287 / 290
第四章 全ての想いの行く末
58話 エレナ+いじる=?
しおりを挟む「イノチよ!!なんであそこで止めるのだ!あれを受け切ってこそ、カッコいい竜種たる所以…みたいに締めくくるつもりだったのだぞ!」
ウォタは、せっかく良いところだったのに台無しにされたと喚いているが、イノチはそれに怒っている。
「あほか!!あんなん食らったら、お前死ぬわ!!!!!」
恨めしそうな視線を向けるウォタに対して、イノチは「せっかく生き返ったのに…これだから戦闘狂は…」などと、ブツクサと文句をこぼしている。
それを側から見ていたヴェーは、何が起きているのかすでに理解ができなかった。横にいるヴィリも、口をあんぐりと開けたまま驚きを隠さずにいるようだ。
オーディンだけが、表情を変えずにジッと一人の男を見据えているようだ。
その視線の先…仲間たちに囲まれて、笑い合っているイノチの姿を。
ふと、オーディンが口を開いた。
「今のを止めたのは…お前か?」
その言葉にイノチが振り向く。
「そうだ、と言ったら…?」
挑発か…探り合いか…その真意はわからないが、イノチの発言に対して、ヴェーが声を上げた。
「お前…!兄様の質問に…答えろ…失礼…だ!」
ヴィリも怒った表情を浮かべているが、イノチの方も黙ってはいない。
「いやいや…!失礼だと?何言ってんだよ!お前らだっていきなり襲ってきたんじゃないか!お互い様だし、俺は仲間を守っただけ…それに、得体の知れないやつに手の内なんか見せるわけないだろ!」
「言わせて…おけば…!我らを…なんだと心得る!」
「知らねぇし!たとえ神様だって言われても、もう何にも驚かねぇよ!」
「くっ…貴様…!」
だが、今にも飛び出しそうなヴェーを止めたのは、オーディンであった。前を向いたまま、手を差し出してヴェーの行く手を遮ったのだ。
「兄様…」
「よい…お前たちでは、奴には敵うまい。」
その言葉に二人は絶句した。
だが、冷静に考えてみれば、オーディンが本気でなかったとしても、あの人間はその攻撃を防いだのだ。しかも、おそらくは神の権限を使って、だ。
奴が開いているシステム画面がその証拠だ。
ヴェーがそれを伝えようとしたが、オーディンはわかっていると言うように振り向くことなく頷くと、その人間に問いかける。
「お前…その力をどこで?」
その言葉に、イノチは訝しげな顔を向けた。
「あん?どこでって…あんたら、知ってんじゃねぇの?」
意味深げに問い返すイノチに対して、オーディンは首を横に振る。それを見てイノチはため息をつくと、徐に話し始めた。
「あんたらが作ったガチャ魔法だよ。これで手に入れたんだ。これでいいか?」
「ガチャか…なるほどな。しかし、そこまで権限があるアイテムなど…一覧にあったか?」
オーディンはそうヴェーへ問いかけたが、彼女は首を横に振る。
「そんなもの…プレイヤーには…出さない…。あいつがなぜ持ってるか…不明…」
オーディンはその言葉に頷くと、再びイノチへと向き直った。
「…と言うことだが、本当にガチャ魔法で手に入れたのだな?」
「だからそう言っただろ?嘘なんかつかないさ。」
その言葉を聞いたオーディンは、小さく「ゼウスめ…」と呟いた。
だがここで、その問答に我慢ができない者が一人いた。
「あんた…さっきから偉そうなんですけど、一体何様なわけ!?」
ダガーの切っ先を向けて、オーディンに対してそう告げるのはエレナだ。その顔には苛立ちが募っているが、それを見たイノチは、完全に長い話に飽きたんだなと呆れてしまう。
反対に、オーディンに向かってそんな態度を取られたヴェーとヴィリは、完全に怒りを露わにした。
「おいおい!さっきから聞いてれば調子に乗りやがって!」
「お前たち…そろそろ…いい加減に…しろ。」
だが、イノチサイドも負けてはいない。
フレデリカやアレックスも参戦し、殺気を交えて言い返す。
「エレナの言う通りですわ。いきなり攻撃してきたのはそちらでしょう。お宅ら、まずは何者なのか名乗っては?」
