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6話 気持ち×態度=ウラハラ
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突然の訪問者は、頭のおかしな巨乳美女でした!
なんて事は口にはしないが、俺は先ほどから目の前の女性を説得しようと必死だった。
「だから、いきなりここに住むって言われても困るよ!」
「私は困りません。それにさっきから言っていますが、これは決定事項であなたに拒否権はないんですよ。」
「いや、拒否権はあるでしょ!ここは俺のうちなんだし。」
「ありません。私はここに住むんです。」
さっきからこれの繰り返しで話は平行線を辿っている。
そもそもだが、この人がうちに住みたい理由がわからない。それを聞いても言葉を濁してばかりで答えてくれないのだ。それに、その理由を言わなければ住ませないなどと条件と付けたとしても、そんな事などお構いなしに自分はここに住むの1点張りなのだから。
お互いの主張が嚙み合わないってこういう事を言うんだな。初めて経験したよ。
しかし、このままだと話し合いにならないし、時間だけが湯水のように流れていくだけだ。今日はブラックボアの処理と昨日の一件についてギルドへ報告に行かなくちゃならない。薬草採取のスケジュールをずらしてでもやらなくちゃいけないから、さっさと終わらせて遅れを取り戻したいのに。
そんなもどかしさが相まって、俺は彼女にこう提案する。
「とりあえず今日は俺、やる事が多いんです。だからあなたに構ってあげられる暇がない。申し訳ないんですが、日を改めて来ていただけませんか?」
問題の先送りが何の解決にもならない事は重々承知の上で、この提案を彼女に投げかけてみた。
すると思いも寄らない回答が返ってきてさらに驚いてしまう。
「それでしたら、私もお手伝いさせてもらいます。今日からここに住むのですから、仕事は分担しないといけませんし。」
そういう事をいってるんじゃなぁぁぁぁぁい!
声を大にしてそう叫びたかったが、たぶんどう言っても応じてくれないと半ば諦めている俺がいた。
「はぁ……わかりました。とりあえず時間がないので僕は準備をしてきます。ついてきても構いませんけど、別に手伝ってもらわう必要はないですから。」
「それはこちらで判断いたします。」
ぐぅぅぅ……なんだか敗北感を感じてしまう。だが本当に諦めたわけではないぞ。仕事中に必ず説得して帰ってもらわないと、俺の静かなハッピーライフが壊されてしまう。それだけは絶対に阻止せねばならない。
大きなため息をついた後、彼女にリビングで待つように告げた俺は、朝のルーティンに戻ろうと2階への階段を踏み出した際に無意識に尋ねた内容に自分自身でも驚いてしまう。
「朝ごはんは……?食べますか?」
「……っ?!い……いただきます。」
なんでこんな事聞いちゃったのか、自分でもよくわからない。当たり前だけど、彼女も聞かれたことにかなり驚いた様子だった。
自分の思考が理解できないまま、俺は朝支度を整える事に急ぐのだった。
◆
この森で狩猟や採取を行う者には、ある義務が課せられている。
まぁ、義務と言っても仰々しいものではなくて、単純に異変を感じたらギルドへ報告する義務があるだけだ。
今回はAランクの魔物であるブラックボアが森の浅い場所に来たという事実。これについて、当事者である俺は詳細をギルドに報告しなければならない。
もちろん、本来ならその事実を知った日のうちにギルドへ報告するべきなんだけど、薬草士として森に住んでいる俺はギルドから薬草採取を優先するように指示されているので、他の冒険者たちとは違って気づいた異変は翌日の正午までに伝えるルールとなっている訳だ。もちろん、内容によるんだけど。
なので、今日やる事はブラックボアの死骸を解体してその部位を整理する。続いて、その一部を持ってギルドへ向かい、事情を報告する。
それらが終わってやっと日課の薬草採取を再開できるのである。
「確か地図に記したのはこっちの方だったな……」
地図を見ながらブラックボアの死骸があるはずの位置を目指す俺と、その後ろをついてくる件の女性。もちろん、会話なんて一切ないから気まずくてしょうがない。
でも、ここでフレンドリーに話しかける訳には行かない。彼女には俺の家に住む事を諦めてもらい、帰っていただく必要があるんだ。だから、仲良く話す意味などないんだと改めて心に誓う。
なのに……
「そういえば、君はどこから来たの?」
なぜか無意識に声をかけてしまった。
何やってんだ俺はぁぁぁぁぁ!今、心に刻んだ誓いは一体何なんだ!アホか俺は……アホなのか!
頭を抱えて自問自答を繰り返している俺に対して彼女は何も答えなかったが、その事実がさらに俺の心を抉りにかかる。
だが、そんな事を気にする様子もなく、彼女は俺に近づいてきて持っていた地図を少し眺めるとある方向を指差してこう告げた。
「この位置なら、もう少し北西よりに進むべきじゃないかしら。」
それを聞いた俺は咄嗟に空を見上げていた。
確かに太陽の位置からすれば、目的とする場所はここから北西にずれるだろう。彼女の言っている事の正しさを確認し、俺は平然とした態度で進む方向を修正する。
しかし、やはり今の発言から考えてみても彼女の素性に対する疑問は拭えない。
慣れている者なら太陽や星の位置で自分が今いる場所を把握することは容易いが、それはこの付近をよく知っていればの事。しかも、この地図は俺が作ったものであり、初見で、しかも一瞬見ただけで理解できるとは到底思えなかった。
よほどこの森の事を知り尽くしているのか、もしくはそういう仕事を生業にしている人。
そうでなければ、今の行動は納得がいかない……一体彼女は何者なのだろうか。
そんな消化しようにもし切れない疑念を胸のうちで転がしているうちに、少し離れた位置に横たわっている黒い塊を発見した俺は急いでそれを目指すのであった。
なんて事は口にはしないが、俺は先ほどから目の前の女性を説得しようと必死だった。
「だから、いきなりここに住むって言われても困るよ!」
「私は困りません。それにさっきから言っていますが、これは決定事項であなたに拒否権はないんですよ。」
「いや、拒否権はあるでしょ!ここは俺のうちなんだし。」
「ありません。私はここに住むんです。」
さっきからこれの繰り返しで話は平行線を辿っている。
そもそもだが、この人がうちに住みたい理由がわからない。それを聞いても言葉を濁してばかりで答えてくれないのだ。それに、その理由を言わなければ住ませないなどと条件と付けたとしても、そんな事などお構いなしに自分はここに住むの1点張りなのだから。
お互いの主張が嚙み合わないってこういう事を言うんだな。初めて経験したよ。
しかし、このままだと話し合いにならないし、時間だけが湯水のように流れていくだけだ。今日はブラックボアの処理と昨日の一件についてギルドへ報告に行かなくちゃならない。薬草採取のスケジュールをずらしてでもやらなくちゃいけないから、さっさと終わらせて遅れを取り戻したいのに。
そんなもどかしさが相まって、俺は彼女にこう提案する。
「とりあえず今日は俺、やる事が多いんです。だからあなたに構ってあげられる暇がない。申し訳ないんですが、日を改めて来ていただけませんか?」
問題の先送りが何の解決にもならない事は重々承知の上で、この提案を彼女に投げかけてみた。
すると思いも寄らない回答が返ってきてさらに驚いてしまう。
「それでしたら、私もお手伝いさせてもらいます。今日からここに住むのですから、仕事は分担しないといけませんし。」
そういう事をいってるんじゃなぁぁぁぁぁい!
声を大にしてそう叫びたかったが、たぶんどう言っても応じてくれないと半ば諦めている俺がいた。
「はぁ……わかりました。とりあえず時間がないので僕は準備をしてきます。ついてきても構いませんけど、別に手伝ってもらわう必要はないですから。」
「それはこちらで判断いたします。」
ぐぅぅぅ……なんだか敗北感を感じてしまう。だが本当に諦めたわけではないぞ。仕事中に必ず説得して帰ってもらわないと、俺の静かなハッピーライフが壊されてしまう。それだけは絶対に阻止せねばならない。
大きなため息をついた後、彼女にリビングで待つように告げた俺は、朝のルーティンに戻ろうと2階への階段を踏み出した際に無意識に尋ねた内容に自分自身でも驚いてしまう。
「朝ごはんは……?食べますか?」
「……っ?!い……いただきます。」
なんでこんな事聞いちゃったのか、自分でもよくわからない。当たり前だけど、彼女も聞かれたことにかなり驚いた様子だった。
自分の思考が理解できないまま、俺は朝支度を整える事に急ぐのだった。
◆
この森で狩猟や採取を行う者には、ある義務が課せられている。
まぁ、義務と言っても仰々しいものではなくて、単純に異変を感じたらギルドへ報告する義務があるだけだ。
今回はAランクの魔物であるブラックボアが森の浅い場所に来たという事実。これについて、当事者である俺は詳細をギルドに報告しなければならない。
もちろん、本来ならその事実を知った日のうちにギルドへ報告するべきなんだけど、薬草士として森に住んでいる俺はギルドから薬草採取を優先するように指示されているので、他の冒険者たちとは違って気づいた異変は翌日の正午までに伝えるルールとなっている訳だ。もちろん、内容によるんだけど。
なので、今日やる事はブラックボアの死骸を解体してその部位を整理する。続いて、その一部を持ってギルドへ向かい、事情を報告する。
それらが終わってやっと日課の薬草採取を再開できるのである。
「確か地図に記したのはこっちの方だったな……」
地図を見ながらブラックボアの死骸があるはずの位置を目指す俺と、その後ろをついてくる件の女性。もちろん、会話なんて一切ないから気まずくてしょうがない。
でも、ここでフレンドリーに話しかける訳には行かない。彼女には俺の家に住む事を諦めてもらい、帰っていただく必要があるんだ。だから、仲良く話す意味などないんだと改めて心に誓う。
なのに……
「そういえば、君はどこから来たの?」
なぜか無意識に声をかけてしまった。
何やってんだ俺はぁぁぁぁぁ!今、心に刻んだ誓いは一体何なんだ!アホか俺は……アホなのか!
頭を抱えて自問自答を繰り返している俺に対して彼女は何も答えなかったが、その事実がさらに俺の心を抉りにかかる。
だが、そんな事を気にする様子もなく、彼女は俺に近づいてきて持っていた地図を少し眺めるとある方向を指差してこう告げた。
「この位置なら、もう少し北西よりに進むべきじゃないかしら。」
それを聞いた俺は咄嗟に空を見上げていた。
確かに太陽の位置からすれば、目的とする場所はここから北西にずれるだろう。彼女の言っている事の正しさを確認し、俺は平然とした態度で進む方向を修正する。
しかし、やはり今の発言から考えてみても彼女の素性に対する疑問は拭えない。
慣れている者なら太陽や星の位置で自分が今いる場所を把握することは容易いが、それはこの付近をよく知っていればの事。しかも、この地図は俺が作ったものであり、初見で、しかも一瞬見ただけで理解できるとは到底思えなかった。
よほどこの森の事を知り尽くしているのか、もしくはそういう仕事を生業にしている人。
そうでなければ、今の行動は納得がいかない……一体彼女は何者なのだろうか。
そんな消化しようにもし切れない疑念を胸のうちで転がしているうちに、少し離れた位置に横たわっている黒い塊を発見した俺は急いでそれを目指すのであった。
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