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第四章 全ての想いの行く末
18話 セイドの真実
しおりを挟む「BOSS…なぜレンジの奴はわたくしたちに正体を明かしたのでしょうか。」
「ん~」
サザナミ行きの馬車に揺られながら、フレデリカがイノチへ問いかけたが、ボーッと風景を眺めているイノチはどこか上の空だった。
「そうよね。バラさなければ、あたしたちも気づかなかったわけだし…なんでわざわざあんな真似したのかしら。」
「だよねぇ♪なにか裏があるのかなぁ♪」
エレナたちもレンジの行いが理解できないというように首を傾げているが、そんな彼女らの予想に反してイノチはさらっとつぶやいた。
「推測でしかないけど…あれはさ、わざとだと思うな。」
未だ空を見つめるイノチ。
「わざと…?なんでそんなことするのよ。あいつらにメリットなんかないじゃない…」
「そうだよぉ♪」
エレナとアレックスがさらに疑問を浮かべる中で、セイドがイノチの意見に同意する。
「それに関しては俺もイノチに同意だな。団長は意味のないことはしない人だが、意味がわからないことはよくするんだ。」
「セイド…あんたの言ってることはよくわかんないわね。」
「ほんとだよ♪意味わかんない♪」
「ハハハ…ひでぇ言われようだ。」
エレナたちの態度にセイドが苦笑いする横で、ずっと何かを考えていたフレデリカが再び口を開いた。
「わざと…ということはもしや…!」
「フレデリカ、何か気づいたの?!」
「さすがフレデリカさん♪すごぉい♪」
その様子にエレナもアレックスも感心した表情を浮かべており、イノチもセイドも彼女の言葉に興味があるのか、フレデリカへと視線を向けた。
しかし…
「わかるわけないですわ。」
肩をすくめて小さく息をつくフレデリカ。
その態度にイノチ、エレナ、セイドはズッコケてしまった。
「…った…たく!なんなのよ!あんたは!!」
「姐さん、笑いのセンスもあるんだな…」
「あははは♪フレデリカさん、面白いねぇ♪」
アレックスだけが大笑いしている中、あきれながら座り直すエレナとセイドの横で、イノチが起き上がりながら小さくこぼす。
「ハハ…まぁ、理由はなんにせよ、警戒はしないといけないことは確かだ。あんなこと言ってても、次にいつ襲ってくるか分からないし…ジパンに戻ったら、まずはシャシイさんにこの事を伝えないとな。」
「そうですわね。いろいろとやることが多そうですわ。」
「確かに…ノルデンやジプトのことも考えなきゃいけないわけでしょ?はぁ…めんどくさぁ~い!」
エレナはそう言って空を見上げた。
視線の先では、澄んだ青が広がる空の中には渡鳥の群れが見える。
「気持ちよさそうねぇ~」
そうつぶやくエレナにつられて、皆、空を見上げてボーッとしていたが、一人セイドだけは何かを考えるように口を開いた。
「イノチたちはジプトへ行かなきゃなんねぇんだろ?」
その言葉を聞いたイノチはセイドへ顔を向ける。
「あぁ、そうだな。当面の目標はそうだけど…」
「だよな。それでちょっと考えたんだが…」
あごに手を置き、神妙な雰囲気でそう話すセイドの様子に、イノチは体ごと真面目な視線を向けた。
「ジプト法国の神獣を仲間に加えたらどうだ?リシアはよ、ケンタとミノタがいるから当分はおかしな真似はできないと思うぜ。あいつらに勝てるのはせいぜい団長くらいだだし…」
「なるほどですわ。確かに神獣たちの力は強大ですし…彼らが防衛戦になってくれれば、各国からの侵攻はある程度抑えられるかもしれません。」
「でもさ、それだとノルデンにも行かなきゃならなくなるじゃん。そんな時間はないよ?」
悩ましげな顔を浮かべるイノチに対して、それには及ばないといった様子でセイドが返す。
「ノルデンには今、神獣はいないらしいぜ。」
「え、そうなの?」
