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4話 見上げた先の双丘
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その晩、俺はいつもの夢を見た。
それは一人の青年が坊主頭の偉そうな男に何かを抗議する夢だ。
青年は短髪で端整な顔をしており20歳くらいだろう想像している。それに対して坊主頭の年齢は30代くらいに見えるが、その顔がめちゃくちゃ怖いのが特徴だ。確実に堅気ではない事がわかるほどに。
そんな彼に対して、怯む事なく逆にかなりの剣幕で言い寄る青年だが、坊主頭の男はそれを平然とした表情で受け流している。この夢はいつもこんな感じで進み、俺はその様子を俯瞰しているだけで終わる。
なんでこんな夢を見るのか自分でもわからないし、いつから見だしたのかももう忘れてしまったくらいだ。
いつものように坊主頭が無理やり話を終わらせたようだ。おそらく、彼は青年よりも地位が上なのだろう。彼らの振る舞いからそれが見て取れた。
青年が何を伝え、それに対して坊主頭が何を答えたのかはわからない。
なぜなら、この夢にはいつも音がないから。
俺は毎回、無音の中で繰り返される二人の男のやりとりをいつも眺めているだけ。そして、結局は折り合いがつかず、その苛立ちから拳で机を叩いて部屋を後にする青年の後ろ姿を眺めているだけだ。
夢はいつもここで終わり、目が覚める……
……はずだったが、場面が切り替わって少し驚いた。
先ほどの青年が夜空を見上げている。
満天の星の中に巨大な月が黄金に輝いていてその姿はとても綺麗だったが、青年は何故かため息をつく。そして、手に持っていた白い花を月へ捧げるように掲げた。
相変わらず音がない夢ではあるが、吹いた風に合わせて踊るように揺れる花を見てどこか寂しさを感じてしまう。
彼は一体何を想い、何を月へと捧げているのだろうか。
唐突にそんな疑問が溢れてきたが、それの答えを知る術を俺を持っていない。これは俺の夢であるはずなのに……見ている理由さえもわからないのは何故なんだろう。
いくら考えようが答えが出るはずもなく、そのまま俯瞰して見ていると青年は閉じていた目をゆっくりと開けて立ち上がった。そして、大きくて綺麗な月を一瞥すると、建物へと帰っていく。
その背中に寂しさを背負ったまま……
ふと、彼の口元に視線が移る。
その瞬間に彼が何かを呟いたが、音がないこの世界でその答えを知る事は叶わない。
しかし、暗闇に消えていく背中を見送っているとどこからともなく声が聞こえた気がした。
『あなたを……あなたの事を教えて……』
それは今にも消え入りそうな声だったが、確かに聞こえた気がしたのだ。
儚くも優しさと慈愛に満ち足りた声。
そして、長年に渡り馳せてきた想いを打ち明けるような……そんな悲しさに満ちた声。
「君は…………誰なんだ?」
そう問いかけても返事はない。
その代わり、真っ白な光が辺りを包み込んでいき、一瞬だけ強い光が瞬いた。その眩しさで閉じた瞳をゆっくりと開ければ、目の前には高く大きな双丘が……
(ん……?双丘……?)
どうやら俺は目を覚ましたらしい。
しかし、寝ぼけている為か視界がぼんやりとしていてはっきりしない。
目の前に現れた2つの高い丘は一体何なのか。
それを確認しようとして凝視してみると、ようやくその正体が何なのかを理解する。
「……ていうか……めっちゃ……大きい……おっぱいじゃん……」
「はひっ……!?」
とても驚いた声が聞こえた。
これは女性の声……?でも、なぜこんな真夜中に俺の部屋に……?
そんな疑問が浮かんだが、その答えを確かめる間もなく双丘の持ち主らしき影が寝室の窓から飛び出して行った。
何が起きたのかよくわからないまま、ベッドの上で起き上がって窓の外に視線を向けると、真夜中の深々とした独特の雰囲気と綺麗な星空が見える。
そして、遠くの方で叫び声のようなものか聞こえた気がした。
「……いったいなんだったんだ?」
疑問に思いつつも、勝ったのは睡魔のほう……
大きな欠伸を堪え、眠たい目をこすりながら、俺は再びベッドへ横になるのであった。
◆
翌日、朝日の光を感じて目が覚める。
窓の外から小鳥たちの囀りが聞こえ、俺は上半身を起こして伸びをした。
そういえば、昨日の夜に起きたあれはなんだったんだろうかと思い返してみたが理由などわかるはずもなく、とりあえずベッドから立ち上がって窓の外へと顔を出す。
外は今日も晴天で、絶好の薬草採取日和。
そんな些細な事など忘れてしまうほどに良い天気だ。わからないことはわからないのだから今考えても仕方がないし、今日だってやりたい事がたくさんあるんだからさっさと準備を始めよう。
そう考えて寝室から出て1階への階段を下りているところで、玄関のドアを誰かがノックする音が聞こえた。
こんな朝早くに誰だろうか。
考えられるのは牛乳配達員のケリーだが、それにしては少し時間が遅い気もする。なんにせよ、確かめるには玄関に向かう他ないな。
欠伸と背伸びをしながらゆっくりと玄関に向かうが、訪問者はよほど急いでいるようだ。こちらを急かす様に再びドアをノックする。しかもさっきより強めにだ。
「はいはい……わかったからそんなに激しく叩くなって……」
呆れながらにドアを開け、「壊したら弁償させるぞ。」と冗談交じりに顔を上げると、背にした朝日で照らされたシルエットが視界に飛び込んできた。