「そうだよぉ♪ミコトさんにも謝れぇ♪」
イノチとオーディンはそうでもないが、周りの者たちが盛り上がっているこの状況で、笑っているのはウォタ一人だ。
「クハハハハ!お前たち、威勢が良くなったではないか!それでこそ、イノチの仲間である!御方たちよ、どうです?一つ、こやつらと手合わせしてみては…それとも、やめておきますかな?」
ウォタはそう言うと、笑みに鋭さを加えた。その問いかけに、オーディンは少し悩んだようだが、エレナを指差してこう告げる。
「女…お前の相手をしてやろう。」
「あ…兄貴…!?マジかよ…」
「そうです…兄様が…竜種ならまだしも…人間…などど…」
ヴェーもヴィリも兄の言葉に狼狽しているが、オーディンはどこか楽しげに見えた。
「あたしがご指名な訳ね!いいわよね、BOSS?」
そう問いながらも、すでにやる気満々のエレナ。
イノチは「はいはい、どうぞ。」と、あまり心配する様子もなく、ため息をつきながらそれに承諾した。
フレデリカとアレックスは少し不満げだったが、「攫われたエレナに花を持たせてあげますですわ。」とアレックスと頷いている。
そんな中、両手でダガーを回しながら前へと歩み出すエレナを見て、オーディンは口を開く。
「あの中では…お前が一番強いのか…どうなっているのだ。」
「お目が高いことね!今のあたしはウォタも超えてるって感じなの!痛い目見せてあげるわ!」
今度はそれを聞いたウォタが、後ろでイノチに駆け寄った。
「あれは本当か?!」とイノチの胸ぐらを掴んで振り回しているが、答えることなく、イノチ自身は達観した顔を浮かべて、ウォタにされるがままとなっている。
そんな戯れに気を取られることなく、エレナは2本のダガーを構えた。オーディンは、相変わらず無防備な体勢で真っ直ぐと立っている。
次の瞬間、エレナの姿が消えた。
開始の合図すらない奇襲攻撃だが、オーディンもそれに反応している。
突如、自身の右側に現れたエレナに対して、振り向くことなく右手だけを向けてオーラを放ったのだ。
だが、オーディンがその手応えのなさに疑問を浮かべ、右側に顔を向けた瞬間、反対側からエレナが現れて、オーディンへとダガーを振り抜いた。
それをしゃがんでかわしたオーディンは、真上にいるエレナに対して垂直に蹴りを放つ。だが、エレナはその蹴りを空中での前転でいなすと、蹴り上げられたオーディンの脚をタンッと踏みつけ、前方に飛び退ける。
そして、着地と同時にスキルを発動。
エレナが「影縫い…!」と叫んだ瞬間、オーディンの体を5度の斬撃が襲った。
が、オーディンはこれに反応しており、どこから出したのかわからないが、片手に携えた剣でその斬撃を全ていなしてしまう。
だが、斬撃と共に駆け抜けたエレナは、オーディンの動きに動揺することなく、楽しげに笑って再び飛びかかった。
「イノチ…あれは本当にエレナか?あの方と…あれだけの戦いを繰り広げるとは…」
ウォタが唖然とし、そうイノチに問いかける様子を見て、周りのメンバーも、エレナの強さの異常さに気づいたようだ。
「あ…うん、一応…エレナだよ。」
「なんだ!その一応というのは!お主、エレナに何をしたんだ?オーディン様と互角に戦えるのはあり得んぞ!?」
「あいつ、オーディンっていうの?てことは、北欧神話の方かよ…ギリシャ神話に古事記にエジプト神話…。世界中の神様が相手ってわけか…マジで勘弁だな。」
質問に答えず、ブツブツと独り言を呟くイノチに対して、ウォタが声を荒げる。
「一人でブツブツと…さっさとエレナに何をしたのか説明せんか!!」
すると、イノチはそれに気づいて「ごめんごめん。」と頭を掻いて苦笑いし、誰もが驚くべきことを言い放ったのだ。
「エレナの種族…『神様』にしちゃったんだよね。」
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる