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13話 大胆不敵
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私は今、リビングにあるソファーに腰を下ろしている。
視線の先には食器を片付ける彼の背中。
夕食に私が作った特製パエリアをペロリと平らげたくせに、なぜか平然としている彼に対して驚きよりも興味が湧いた。
(たまたま森で見つけたコケカブトの猛毒を混ぜたというのに、なぜあんなにピンピンとしていられるのかしら。)
薬草採取を手伝っていた時に、たまたま見つけたコケカブト。根から抽出した毒は魔物すら簡単に殺すほどの猛毒を持つ事で有名な植物で、そのまま食べても人ならすぐに死ぬ。
さっさと任務を終わらせられたら良いと思い、さっそく料理担当を願いでてコケカブトを混ぜた料理を作り、振る舞った。
だが、彼はそのパエリアを平然と食べ退けた。そして、今は何事もなかったかのように鼻歌混じりに食器を洗っているのだから、疑問と好奇心が湧いてしまって仕方がない。
(薬草士……彼の職業に秘密があるのかな?)
薬草士と名乗るだけあって、確かにその知識量はとてつもなく膨大だ。それは一日行動を共にして理解した。
良いもの悪いもの、薬になるもの毒になるもの。それらを一瞬で見分ける知識と洞察力を彼は持ち合わせている。
(それだけ知識があるなら、毒への対策も万全にしていてもおかしくはないか。でも、コケカブトの毒をスパイスって……)
呆れを通り越して笑みが溢れてしまう。
コケカブトの毒は仕事でもよく使っているが、その致死率は100%であり、この業界ではリピート率もNo. 1だろう。
それほどまでに信用されているこの毒を使われて、今まで生きていた者はいなかったはずだが、その例外が今、目の前にいる。
(これは一筋縄ではいかないかも……)
そう懸念しながらも次の手を考えていて、ふとすぐに良い手が浮かんだ。
彼が昨日お風呂場で見せたあの態度。
彼の素ぶりからすれば、明らかに女性慣れはしていない事がわかる。
なら、今度はこの方法でいってみるか。
(肌を異性に見せる事くらい……なんともないわ。ター!しっかりするのよ。)
内心で自分を鼓舞して小さくため息をつき、ソファーから立ち上がって彼に声をかける。
「あ……あの……」
「ん?どうした?」
「いや……その……」
食器を洗いながらこちらに振り返る彼に対して、一瞬怯んでしまう。頭では理解はしていても、この提案はかなり恥ずかしくて勇気がいる事だから。
だが、早く任務を終わらせなければならないという責任感がそんな弱い気持ちを打ち破る。
「こ……この後はお風呂でしょう?」
「おう。そうだな。てか、入りたいなら先に入っていいよ。もう沸いてるだろうし。」
「いえ、あなたが先に入るべきね。ここの主人なんだし……」
「そうか?まぁ、俺はどちらでも良いけど……」
そう鼻で笑うと、彼は向き直って食器洗いを再開する。
まだ話は終わってないのに……
そんな戸惑いが再び私の心の弱さを呼び起こすが、せっかく振り絞った勇気を無駄にはできない。
一度、深呼吸をして心を落ち着かせると、改めて彼へ提案を投げかけた。
「一緒に入りましょうか。」
その瞬間、ガチャンと何かが割れる音がして彼の動きが止まった。どうやら動揺しているらしい。まるで銅像のように固まっている彼に対し、もう一度同じ提案を投げかけてみる。
「聞こえなかったの?お風呂、一緒に入らないか聞いたんだけど……」
一瞬、彼の体が強張ったようにビクッと震えた。
自分でもわかっている……わかっているのだ。この行動は美人局がやる事と何ら変わりはないし、彼がそれに対して疑心を持つ事も想定はしている。
だが、任務遂行の為には手段は選べない。私は心を鬼にしてでも、この提案を貫かねばならないのだ。
「……どうなの?早く答えてくれない?」
「い……いや、それは……」
彼は回答に困っているようだが、それは自分にとってはある意味で僥倖だろう。迷っているという事は付け入る隙があるという事でもあるのだから。
それに、そもそも私は裸になるつもりはない。彼の背中を流すという意味で一緒に入る事を提案している訳であって、敢えて勘違いする言い方をして彼が動揺するのを狙っての発言なのだ。
だから、私がこの後に選ぶべき言葉はこれ。
「何か勘違いしているようだけど、あくまでも背中を流してあげるって意味だからね。」
こう言えば、ピークに達した彼の緊張が緩むだろう。そうすれば交渉がしやすくなる。
「う……わ……わかってるよ!当たり前だろ!?」
「もしかして変な想像していたんじゃない?エッチ。」
「し……してねぇし!!」
「なら、決まりでいいわね。背中流してあげる。毎日の疲れをたまには癒したらいいわ。」
そう告げた私は、ひと足先に風呂場に向かう旨を伝える。背中に彼の視線を感じるが、こちらの動揺は勘付かれないように冷静を装ってリビングを後にする。
風呂場へ向かう途中、割と自然に会話を運べたのではないだろうかと自画自賛する。
こうなればこちらのもの。相手が無防備になるお風呂場でなら任務を達成するのは容易いはずだ。
私はそんな淡い期待を背に、到着した脱衣所の扉を開くのだった。
視線の先には食器を片付ける彼の背中。
夕食に私が作った特製パエリアをペロリと平らげたくせに、なぜか平然としている彼に対して驚きよりも興味が湧いた。
(たまたま森で見つけたコケカブトの猛毒を混ぜたというのに、なぜあんなにピンピンとしていられるのかしら。)
薬草採取を手伝っていた時に、たまたま見つけたコケカブト。根から抽出した毒は魔物すら簡単に殺すほどの猛毒を持つ事で有名な植物で、そのまま食べても人ならすぐに死ぬ。
さっさと任務を終わらせられたら良いと思い、さっそく料理担当を願いでてコケカブトを混ぜた料理を作り、振る舞った。
だが、彼はそのパエリアを平然と食べ退けた。そして、今は何事もなかったかのように鼻歌混じりに食器を洗っているのだから、疑問と好奇心が湧いてしまって仕方がない。
(薬草士……彼の職業に秘密があるのかな?)
薬草士と名乗るだけあって、確かにその知識量はとてつもなく膨大だ。それは一日行動を共にして理解した。
良いもの悪いもの、薬になるもの毒になるもの。それらを一瞬で見分ける知識と洞察力を彼は持ち合わせている。
(それだけ知識があるなら、毒への対策も万全にしていてもおかしくはないか。でも、コケカブトの毒をスパイスって……)
呆れを通り越して笑みが溢れてしまう。
コケカブトの毒は仕事でもよく使っているが、その致死率は100%であり、この業界ではリピート率もNo. 1だろう。
それほどまでに信用されているこの毒を使われて、今まで生きていた者はいなかったはずだが、その例外が今、目の前にいる。
(これは一筋縄ではいかないかも……)
そう懸念しながらも次の手を考えていて、ふとすぐに良い手が浮かんだ。
彼が昨日お風呂場で見せたあの態度。
彼の素ぶりからすれば、明らかに女性慣れはしていない事がわかる。
なら、今度はこの方法でいってみるか。
(肌を異性に見せる事くらい……なんともないわ。ター!しっかりするのよ。)
内心で自分を鼓舞して小さくため息をつき、ソファーから立ち上がって彼に声をかける。
「あ……あの……」
「ん?どうした?」
「いや……その……」
食器を洗いながらこちらに振り返る彼に対して、一瞬怯んでしまう。頭では理解はしていても、この提案はかなり恥ずかしくて勇気がいる事だから。
だが、早く任務を終わらせなければならないという責任感がそんな弱い気持ちを打ち破る。
「こ……この後はお風呂でしょう?」
「おう。そうだな。てか、入りたいなら先に入っていいよ。もう沸いてるだろうし。」
「いえ、あなたが先に入るべきね。ここの主人なんだし……」
「そうか?まぁ、俺はどちらでも良いけど……」
そう鼻で笑うと、彼は向き直って食器洗いを再開する。
まだ話は終わってないのに……
そんな戸惑いが再び私の心の弱さを呼び起こすが、せっかく振り絞った勇気を無駄にはできない。
一度、深呼吸をして心を落ち着かせると、改めて彼へ提案を投げかけた。
「一緒に入りましょうか。」
その瞬間、ガチャンと何かが割れる音がして彼の動きが止まった。どうやら動揺しているらしい。まるで銅像のように固まっている彼に対し、もう一度同じ提案を投げかけてみる。
「聞こえなかったの?お風呂、一緒に入らないか聞いたんだけど……」
一瞬、彼の体が強張ったようにビクッと震えた。
自分でもわかっている……わかっているのだ。この行動は美人局がやる事と何ら変わりはないし、彼がそれに対して疑心を持つ事も想定はしている。
だが、任務遂行の為には手段は選べない。私は心を鬼にしてでも、この提案を貫かねばならないのだ。
「……どうなの?早く答えてくれない?」
「い……いや、それは……」
彼は回答に困っているようだが、それは自分にとってはある意味で僥倖だろう。迷っているという事は付け入る隙があるという事でもあるのだから。
それに、そもそも私は裸になるつもりはない。彼の背中を流すという意味で一緒に入る事を提案している訳であって、敢えて勘違いする言い方をして彼が動揺するのを狙っての発言なのだ。
だから、私がこの後に選ぶべき言葉はこれ。
「何か勘違いしているようだけど、あくまでも背中を流してあげるって意味だからね。」
こう言えば、ピークに達した彼の緊張が緩むだろう。そうすれば交渉がしやすくなる。
「う……わ……わかってるよ!当たり前だろ!?」
「もしかして変な想像していたんじゃない?エッチ。」
「し……してねぇし!!」
「なら、決まりでいいわね。背中流してあげる。毎日の疲れをたまには癒したらいいわ。」
そう告げた私は、ひと足先に風呂場に向かう旨を伝える。背中に彼の視線を感じるが、こちらの動揺は勘付かれないように冷静を装ってリビングを後にする。
風呂場へ向かう途中、割と自然に会話を運べたのではないだろうかと自画自賛する。
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