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第四章 全ての想いの行く末
16話 真紅の輝きに込められし
しおりを挟む「…終わったんですね。」
王宮のエントランスフロアで待っていたイノチは、階段から降りてきたレンジとスタンに問いかけた。
「あぁ…終わったよ。」
そう告げるレンジの顔はどことなく物憂げだ。
「どうしたんです?あまり嬉しくなさそうですけど…」
再び問われたレンジは小さく苦笑いする。
「いや、嬉しいさ。打倒レオパルは皆の悲願だったんだから…ただ、最後は呆気ないもんだったなって思ってね。」
「本当にそういうところは人間臭いんですね。レンジさんのことだからもっとこう…クールに振る舞うかと思ってた…」
その言葉にレンジは笑った。
そして、気持ちを切り替えるかのように真面目な表情を浮かべる。
「君たちのおかげで、レオパル以外の幹部や軍の上層部も排除できた。だけど、これはあくまで通過点だからね。これからが大変だけど、国を立て直すためにまたみんなと頑張るだけさ。」
「そうですか…なら、これで俺の仕事も終わりです。」
イノチがそう言ってエレナたちに合図すると、彼女たちもそれにうなずいて立ち上がった。
「次にジパンから来る船は明日のはずだから、今日はアジトに泊まっていくといい。最高のもてなしを持って感謝の気持ちを返させてくれ。」
「ありがとうございます。では、お言葉に甘えさせてもらいます。」
二人はそう話し、王宮の外へと向かい歩き始めた。
周りではレジスタンスのメンバーが忙しなく動き回っている。
誰一人歓喜に酔う者がいないのは、レンジの言葉通り、レオパルを倒したことはあくまで通過点であると皆が理解しているからだろう。
皆、自国を良くしようという強い想いを持っていることが、改めて強く感じられた。
「BOSS…あたし温泉に入りたいわ!」
レンジとイノチの後ろを歩くエレナが突然言い放つ。
その言葉にイノチが振り向くと、フレデリカもアレックスも同じようにうなずいている。
「わかってるよ!明日、サザナミへもどったらアキナイさんにお願いするから。船の出航時刻はたぶん夕方だし、それまではゆっくりしていいよ。」
「やった!」
「だね♪エレナさん♪」
小さくガッツポーズするエレナとともに飛び跳ねるアレックス。
その様子を見たフレデリカも、肩をすくめて小さく笑みをこぼす。
「相変わらず仲がいいなぁ。」
四人の様子を見ていたレンジも、そう笑みをこぼして笑っていた。
そのまま一同は王宮から出ると、今度はケンタウロスとミノタウロスの姿が見えてくる。
二人ともつまらなさそうにあくびをしていたが、イノチたちの姿を見るや否や、立ち上がって駆け寄ってきた。
もちろんイノチの下にではない。
ケンタウロスはエレナとフレデリカ、ミノタウロスはアレックスの下へとである。
「姉さん方!!どうでした?俺の戦いぶりは!!」
「とりあえず誉めておく…ですわね。」
「そうね…まぁ、できて当然だけど!」
少し厳しめな言葉に、ケンタウロスは苦笑いをしながらも嬉しそうに笑う。
「お嬢!」
「あ~♪ミノっち♪本当にお疲れ様だったねぇ♪」
「そんなことないミノ!これくらい当然だミノ!!」
えっへんと胸を張るミノタウロスをアレックスは笑顔で手を叩いて讃えている。
そんなメンバーを見て笑いながら、少し離れた位置に目を向ければ、あぐらをかいて座り込むセイドの姿もあった。
気だるそうに手を振るセイドのお尻の下には、気を失ったまま縛られ捉えられているアカニシたち創血の牙の顔がある。
イノチはそのままセイドの下へと歩み寄ると、セイドも立ち上がって近づいてきた。
「こいつがセイド。前に話してた創血側の内通者です。前々から創血の牙のやり方には飽き飽きしていたらしくて、今回俺たちに協力してくれたんです。」
「…」
「そうかい…」
セイドは何を言っていいのか困っているのだろうか。
そして、口を開かないセイドを見るレンジの表情もどこか暗い。
しかし、それもそうかとイノチは心の中でつぶやいた。
レンジたちにとって、セイドはこれまで苦しめられてきた敵側の人間だ。
裏切ってこちら側についたと言っても、すぐに受け入れられるものではないだろうし、セイドものらりくらりと命令をかわしてきたとはいえ、自分の所属クランが苦しめてきた相手に対する罪悪感を感じているのだろう。
少しの間が訪れる。
そんな二人の仲を取り繕おうとイノチが口を開こうとしたが、その瞬間にセイドの雰囲気が急に変わった。
そして、何かに気づいたように突然警戒し始めたのである。
「お…おい…BOSS…何でそいつがここにいるんだ…」
そう叫んで距離をとるセイドにイノチは困惑する。
「え…?いったい何のことを言って…」
「その女だ!そいつが何でここにいるんだよ!」
「ス…スタンさんのことか?!彼女はレジスタンスのメンバーで参謀を務めてるんだから、ここにいて当然だろ!?」
イノチがそう説明するも、セイドは三叉槍を取り出して警戒心を一層高めている。
エレナやその周りのメンバーも、その異変に気づいて駆け寄ってきた。
「BOSS…!どうしたの?」
「いや…わからないんだ。セイドがスタンさんが何でここにいるのかって突然言い出して…」
皆がセイドに注目する。
当のスタンはすました顔をしたままだが…
「お前ら!どっちの味方なんだよ!本当は創血の肩を持ってたってことか!?」
「お前はなにを言っているのです?我々は打倒創血のためにここに来たのですわ!そんなことあるわけないでしょう!!」
「なら…なら、何でそいつがここにいるのか!納得いく説明をしてもらうぞ!!」
「ス…スタンさんがここにいる理由…?だからそれは…」
そこまで告げたイノチの言葉を遮って、セイドが言い放った言葉はその場にいる全員が耳を疑うものであった。
「知らないのかも無理はないが、そいつはレアー!創血の牙の参謀…空識のレアーだ!!」
「なっ…?…ぐへぇっ!」
セイドの言葉を聞くと同時に、危険を感じ取ったエレナがイノチの身を確保するように体を滑り込ませ、レンジとスタンのそばから素早く距離をとる。
フレデリカもアレックスもすでに臨戦態勢に移行しており、少し遅れてケンタウロスとミノタウロスがレンジたちを取り囲むように後方に位置取った。
突然体を引っ張られたイノチだが、ゆっくりと立ち上がって目の前にいるレンジとスタンへ目を向ける。
「い…いったいどういうことですか…レンジさん。」
そう問いかけるイノチに対して、額を押さえクツクツと笑い始めたレンジ。
しかし、すぐに笑い終えると前髪をかき上げ、真紅に染まる瞳をイノチヘと向けた。
その目を見たイノチは気づいてしまう。
あの目と同じ…鎧の中でときおり輝いていた真紅の瞳…全てを見透かすような鋭い視線…
だが、奴はさっき…
イノチの頬を一筋の汗が流れ落ちる。
同時に目の前にいる男へと問いかけた。
「お前…ロノスか…」
「なっ!」
イノチの言葉にフレデリカが驚愕する。
セイドも驚きを隠せないようだ。
エレナとアレックスも不穏な空気を感じている。
そんな一同を見渡してレンジは告げる。
「ククク…そうだよ。俺はクラン『創血の牙』団長のロノス…同時にレジスタンスのリーダー、レンジでもあるのさ!改めて、よろしくね。イノチくん…」
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