247 / 290
第四章 全ての想いの行く末
18話 セイドの真実
しおりを挟む「BOSS…なぜレンジの奴はわたくしたちに正体を明かしたのでしょうか。」
「ん~」
サザナミ行きの馬車に揺られながら、フレデリカがイノチへ問いかけたが、ボーッと風景を眺めているイノチはどこか上の空だった。
「そうよね。バラさなければ、あたしたちも気づかなかったわけだし…なんでわざわざあんな真似したのかしら。」
「だよねぇ♪なにか裏があるのかなぁ♪」
エレナたちもレンジの行いが理解できないというように首を傾げているが、そんな彼女らの予想に反してイノチはさらっとつぶやいた。
「推測でしかないけど…あれはさ、わざとだと思うな。」
未だ空を見つめるイノチ。
「わざと…?なんでそんなことするのよ。あいつらにメリットなんかないじゃない…」
「そうだよぉ♪」
エレナとアレックスがさらに疑問を浮かべる中で、セイドがイノチの意見に同意する。
「それに関しては俺もイノチに同意だな。団長は意味のないことはしない人だが、意味がわからないことはよくするんだ。」
「セイド…あんたの言ってることはよくわかんないわね。」
「ほんとだよ♪意味わかんない♪」
「ハハハ…ひでぇ言われようだ。」
エレナたちの態度にセイドが苦笑いする横で、ずっと何かを考えていたフレデリカが再び口を開いた。
「わざと…ということはもしや…!」
「フレデリカ、何か気づいたの?!」
「さすがフレデリカさん♪すごぉい♪」
その様子にエレナもアレックスも感心した表情を浮かべており、イノチもセイドも彼女の言葉に興味があるのか、フレデリカへと視線を向けた。
しかし…
「わかるわけないですわ。」
肩をすくめて小さく息をつくフレデリカ。
その態度にイノチ、エレナ、セイドはズッコケてしまった。
「…った…たく!なんなのよ!あんたは!!」
「姐さん、笑いのセンスもあるんだな…」
「あははは♪フレデリカさん、面白いねぇ♪」
アレックスだけが大笑いしている中、あきれながら座り直すエレナとセイドの横で、イノチが起き上がりながら小さくこぼす。
「ハハ…まぁ、理由はなんにせよ、警戒はしないといけないことは確かだ。あんなこと言ってても、次にいつ襲ってくるか分からないし…ジパンに戻ったら、まずはシャシイさんにこの事を伝えないとな。」
「そうですわね。いろいろとやることが多そうですわ。」
「確かに…ノルデンやジプトのことも考えなきゃいけないわけでしょ?はぁ…めんどくさぁ~い!」
エレナはそう言って空を見上げた。
視線の先では、澄んだ青が広がる空の中には渡鳥の群れが見える。
「気持ちよさそうねぇ~」
そうつぶやくエレナにつられて、皆、空を見上げてボーッとしていたが、一人セイドだけは何かを考えるように口を開いた。
「イノチたちはジプトへ行かなきゃなんねぇんだろ?」
その言葉を聞いたイノチはセイドへ顔を向ける。
「あぁ、そうだな。当面の目標はそうだけど…」
「だよな。それでちょっと考えたんだが…」
あごに手を置き、神妙な雰囲気でそう話すセイドの様子に、イノチは体ごと真面目な視線を向けた。
「ジプト法国の神獣を仲間に加えたらどうだ?リシアはよ、ケンタとミノタがいるから当分はおかしな真似はできないと思うぜ。あいつらに勝てるのはせいぜい団長くらいだだし…」
「なるほどですわ。確かに神獣たちの力は強大ですし…彼らが防衛戦になってくれれば、各国からの侵攻はある程度抑えられるかもしれません。」
「でもさ、それだとノルデンにも行かなきゃならなくなるじゃん。そんな時間はないよ?」
悩ましげな顔を浮かべるイノチに対して、それには及ばないといった様子でセイドが返す。
「ノルデンには今、神獣はいないらしいぜ。」
「え、そうなの?」
「あぁ、なんでも神の怒りを買って殺されちまったらしいからな。その代わり、古の神さまたちが要所要所で国を支配してるって噂だ。」
