠せないイノチの前で、その竜炎はロノスを飲み込んで巨大な爆炎を巻き起こしたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる