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第四章 全ての想いの行く末
10話 疑問
しおりを挟む「いくミノヨォォォォォォ!!!」
ミノタウロスはそう鼻息を荒くして、巨大な斧を大きく振りかざした。
それを見たセイドも腰を落として三叉槍を構える。
「仕方ねぇ…いっちょ、やったるかね!」
「おりゃぁぁぁぁぁぁミノォォォォ!!!」
その瞬間、セイドの頭めがけて斧が振り下ろされた。
(このバカたれめ…やっぱり作戦忘れてやがんな!)
セイドはそう考えながら、素早く斧をかわす。
セイドがいた場所に叩きつけられた斧が地面をえぐり、四方に亀裂を走らせ隆起する。
「ちょこまかと…逃げるなミノォォォォォ!!」
「断るわ!!お前の斧なんか受け止めてられるか!」
「ちゃんと戦うミノ!この前のように逃げるなミノ!!」
「うるせぇ!俺はこういうやり方なの!撃ち合いなんて暑苦しい真似しないんだよ!」
しかし、セイドの言葉など気にすることもなく、ミノタウロスは斧を振り回しまくった。
「ちょっ!」「おわっ!」「待てって!」
何度も襲いかかる斧をかわし続けるセイドだったが、痺れを切らして斧をかわしざまに一撃を見舞う。
「この野郎!いい加減に…しろ!!」
硬い皮膚に槍の刃が通ることはなかったが、その一撃はミノタウロスを後方へと押しやった。
ちなみに今のミノタウロスに絶対防御の障壁が発動しない。
その理由は、リュカオーンの時と同様にイノチが『書換』を行っているからである。
これは、あくまで今回の作戦を遂行するための一時的な措置ではあるのだが…
蹄で地面をえぐりながら、ブレーキをかけるミノタウロス。
槍を受けた脇腹をさすりながら、鼻息を荒くする。
「や…やってくれたなミノ!!」
「そりゃ、大振り過ぎて隙だらけだからな!!」
「うるさいミノ!!こうなったらぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「お…おいおい…てめぇ、まさか…」
「モモモモォォォォォ!!」
あまりにも自分の攻撃が当たらないストレスに我慢しきれず、ミノタウロスの興奮は頂点に達していた。
セイドの言葉に聞く耳すら持たず、得意の巨大化を行おうとしたのだが…
「ミノタ!それは、今はダメだ!!」
「…!?ボ…BOSS…!」
突如聞こえたイノチの言葉にミノタウロスは我に返り、イノチの方へと視線を向けた。
「少し落ち着けよ!な!ミノタ!」
「すまなかったミノ…」
「気にすんなよ!そういう真っ直ぐなところが、お前のいいところなんだからさ!」
「BOSS…」
その言葉を聞いたミノタウロスは、気を取り直してセイドへと向き直る。
(やっぱりBOSSの言葉は心地いいミノ。今まで褒められたことなんかなかったから、悪い気はしないミノね!)
嬉しげに笑うミノタウロスは再び鼻息荒く斧を構え直す。
だが、その顔は先ほどとは違い、冷静さを取り戻していた。
そんなミノタウロスの様子にイノチはホッと胸を撫で下ろし、ケンタウロスとアカニシたちの方へと視線を向けた。
目にも止まらぬ攻防。
こちらもすでに戦いは始まっている。
ものすごいスピードで互いの剣をぶつけ合う二人。
金属音と衝撃音が何度も何度も響き渡り、火花が閃光のように散っては消える。
イノチはその戦いの行く末を注視していた。
「カカカカカ!!いいねいいね!この前よりだいぶ動けてんじゃねぇか!」
「だまれ!!」
ギリギリと鍔迫り合いを行いながら、ケンタウロスを睨むアカニシ。
「だがよ、まだちょっと足りないなぁ。それじゃあ、俺には勝てないぜ?結局はこの前と同じだ!」
「うるせぇんだよ!」
「ムキになるなよなぁ!ハハハハ!しかしなぁ、お前の団長さんからのバフは確かにすげぇなぁ!お前の強さが格段にアップしたのが俺にもわかるぜ!だが、当のお前がその力を使いこなせてないんじゃ…団長とやらも、さぞかし悲しいだろうなぁ!」」」
「だまりぃ…やがれ!!おらぁぁぁ!!」
「おっと…!」
怒りに任せて剣を押し込み、力の限りに振り抜いたアカニシに対して、ケンタウロスはバックステップを踏んで距離を取った。
「そうこなくっちゃ!戦いはこれからだからな!」
ケンタウロスはそう笑うと、目が赤く輝かせ始める。
大きく息を吐き、体の周りに魔力のオーラが漂い始め、腕や足の筋肉が膨張し、肌の色が変化を始める。
アカニシはその様子を睨みつけていた。
前回、自分が負けたケンタウロスのあの姿を思い出す。
悔しさが心を支配して、怒りがさらに込み上げてくる。
全身は光沢のある銀色、サイズもひと回り大きくなっていて、右腕からは大きな剣のような長い刃物を生やすケンタウロスの姿。
それが自分の前に再び現れたのだ。
「お前にとってはリベンジマッチだな!カカカカカ!!」
そう笑うとケンタウロスを前に、アカニシも笑って剣を構える。
「今回は俺が勝つ…がな!!」
一方で、ロノスとフレデリカは睨み合いを続けていた。
周りで響く激しい戦闘音。
だが、そんな喧騒などまったく聴こえていないかのように、二人の間には静かさが漂っていた。
しかし、フレデリカがそれを先に破る。
「スキル『竜化』!」
その瞬間、フレデリカの体から光の筋が発せられ、辺りを煌々と照らしていった。
「竜化…ドラゴンの力か…」
その眩しさに怯むことなく、ロノスはフレデリカの様子を注視する。
それはまるで、順番を待ち侘びる子供のようにどこか楽しげだ。
輝きがゆっくりと収まり、頭に2本の竜の角を生やしたフレデリカが再び姿を現した。
「お待たせしましたですわ。」
紅く染まった虹彩の中に、存在感を放つ縦長の黒い瞳孔がロノスを睨みつける。
その様子に、当のロノスはというと…
「なるほど…!それが『種族覚醒スキル』かい。」
驚くどころか嬉しそうな声を上げたことに、フレデリカはイラ立ちを感じざるを得なかった。
しかし、ロノスはそんなことを気にすることなく、話し続ける。
「君はドラゴニュート、だから『竜化』。どちらも初めて見たけど、確かにすごいパワーアップだ。ステータス値の向上の仕方が半端ない…フフフ、本当に楽しみだよ。」
「相変わらずのその余裕…やっぱりムカつきますわ。」
フレデリカの怒りももっともであった。
『種族覚醒スキル』とは種族別に定められた強力な特殊スキルで、使用中はスキルに見合った能力が付与される。
ほとんどの身体能力が大幅に強化され、竜種に近い力を得ることができる『竜化』を前にして、ロノスは笑ったのだから無理もない。
「準備はいいのかな?」
「ええ、一瞬で終わらせてあげますですわ。」
「フフフ…どうだろうね。」
先ほどまでの静けさはすでになく、二人の間には互いの闘志がぶつかり合っていることが、離れているイノチにも理解できた。
まもなく始まるであろう戦いを静かに見守る最中、イノチはロノスの言葉にひとつだけ疑問を浮かべる。
(まるで、フレデリカのステータス値が見えているような口ぶりだな。)
目に魔力を集中させれば、ハンドコントローラーのスキルによってイノチにも様々なものが見えるようになっている。
ロノスの言葉は、そんなイノチと同じようなものを見ているかのように感じられた。
(いったい何者なんだ…なんにせよ、油断はできないな。俺は奴から目を離しちゃだめだ。)
イノチはそう思い、漆黒の鎧をまとう男を見つめていた。
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