腕を組み、どこか怒っているような表情を浮かべている女性の……その組んだ両腕で強調された双丘が。
それは一人の青年が坊主頭の偉そうな男に何かを抗議する夢だ。
青年は短髪で端整な顔をしており20歳くらいだろう想像している。それに対して坊主頭の年齢は30代くらいに見えるが、その顔がめちゃくちゃ怖いのが特徴だ。確実に堅気ではない事がわかるほどに。
そんな彼に対して、怯む事なく逆にかなりの剣幕で言い寄る青年だが、坊主頭の男はそれを平然とした表情で受け流している。この夢はいつもこんな感じで進み、俺はその様子を俯瞰しているだけで終わる。
なんでこんな夢を見るのか自分でもわからないし、いつから見だしたのかももう忘れてしまったくらいだ。
いつものように坊主頭が無理やり話を終わらせたようだ。おそらく、彼は青年よりも地位が上なのだろう。彼らの振る舞いからそれが見て取れた。
青年が何を伝え、それに対して坊主頭が何を答えたのかはわからない。
なぜなら、この夢にはいつも音がないから。
俺は毎回、無音の中で繰り返される二人の男のやりとりをいつも眺めているだけ。そして、結局は折り合いがつかず、その苛立ちから拳で机を叩いて部屋を後にする青年の後ろ姿を眺めているだけだ。
夢はいつもここで終わり、目が覚める……
……はずだったが、場面が切り替わって少し驚いた。
先ほどの青年が夜空を見上げている。
満天の星の中に巨大な月が黄金に輝いていてその姿はとても綺麗だったが、青年は何故かため息をつく。そして、手に持っていた白い花を月へ捧げるように掲げた。
相変わらず音がない夢ではあるが、吹いた風に合わせて踊るように揺れる花を見てどこか寂しさを感じてしまう。
彼は一体何を想い、何を月へと捧げているのだろうか。
唐突にそんな疑問が溢れてきたが、それの答えを知る術を俺を持っていない。これは俺の夢であるはずなのに……見ている理由さえもわからないのは何故なんだろう。
いくら考えようが答えが出るはずもなく、そのまま俯瞰して見ていると青年は閉じていた目をゆっくりと開けて立ち上がった。そして、大きくて綺麗な月を一瞥すると、建物へと帰っていく。
その背中に寂しさを背負ったまま……
ふと、彼の口元に視線が移る。
その瞬間に彼が何かを呟いたが、音がないこの世界でその答えを知る事は叶わない。
しかし、暗闇に消えていく背中を見送っているとどこからともなく声が聞こえた気がした。
『あなたを……あなたの事を教えて……』
それは今にも消え入りそうな声だったが、確かに聞こえた気がしたのだ。
儚くも優しさと慈愛に満ち足りた声。
そして、長年に渡り馳せてきた想いを打ち明けるような……そんな悲しさに満ちた声。
「君は…………誰なんだ?」
そう問いかけても返事はない。
その代わり、真っ白な光が辺りを包み込んでいき、一瞬だけ強い光が瞬いた。その眩しさで閉じた瞳をゆっくりと開ければ、目の前には高く大きな双丘が……
(ん……?双丘……?)
どうやら俺は目を覚ましたらしい。
しかし、寝ぼけている為か視界がぼんやりとしていてはっきりしない。
目の前に現れた2つの高い丘は一体何なのか。
それを確認しようとして凝視してみると、ようやくその正体が何なのかを理解する。
「……ていうか……めっちゃ……大きい……おっぱいじゃん……」
「はひっ……!?」
とても驚いた声が聞こえた。
これは女性の声……?でも、なぜこんな真夜中に俺の部屋に……?
そんな疑問が浮かんだが、その答えを確かめる間もなく双丘の持ち主らしき影が寝室の窓から飛び出して行った。
何が起きたのかよくわからないまま、ベッドの上で起き上がって窓の外に視線を向けると、真夜中の深々とした独特の雰囲気と綺麗な星空が見える。
そして、遠くの方で叫び声のようなものか聞こえた気がした。
「……いったいなんだったんだ?」
疑問に思いつつも、勝ったのは睡魔のほう……
大きな欠伸を堪え、眠たい目をこすりながら、俺は再びベッドへ横になるのであった。
◆
翌日、朝日の光を感じて目が覚める。
窓の外から小鳥たちの囀りが聞こえ、俺は上半身を起こして伸びをした。
そういえば、昨日の夜に起きたあれはなんだったんだろうかと思い返してみたが理由などわかるはずもなく、とりあえずベッドから立ち上がって窓の外へと顔を出す。
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そんな些細な事など忘れてしまうほどに良い天気だ。わからないことはわからないのだから今考えても仕方がないし、今日だってやりたい事がたくさんあるんだからさっさと準備を始めよう。
そう考えて寝室から出て1階への階段を下りているところで、玄関のドアを誰かがノックする音が聞こえた。
こんな朝早くに誰だろうか。
考えられるのは牛乳配達員のケリーだが、それにしては少し時間が遅い気もする。なんにせよ、確かめるには玄関に向かう他ないな。
欠伸と背伸びをしながらゆっくりと玄関に向かうが、訪問者はよほど急いでいるようだ。こちらを急かす様に再びドアをノックする。しかもさっきより強めにだ。
「はいはい……わかったからそんなに激しく叩くなって……」
呆れながらにドアを開け、「壊したら弁償させるぞ。」と冗談交じりに顔を上げると、背にした朝日で照らされたシルエットが視界に飛び込んできた。
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