「古の…神々…?」
「そうだ。正体はわかんねぇけど、前にノルデンから来た行商が言ってたから間違いねぇ。だから、ノルデンには行っても意味がないってわけだ。」
そう笑うセイドの前で、イノチはあることを思い出していた。
ミコトたちが戦ったヴィリとヴェーという名の謎の二人組。
タケルたちがまったく及ばなかったと聞いた時から違和感を感じてはいたのだが、もしかして…
「なら、当面はウォタの復活とジプトの神獣に決定ね!」
イノチがそこまで考えたところで、エレナがパンっと手を叩いて区切りをつけた。
「辛気臭い話はこれで終わり!ただでさえサザナミまでの道のりがしんどいのに、こんな話ばかりじゃもたないわ!!それより、あたしは他に気になることがなるのよ!」
「なんだよ、エレナ。藪から棒に…」
腕を組んで偉そうに切り出したエレナは、イノチに向けて指を立てるとセイドを見てこう告げた。
「セイド!あんたの兜の下、そろそろ見せなさい!」
「げっ!」
ビシッと指差すエレナに対して、セイドは思い出したかのように身構える。
「確かに…仲間になったのに素顔もわからないのはいかがなものかと…」
「そうだねえ♪セイドっちのお顔見たいねぇ♪」
「そうでしょそうでしょ!」
フレデリカもアレックスもそれには賛成のようだ。
そんな二人に同意を求めながら、エレナは再びセイドに向き直る。
「という事でセイド、兜を外しなさい。これはBOSSの命令よ!」
「おい…俺は命令してねぇぞ!」
「そ…そうだぜ、エレナ姐さん!」
あきれるイノチにセイドが同調するが…
「BOSS…?わかってるわよ…ね?」
睨みつけるでもなく、今まで見せたことのない笑顔を向けてくるエレナに無意識に身震いするイノチ。
「セイド…すまん!」
「なっ…イノチ!そりゃないぜ!」
「いいじゃんか!減るもんでもないし…エレナたちの意見も一理ある!仲間なんだから素顔は晒そう…な。」
「晒すって…くそ~」
セイドは諦めたように肩を落とした。
そして、兜に手を当てながらこう告げる。
「俺は自分の顔にコンプレックスがあるんだよ。あまり見せたくなくてフルアーマーにしてんのに…」
「要するに顔に自信がないんでしょ!そんなこと誰も気にしないからさっさと脱ぎなさいな!」
「男は度胸ですわ。」
「いっちょ、かましたろう♪」
最後のアレックスの言葉はよくわからないと思いつつ、イノチもその様子を見守ることにした。
大きなため息をつきながら、兜を脱いでいくセイド。
そして、全て脱ぎ切り、皆に顔を向ける。
「これでいいか?」
しかし、顔を見せても誰からの反応もない。
訝しげに感じたセイドは、一同を見渡した。
「おい!お前らが脱げって言ったんだから、なんとか言ってくれよ!」
そう怒るセイドの前で、エレナもフレデリカもアレックスも、そしてイノチですら驚愕の表情を浮かべている。
ーーー言葉にならない
イノチも他のメンバーも言葉を失っているし、アレックスのこんな表情も珍しいのではないだろうか。
一同がどうしていいかわからずに立ち尽くしていると、震えていたエレナがその静寂を破る。
「な…め…め…め…」
「お…おい…エレナ姐さん?だ…大丈夫か…?俺の顔…やっぱり変だよなぁ…」
心配するセイドをよそに、エレナはゆっくりと彼に人差し指を向けると、ワナワナと震えてこう叫んだ。
「あんた、めっちゃイケメンじゃない!!!!!」
「え?」
エレナの言葉に驚くセイド。
しかし、イノチが最後にこう告げる。
「セイド…お前はいいやつだと俺はずっと思ってた。だけどな…今から嫌いだ。」
「な…!なんでそうなる!あ~だから嫌だったんだ!!ちくしょぉぉぉぉぉ!!」
馬車に揺られながら、セイドの悲痛の叫びが空へとこだましていった。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる