ガチャガチャガチャ 〜職業「システムエンジニア」の僕は、ガチャで集めた仲間とガチャガチャやっていきます〜

noah太郎

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第四章 全ての想いの行く末

30話 突然の別れ

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「よかった!間に合いました!」


聞き覚えのある声と見覚えのある後ろ姿。
突然、目の前に現れたその人物はゆっくりと立ち上がると、顔はそのままに言葉だけを向けてくる。


「イノチ様、ここは私にお任せを…エレナ様とセイド様をお願いします。」

「その声は…モエさん!?」


イノチはその正体に気づいて驚いた。
アルスのナイフを見切り、セイドの窮地を救った人物がまさかモエだったとは…


「このような力、お隠ししていたことはお詫びしなければなりません。ですが、まずはこの場を凌ぐことが先決です!」


モエにそう言われ、ハッとしたイノチはすぐにセイドへと指示を出す。


「セイド、立てるか?!」

「さっきのは焦ったが…まだ戦えるぜ!」


そう言って槍を構え直すセイドを確認したイノチは、携帯端末を瞬時に操作して、アイテムボックスからポーションを取り出した。

そして、麻痺により動けずにいるエレナにポーションを飲ませていく。


「これで麻痺はとれたはずだ。」

「あ…ありがとうBOSS…」


回復してゆっくりと起き上がるエレナは、先ほどとはどこか様子が違って見えた。

だが、その違和感を追求する時間はイノチにはない。
モエの登場に驚いていたアルスが、表情を戻して彼女に問いかけたのだ。


「君は…何者だい?」

「それをあなたにお伝えする義理はありません。」

「まぁ…そう言うよ…ね!」


その瞬間、アルスがモエに向かって駆け出すと、それに呼応するようにモエも前へと飛び出した。

二人の姿が見えぬまま、金属音と火花だけが何度も散っては消えを繰り返している。


「モエさん…いったい何者なんだ…」


目の前の光景を見ていたイノチが唸るようにこぼすと、それを聞いたセイドも言葉を失ったまま小さくうなずいた。

一方で、アルスはモエとのバトルを純粋に楽しんでいるようだ。


「やるなぁ!ここまで僕とやれる人間がいたなんて…僕、けっこう本気出してるんだよ?」

「無駄口を叩くと舌を噛みますよ!」

「ハハハ…いいね!なら、これならどうだい?」


アルスはさらに動きを加速させるが、モエもその動きについていく。


「これにもついてくるか!大したもんだよ!エレナじゃこうはいかない!」

「お褒めいただき、光栄ですね!」


その後も互いに何度か火花を散らした後、アルスは満足したようにいったん距離をとって元の場所に着地した。

モエもイノチたちの前に戻ってくると、視線は逸らさずに小さくつぶやく。

その声には少し焦りもうかがえた。


「イノチ様…あの殿方はかなりの手練れです。私も時間を稼ぐのがやっとでございます。ここは私を囮に逃げていただき…」

「だめよ!!」


モエがそこまで告げた途端、エレナがそれを否定した。

先ほどまでうつむいていた顔を起き上がらせ、エレナは兄であるアルスをジッと見つめている。

そんなエレナを訝しく思ったイノチが、諭すように口を開いた。


「エレナ…ここはお前の安全が一番優先だぞ!モエさんの言うとおりに…」


しかし、そこまで告げたイノチの言葉を遮ってエレナはそれを否定した。


「違うわ、BOSS…それは違うの!」

「何が違うんだ!」

「…ここでの守られるべき優先順位はあたしじゃない!一番に守るべきはBOSS…あんたよ。」

「何言ってんだよ!あいつはお前を狙ってんだぞ!」

「違う!私が死んでもそれだけで済むけど、BOSSが死んだらフレデリカとアレックスも死んじゃうのよ!」

「…っ!!」


イノチはエレナに言われて思い出した。
自分が死ねばガチャ魔法で召喚した仲間たちも消えてしまうことを。


「兄さんはまったく本気も出してない…モエさんでもそのうち対応できなくなる。そうすればみんな…」

「くそっ!だけど…いったいどうしたら…」


悔しげな表情を浮かべるイノチ。
モエもセイドも同様に困惑する中で、アルスだけは小さく笑いながらエレナの話に聞き入っている。


「この場を収める方法は一つしかない…」

「なんだよ…ってまさか!」

「想像の通りよ…」


エレナはそう言って小さな笑顔を皆に向けた。
そして、涙を浮かべたままニコリと笑う。


「あたしの旅はここまで。もっとBOSSたちと一緒にいたかったけど…残念だわ。」

「おまっ…何言ってんだ…」

「フレデリカとアレックス…あと他のみんなにもよろしく伝えて…」

「ちょっ…エレナ!」


イノチはエレナを止めようと手を伸ばすが、その手をはたいてエレナはモエの前まで歩み出る。

そして、アルスへ強い眼差しを向けて口を開いた。


「兄さん…一緒に帰るわ。」

「ようやく理解したんだね。」


近づいてくるエレナを見て、アルスは持っていたナイフを納めて肩をすくめると、イノチへと向き直る。


「そういうことだから…君たちもエレナの意思を尊重してくれるよね。」

「うるせぇ!…エレナ!何でだよ!」

「……」


イノチの言葉に対し、エレナは背中を向けたまま何も答えない。


「お前はそれでいいのかよ!望んでない結婚なんかさせられて…!いつもの高飛車なお前はどこへ行ったんだよ!」

「…」


イノチからはその表情は見えないが、エレナは確実に自分の気持ちを押し殺しているのがわかった。

なぜなら、その肩は震えているからだ。

だが、アルスはそれを見てクスリと笑うと、エレナの肩に手を置いて自分の方へと体を寄せた。


「さぁ、エレナの気が変わらないうちに帰るとしよう。」

「待てよ!」

「待たないよ。君たちはちゃんと理解するといい…エレナの判断の正しさをね。」


睨みつけてくるイノチに対して、アルスはすました顔でそう告げる。

そして、そのまま部屋の入り口まで歩いて行くと、イノチをチラリと見て小さくこぼした。


「君の召喚術式はノルデンに戻れば解くことができる。それまではせいぜい死なないでくれよ。」


そう言い残し、エレナとともに暗闇に消えるアルス。

イノチはエレナたちがいた場所をぼう然と見つめていることしかできなかった。
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