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第四章 全ての想いの行く末
19話 報告会を始めます
しおりを挟む「では、報告会を始めます。」
ゼウスは嬉しそうにそう告げ、一同を見渡すとゼウスはひげを触りながら笑う。
「皆の衆、イノチくんたちはリシアでの作戦を成功させたようじゃよ。」
部屋にはヘルメスの他にロキ、イザナギ、イザナミ、そしてアマテラスとツクヨミが集まり、前回同様にテーブルを囲んで座っていた。
もちろん、ツクヨミはアマテラスの後ろで静かに立っているが…
「まさか本当に達成するとは…思っても見ませんでしたね。」
アマテラスがそう言うと、イザナミもどこか不満げにその言葉に無言で納得する。
「だから言ったじゃろうて。イノチくんたちなら大丈夫じゃと。」
「レジスタンスの革命が成功しましたので、リシアは当分動かないでしょう。これでランク戦への参加は絶望的ですね。」
ゼウスがニコッと笑う傍らで、ヘルメスは淡々と状況を報告していった。
だが、それに異議を唱える者もいる。
「それはいいんだけどさ…ジプトもリシアも、プレイヤーたちは実質ランク戦不参加じゃない?これってもはや、やる意味あんの?」
「確かにそうだ。残るはジパンとノルデンだけ…その二国間でランク戦を行っても、あまり意味はないのではないか?」
ロキとイザナギの言葉にゼウスは笑顔のままひげを触っている。
するとその問いかけにヘルメスが口を開く。
「ランク戦は別に国同士の争いではありませんので、自国内で行ってもいいのです。プレイヤー同士、クラン同士でやり合うのがランク戦の醍醐味ですから。ですが、リシアとジプトのクラン規模のバランスはとても悪い。どちらも一強の下にいくつか小さなクランが存在しているのが現状ですので、国内でのランク戦はあまり活発にはならないでしょう。」
「ヘルメスの言う通りじゃ…」
ヘルメスの言葉を預かるようにゼウスが大きく息を吐いた。
「今回のランク戦、わしはイノチくんたちに無傷で切り抜けてほしいのじゃ。」
「…それはどういう意味だい?爺さん。」
ゼウスの言葉に疑問を浮かべるロキ。
そして、イザナギたちもロキに賛同するようにゼウスへ視線を向ける。
ゼウスはその視線を受け、真面目な顔を浮かべて話し出した。
「確かに、今回のランク戦は皆の楽しみの一つであった。神々は皆、自分が選んだプレイヤーに加護を与え、競い合わせてその結果に一喜一憂する…日々の飽きを渇かすための大きなイベントにする予定であったことは間違いない。じゃがしかしなぁ、途中から雲行きが怪しくてのぉ…」
ゼウスは視線をヘルメスに向け、うなずいたヘルメスはキーボードに手を走らせ、皆の前に映像を流し始めた。
「こちらは先日ノルデンで撮影された映像です。時期としてはランク戦の開催を確定させた直後くらいです。」
「撮影されたって言っても…これ盗撮だろ?オーディンが映ってんじゃん。あいつがこんなの許すわけないし…」
「ホッホッホッ、苦労したんじゃぞい。あいつを出し抜くのは。」
笑うゼウスとため息をつくロキ。
そんな中、映像の中ではオーディンが誰かと話し始める姿が映り始めた。
北欧王家の祖と云われる北欧神話の主神オーディン。
そして、彼と話をする銀髪の若い青年。
二人はどこか神妙な顔つきで話を続けている。
「これは…誰ですか?」
アマテラスの問いにイザナギも言葉を被せる。
「そうだな。見たことのない男だ。こんなやつ、神界にいたか?」
「このような銀色の髪、一目見たならば覚えているでしょうに…」
イザナミも怪しい銀髪の青年に怪訝な視線を向けているところで、ロキがあることに気づいた。
「おい、爺さん。こいつ…神印を持ってなくない?」
その言葉に皆驚いた。
神印はその名の通り、神である印だ。
神界に住まう神であれば誰でも持っている、いわば身分証明書のようなもので、ゼウスをはじめ、ヘルメスの部下たち全員も所持しているものだ。
「それを持たずに神界にいると言うことは…」
アマテラスの言葉にゼウスが静かに答える。
「奴は、おそらく最近生まれた神である可能性が高いということじゃ…」
その一言に部屋にいる全員が言葉を失っていた。
神印は最高神であるゼウスが発行するものだ。
神界に生を授かった神々はまず初めにゼウスの元へ行き、神印を授かるが、それはある意味で神々を管理するものとなる。
一般的に神は自由気ままな存在だと思われがちであるが、それは一昔前の話であって、今は一定のルールを定めて、それを基に皆自分の時間を過ごしているのである。
そして、そのルールを破れば神印は消え、追放の対象となるのだ。
「神印がなく、追放対象にもなっていないということはそういうことじゃろう。オーディンと何を話しているかは確認できなんだが、この後、ジプトとリシアでも同様にこやつの姿を確認しておる。」
「と言うことは、こいつが各国を焚きつけてジパンを潰そうとした黒幕ってことかい?」
ロキの言葉にゼウスは無言のままだった。
その代わりに、ヘルメスが口を開く。
「この方の目的は計りかねますし、各国が動き出した原因もこの方にあるかどうかはまだわかりません。」
「しかし、その可能性は高い…そういうことでしょう?」
アマテラスがそれに反応した。
その様子は少し怒っているかのようにも感じられる。
「しかし、だからと言ってどうするんだ?尻尾も掴めていないなら動きようがないだろう。」
「確かにそうですね。ならば、オーディンの元へ殴り込みましょう。直接言って洗いざらい吐かせるのです。」
「お…おい、イザナミ…さすがにそれはやり過ぎだろう。」
「いいえ…私もそれには賛成です。私の"タケル"をひどい目に合わせた罪は重い…」
「ア…アマテラスまで…。お…お前たち、少しは落ち着け!」
静かにオーラを揺らして怒る女性二人に、動揺を隠せないイザナギ。
しかし、珍しく真面目な顔を浮かべたゼウスが、二人を諭すようにこう告げた。
「直接はダメじゃ。オーディンはあれでいて狡猾な男じゃからな。いつものように感情で動けば、あとで痛い目を見るじゃろう。」
その言葉に舌打ちするイザナミとアマテラスの様子に笑いを堪えつつ、ロキがゼウスへと問いかけた。
「なんか面白くなってきたね♪で、爺さん、とどのつまりはどうするんだ?」
ロキの言葉に振り向いたゼウス。
その真面目だった顔を、恐ろしくも狡猾な表情へと変えてこう言い放った。
「簡単じゃよ。やられたらやり返す…それだけじゃ。」
・
「ゼウスさま、あのことは言わなくてよかったのですか?」
ロキやアマテラスたちは解散し、ゼウスと二人きりになったヘルメスが小さく問いかけた。
「そうじゃな…まだ早い。」
ゼウスは何やら考えながら、その問いかけに答える。
「奴の正体は、まだ皆には言わん方がいい…」
「ですが、あの方がまさか復活するなんて…これは神界において由々しき事態です。ゼウスさまの"御父上"さまが…」
「わかっておる。お前の不安もな…」
ヘルメスの言葉を聞いたゼウスは大きくため息をついた。
「今言えば混乱を招くだけじゃ。どうせ奴の狙いはわしじゃろうし、少し様子を見る。」
「プレイヤーたちに少しばかり影響が出ているようですが…それはよろしいので?」
「ロノスというプレイヤーのことじゃな?」
ヘルメスはその言葉にうなずくと、一つの映像を映し出した。
「先日のリシアの戦闘記録です。ロノスというプレイヤーはオーディンさまの加護持ちですが…イノチくんたちと戦った際、あり得ないスキルを発動しています。」
ゼウスはその映像をマジマジと眺めつつ、あることに気づいて小さくため息をつく。
「これは…時を戻すスキルか。」
「はい。ロノスは攻撃を受けた瞬間に自分の周りだけ時間を戻して、受けた攻撃を瞬時に無かったことにしています。ですが、こんなスピードで時間を巻き戻せるなんて…異常です。」
「…奴は"時の神"の力を手に入れた。そういうことか。」
「そうです。そして、彼にその加護を与えた神がいる…」
ヘルメスはそう告げて、流れている映像の横に再び先ほどの映像を流した。
オーディンと話す銀髪の青年。
ゼウスはヘルメスの言葉を聞きながら、目の前で流れる二つの映像を静かに眺めている。
そして…
「我が父よ、あなたはまた罪を重ねるか。今度は時の神を殺めるとは…」
そうつぶやいたゼウスの目は悲しげで、瞳に映る青年をジッと見つめていた。
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