274 / 290
第四章 全ての想いの行く末
45話 救出作戦
しおりを挟む「さて…お次はどうするのじゃ?」
ウォタの帰還を喜ぶメンバーに、再び問いかけるゼウス。
確かに彼の言うとおり、やることはまだある。そう考えてイノチは立ち上がると、ゼウスに向かってこう告げた。
「あと1人、仲間がまだ捕まったままだからな。もちろん、助けに行く。」
「そうか…だが、急がねばクロノスたちがまた来るやもしれんぞ?」
ゼウスはひげをさすりながらそう告げたが、イノチはそれを鼻で笑った。
「それは大丈夫じゃないかな…ログアウトする時に、奴らのアクセ権限を削除しといたから。当分はこの世界には来れないんじゃね?それにさ、ヘルメスさんはこっち側なんだろ?だったら、時間を稼いでくれるんじゃないの?」
「ふむ、そこまでちゃんと考えておったか。さすがじゃな。」
「はっ…どうせ知ってたくせに…白々しいな。」
感心するゼウスの言葉に肩をすくめるイノチ。それから仲間たちの方を見てこう告げた。
「さてと…作戦続行と行きますかね。その前に、みんなには伝えとくけど、俺のハンドコントローラーはまだ万能ってわけじゃないから。戦いが苦手なのは変わらないから、その辺は理解しといてね。」
「あれで苦手…?よく言うですわ!」
「ほんとほんと♪BOSS、カッコよかったよぉ♪」
皮肉っぽく告げるフレデリカと嬉しそうに笑うアレックスに、イノチは苦笑いを浮かべる。
「確かに、このハンドコントローラーはなんでもできるんだけど…それには"コード"が必要なわけ。その事象を発生させるためのコードを知らないと、何もできないんだよ。」
「なんだかよくわからんが…我との戦いで時間を操ったのがそれか?」
ウォタの言葉にイノチは「ご名答。」と指を差す。
「あれは空間把握と時間操作のコードを書き換えて、俺とウォタの間に時間的なズレを起こしたわけ。」
「でもさ、時間を操れるとか最強じゃない?それを使えば、エレナさんも簡単に助けられるんじゃ…」
今度はミコトがそう問いかけるが、イノチは首を横に振る。
「残念ながら、空間把握も限定的にしか使えないから、狭い範囲でしか時間操作も使えないんだ。あれはウォタが操られていて、動きが単純だったからできたことなんだよ。」
「ならば、クロノスたちのように、どこかへ飛ばしてしまうのはどうじゃ?」
「なんであんたが質問する側にいんだよ!」
ゼウスの言葉を聞いてツッコミを入れるイノチだが、ゼウスは笑って誤魔化している。それを見て、イノチはあきれたように大きくため息をつくと、再び説明を再開した。
「クロノスたちからはアクセス権を剥奪しただけで、俺が直接的にどこかへ飛ばしたわけじゃないからな。」
「アクセス権を…?剥奪…?もう少しわかりやすく説明してほしいですわ。」
そう腕を組むフレデリカの横で、アレックスや他のメンバーも頷いている。
「う~ん…そうだなぁ。この説明は少し長くなるから、今は簡単に説明するとだな…わかりやすく…わかりやすくねぇ…」
イノチは頭を掻きながらこう告げた。
「このゼウスのおっさんもクロノスって奴らも別の世界の人間で、この世界に来るためには"通行証"みたいなものを持っている。それを奪い取って元の世界へ強制送還してやったのさ。だけど、アルスたちはそれを持ってないから、同じことをするのは無理…こんなんでわかるかな?」
アレックスはちょっと理解が追いついていないようだが、フレデリカは納得したように頷いていた。だが、疑問は残っているようだ。
「別の世界…それがいったい何なのかが気になりますが…今は我慢いたします、ですわ。」
「助かるよ、フレデリカ…」
イノチはそう小さく呟くと、再び話し始める。
「という事で、アルスたちが襲ってきたら、みんなに対応してもらわないといけないってこと。情報によると、エレナの父ちゃんもいるし、ランドール家の執事やメイドもけっこう強いらしいからな。どうやってエレナの元へ行くか…なにか作戦を考えないと…」