「あぁ、なんでも神の怒りを買って殺されちまったらしいからな。その代わり、古の神さまたちが要所要所で国を支配してるって噂だ。」
「古の…神々…?」
「そうだ。正体はわかんねぇけど、前にノルデンから来た行商が言ってたから間違いねぇ。だから、ノルデンには行っても意味がないってわけだ。」
そう笑うセイドの前で、イノチはあることを思い出していた。
ミコトたちが戦ったヴィリとヴェーという名の謎の二人組。
タケルたちがまったく及ばなかったと聞いた時から違和感を感じてはいたのだが、もしかして…
「なら、当面はウォタの復活とジプトの神獣に決定ね!」
イノチがそこまで考えたところで、エレナがパンっと手を叩いて区切りをつけた。
「辛気臭い話はこれで終わり!ただでさえサザナミまでの道のりがしんどいのに、こんな話ばかりじゃもたないわ!!それより、あたしは他に気になることがなるのよ!」
「なんだよ、エレナ。藪から棒に…」
腕を組んで偉そうに切り出したエレナは、イノチに向けて指を立てるとセイドを見てこう告げた。
「セイド!あんたの兜の下、そろそろ見せなさい!」
「げっ!」
ビシッと指差すエレナに対して、セイドは思い出したかのように身構える。
「確かに…仲間になったのに素顔もわからないのはいかがなものかと…」
「そうだねえ♪セイドっちのお顔見たいねぇ♪」
「そうでしょそうでしょ!」
フレデリカもアレックスもそれには賛成のようだ。
そんな二人に同意を求めながら、エレナは再びセイドに向き直る。
「という事でセイド、兜を外しなさい。これはBOSSの命令よ!」
「おい…俺は命令してねぇぞ!」
「そ…そうだぜ、エレナ姐さん!」
あきれるイノチにセイドが同調するが…
「BOSS…?わかってるわよ…ね?」
睨みつけるでもなく、今まで見せたことのない笑顔を向けてくるエレナに無意識に身震いするイノチ。
「セイド…すまん!」
「なっ…イノチ!そりゃないぜ!」
「いいじゃんか!減るもんでもないし…エレナたちの意見も一理ある!仲間なんだから素顔は晒そう…な。」
「晒すって…くそ~」
セイドは諦めたように肩を落とした。
そして、兜に手を当てながらこう告げる。
「俺は自分の顔にコンプレックスがあるんだよ。あまり見せたくなくてフルアーマーにしてんのに…」
「要するに顔に自信がないんでしょ!そんなこと誰も気にしないからさっさと脱ぎなさいな!」
「男は度胸ですわ。」
「いっちょ、かましたろう♪」
最後のアレックスの言葉はよくわからないと思いつつ、イノチもその様子を見守ることにした。
大きなため息をつきながら、兜を脱いでいくセイド。
そして、全て脱ぎ切り、皆に顔を向ける。
「これでいいか?」
しかし、顔を見せても誰からの反応もない。
訝しげに感じたセイドは、一同を見渡した。
「おい!お前らが脱げって言ったんだから、なんとか言ってくれよ!」
そう怒るセイドの前で、エレナもフレデリカもアレックスも、そしてイノチですら驚愕の表情を浮かべている。
ーーー言葉にならない
イノチも他のメンバーも言葉を失っているし、アレックスのこんな表情も珍しいのではないだろうか。
一同がどうしていいかわからずに立ち尽くしていると、震えていたエレナがその静寂を破る。
「な…め…め…め…」
「お…おい…エレナ姐さん?だ…大丈夫か…?俺の顔…やっぱり変だよなぁ…」
心配するセイドをよそに、エレナはゆっくりと彼に人差し指を向けると、ワナワナと震えてこう叫んだ。
「あんた、めっちゃイケメンじゃない!!!!!」
「え?」
エレナの言葉に驚くセイド。
しかし、イノチが最後にこう告げる。
「セイド…お前はいいやつだと俺はずっと思ってた。だけどな…今から嫌いだ。」
「な…!なんでそうなる!あ~だから嫌だったんだ!!ちくしょぉぉぉぉぉ!!」
馬車に揺られながら、セイドの悲痛の叫びが空へとこだましていった。
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