ガチャガチャガチャ 〜職業「システムエンジニア」の僕は、ガチャで集めた仲間とガチャガチャやっていきます〜

noah太郎

文字の大きさ
265 / 290
第四章 全ての想いの行く末

36話 トヌスの悩み

しおりを挟む

広がる大海原。
潮風に乗って大きく空を舞うかもめの群れ。

緩やかな波の音は、小さく鳴っては消えていく。

ここはトウトの南に位置し、多くの島々が点在する海域。

トヌスがスネク商会の会長であるボアと共に、ノルデンからの侵攻に備えて防衛線を張るために訪れている海域都市である。

すでにボアの計らいによって、必要な船の用意と乗組員の収集はほぼ終えており、あとはノルデンが侵攻してきた時に迎え撃つのみである。

だが、未だノルデンからの侵攻の知らせはなく、トヌスはぼんやりとした日々を過ごしていた。


「トヌス殿…」


港の端で海を眺めていたトヌスは、ボアに話しかけられて振り向いた。


「ボア会長…すみませんね。ノルデンの動きが全くなくて…これじゃ、何のために手伝ってもらったのかわからねぇや。」

「それは気にしないでも良いですよ。もともと、彼らは国における海域の防御が生業でもあるのですから。長期戦は慣れたものですし、やることは普段と変わりませんからね。」


トヌスは申し訳なさそうに頭を下げ、再び海を見る。
その横に立ち、ボアもまた海を眺めている。


「して、トヌス殿。ノルデンは本当に攻めてくるのですか?」


ボアは何気なく問いかけたつもりだったが、トヌスは少し肩を落として答えた。


「…わからない。それが本音です。BOSSからも連絡は今のところねぇし、待ちぼうけになるかもしれない…」


トヌスは不安だった。
いくらイノチの指示とはいえ、来るかもわからない敵のためにボアたちに労力を使わせている。

初めは疑わなかったイノチの言葉も、トヌスの中で今は悩みの種となっているのだ。

それでも、イノチを信じる気持ちは変わらない。
一番良いのは、ノルデンからの侵攻は無くなったという報告がイノチから上がってくることなのだから。

戦いが起きて、ボアたちが傷つくことを避けたいという気持ちは変わらない。戦わないで解決できるなら、それに越したことはない。

しかし、戦わなくては守れないものもあることは確かだ。

トヌスはそう考えて拳を握る。
それを見ていたボアは、小さく笑ってトヌスに言葉をかけた。


「侵攻が無いならないで、それに越したことはないですよ。」


心を読まれたようで、トヌスは驚いてボアに目を向ける。
だが、ボアは気にすることなく話を続けた。


「争いなど起きないことが一番良い。だが、守るためには戦うことも必要です。我らは今、万事に備えている。戦況とは常に動くものですからね。戦争は目の前だけで起きるものではないのです。」


トヌスは言葉が出なかった。
申し訳ないという気持ちが残る反面、ボアの言葉が嬉しかったからだ。

トヌスは再び海を見る。
穏やかな海と爽やかな空は、まるで自分を応援してくれているかのように眩しく輝いていた。

大きく鼻で息を吸い込み、トヌスは深呼吸をする。
深く息を吐いていくと、一緒に不安や迷いも吐き出せた気がした。

そんな時、携帯端末が鳴る。
手に取って見てみると、メッセージが2通届いていた。


(一つはイノチから…もう一つは…ゲンサイ?)


少し訝しげに感じつつ、トヌスはまずボアに断りを入れ、ゲンサイからのメッセージを開く。


「っと…なになに?「戻る」って…またここに戻るってか。相変わらず短ぇ文章だな。」


トヌスはクスリと笑いながら、ボアにゲンサイが戻ってくることを伝えた。


「かしこまりました。あの方はお強いですからね。仲間の士気も上がりますから大歓迎ですよ。」


ボアは笑いながら、歓迎の準備をしてくる旨をトヌスに伝え、その場を後にする。トヌスはその背を見送ると、再び携帯端末に顔を戻した。


「さて…次はBOSSからのメッセージだが…」


独り言をつぶやきながら、メッセージをタップする。
そして、文章に目を通していくトヌスであったが、目を進めるにつれて、表情がみるみると険しいものになっていった。


「マジか…エレナの姉御が…」


すぐにメッセージを送り返すトヌス。
しかし、イノチからの返事は…


『トヌスはそこで防衛線を張ったまま待機してくれ。ゲンサイもじきに到着するだろうから、二人にそこを任せるよ。場合によっては…本当にノルデンの侵攻が始まるかもしれないから。』


それを見て、『了解』とだけ返したトヌス。
だがその心には、重たいものが広がっていった。

ーーーイノチの奴はこれだけ戦っているのに…俺は…

トヌスはそう思って拳を地面に叩きつける。
本心では悔しくて悔しくて仕方がないのだ。本当にイノチの力になれているのかわからない焦りが、トヌスをイラつかせる。

ーーー本当なら、すぐにイノチの下へ飛んでいきたい。

だが、この地の防衛を任されている手前、そんな勝手は許されない。

イノチは信頼してここを任せてくれているわけだし、それを裏切ることは絶対にしてはならないことも、トヌスにはわかっているのだ。

そんな複雑な想いを抱いて悩むトヌスだが、ふと胸のポケットに挿してあるアイテムに気がついた。

謎の美女イザムから受け取った『煙管(キセル)』。
これは使えば、今一番欲しいSRを引くことができるというなんともチート的なアイテム…

不意にトヌスは煙管を取り上げた。
金と唐竹模様の独特なデザインだが、見た目は普通の煙管となんら変わりはない…

だが、これを眺めていると不思議な感覚に襲われる。

吸い口の部分に口を触れたくなる…
艶かしく輝く金色の吸い口に目を奪われてしまう…

その誘惑に負けそうになりつつ、すんでのところで正気を取り戻したトヌスだったが、ふとある考えが浮かんだ。

ーーーこれを使えばイノチの手助けができるかもしれない…

これを使えば一番欲しいSRが手に入る。

だが、イザムはそれがアイテムとも装備ともキャラとも言わなかった。そこから推測できることは、自分の望みを叶えるに一番相応しいSRが出てくるということだった。


(ものは試しだ…悶々としてても何にもならねぇ。なら、一つこれを使ってみようじゃねぇか!)


イザムから受け取った時は、得体が知れないと感じて使う気にならなかったが、今は明確な目的が生まれている。

ーーーならば使うべきだ。

そう考えたトヌスは再び煙管に目を向け、恐る恐る口に近づけた。

少しずつ…ゆっくりと…煙管を口元へ運び、吸い口を咥えて一吸いする。火などつけていないのだから出るはずもない煙を吐き出すために、煙管を一度口から離し、フゥっと息を吐き出して驚いた。

口から白い煙が吐き出され、それがみるみるうちに大きく膨らんでいくのだ。


「な…なんだこれは!」


煙を吐き出し終えて驚くトヌスだが、目の前でグルグルと渦を巻く煙から目が離せない。

しかし、トヌスは突然目眩に襲われる。


(あ…あれ?なん…だ…視界が…ぼやけ…)


そこまで考えて、トヌスはイザムの言葉を思い出した。


『これはお前の魔力を消費する。』

(これは…魔力を使った…から…か…)


そこまで考えて、トヌスの意識は途絶えたのだった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

乙女ゲームの正しい進め方

みおな
恋愛
 乙女ゲームの世界に転生しました。 目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。  私はこの乙女ゲームが大好きでした。 心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。  だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。  彼らには幸せになってもらいたいですから。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

【完結】ドアマットに気付かない系夫の謝罪は死んだ妻には届かない 

堀 和三盆
恋愛
 一年にわたる長期出張から戻ると、愛する妻のシェルタが帰らぬ人になっていた。流行病に罹ったらしく、感染を避けるためにと火葬をされて骨になった妻は墓の下。  信じられなかった。  母を責め使用人を責めて暴れ回って、僕は自らの身に降りかかった突然の不幸を嘆いた。まだ、結婚して3年もたっていないというのに……。  そんな中。僕は遺品の整理中に隠すようにして仕舞われていた妻の日記帳を見つけてしまう。愛する妻が最後に何を考えていたのかを知る手段になるかもしれない。そんな軽い気持ちで日記を開いて戦慄した。  日記には妻がこの家に嫁いでから病に倒れるまでの――母や使用人からの壮絶な嫌がらせの数々が綴られていたのだ。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...