そう悩むイノチを見て、ウォタが口を開いた。
「単純に陽動で良かろう。」
「陽動…?」
「そうだ。我らがグループに分かれて屋敷へ侵入し、周りの注意を逸らしているうちに、本命はエレナの元へ向かう…そういうことだな。」
「でもさ、そんな単純な作戦でうまくいくかなぁ…」
「いくと思うぞ。」
「それ…お前の感覚で言ってないよな?ウォタの強さを基準に考えられても困るんだが…」
イノチは不安が拭えないのか、ウォタへその理由を問いかけるが、ウォタは自身ありげにこう告げた。
「我が何も考えとらんみたいに言うでないわ!奴らは、今回のことを与する神たちに任せきりにしとる。まさか、神が敗北するとは思っとらんだろうから、対策なんて立てとらんはずだ。だから、陽動程度の作戦で十分なのだ。」
その言葉にイノチはなるほどといった表情を浮かべた。ウォタも誇ったように腕を組み、鼻を高くしている。
「それなら作戦はそれで行こう。アキンドさん、屋敷の地図を見せてもらえますか?」
それを聞くや否や、待ってましたとばかりに一瞬で地図を広げるアキンド。そして、すぐさま説明を始める。
「このまま向かうと、屋敷の西側に着きます。エレナさまのお部屋は、おそらく東側のこの辺りと思われますので、陽動であれば、屋敷の西側と正面の二方向から仕掛けるのが良いでしょうな!」
「なら、救出部隊は屋敷の裏側を通って、この東の塔に向かう。それでいいかな?」
アキンドは「それが妥当でしょう。」とうなずいた。すると、今度はフレデリカが質問を投げかける。
「グループ分けはどういたします?エレナの父やアルスがどこにいるかで変わってくると思いますが…」
それについても、アキンドが嬉しそうに頷いて応えた。
「あくまで推測ですがね…エレナさまのお父上であるクリスさまは、西側に書斎を構えております。ですから、西側か正面側に向かわれるかと…ただし、どちらかに確定させるのは難しい。ですが、あの方も元はフェーデを名乗られていた方…戦局を見極める目はお持ちです。」
「なるほどですわ…」
アキンドの答えにフレデリカは少し悩んだが、ミコトをチラリと見て、何かを決心したかのように口を開く。
「ならば、こうしましょう。私とアレックスは正面から、ミコトとゼンさま、メイは西側から仕掛けます。」
「なら、我とイノチが救出部隊であるな。」
作戦の中核だと知り、ウォタは嬉しそうな顔を浮かべた。だが、イノチがフレデリカに理由を問いかける。
「フレデリカの考えを否定するわけじゃないけどさ…一応、グループ分けの理由だけ聞いてもいいか?」
フレデリカは小さく頷いてそれに答え始めた。
「まずは東側、ここにはアルスがいる可能性が高い。ですから、ウォタさまをぶつけます。現状では、ウォタさま以外に彼に勝てる者はいませんので…。」
「それは確かにな…」
イノチもそれには納得した模様に首を縦に振り、それを確認したフレデリカは、なおも説明を続けていく。
「次に正面…作戦の始まりはここです。初めに私とアレックスで大きく暴れます。そうすればクリスの目はこちらに向くでしょう。そして、頃合いを見て西側にミコトたちが突撃します。クリスは冷静に戦況を見極めようとするはずですが、ミコトとゼンさまには初め、スキル無しでいてもらいますので、おそらくはわたくしたちを重要視するはずです。」
「なるほど…突然、西側に脅威が現れるわけか!いいね!そういうの大好き!!」
イノチは作戦の全容を把握して面白そうに笑った。ミコトもメイもアレックスも、皆理解したと頷いている。
すると、アキンドがテンションを高くして大きく叫んだ。
「燃えてきましたなぁ!!それでは、エレナさま救出作戦、開始と行きましょうぞ!!」
その声に全員が拳をかざして声を合わせる中、ゼウスは一人、小さく笑みを浮かべていた。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる